1 / 1
神社から呼ぶもの
しおりを挟む
「たすけて」
「たすけて」
「たすけて」
「たすけて」
何回も何回も、人影は声を発した。その声を聞いているうち、いつしか暗闇の中に青空が見え始めた。
僕はひんやりとした地面に横たわっていた。周りは地面に囲われていた。僕が横たわっているのは穴の中だった。
僕の上に土がかけられた。土が顔にかかり、目に入った。僕はそれを払い落とそうとした。しかしできなかった。指一本動かすことができず、目を閉じることさえできない。体はまるで肉の塊みたいに感覚がなく、力なく横たわっている。
そうしているうちにどんどん土がかけられていく。やめてくれ。死んでしまう!
僕はそう言いたかった。しかし言葉は発せられなかった。そして土が降り積もり、いつしか暗闇に包まれて行った。
僕は学校から帰るたびにホラー小説を読んだり、怪現象に関するサイトを閲覧したりする日々を送っていた。当時の僕は部活を引退してしまって、暇をもてあましていた。また進学のための勉強などというものはほとんどやらなかった。それというのも、進学する先は専門学校で、たいした勉強をする必要もないだろうと高をくくっていたからである。のちに先生から脅されて焦って猛勉強をしたこと、しかしいざ受験してみるとテストはやはり楽勝だったことは、また別の話である。
僕が古橋神社の存在を知ったのは八月の半ばごろだったと思う。僕が古橋神社の存在を知ったのは「心霊体験記~ここは行くな!~」という題名のブログだった。
『古橋神社
場所:静岡県御殿場市、御幸老人ホーム近く
解説:
この神社の来歴に関しては皆目見当がつかない。あらゆる手を尽くして調べてみたが、何もわからなかった。
この神社そのものはご神体がとっくに移動されている。もはや建物ばかりで、神社としての役割は果たしていない。にもかかわらず、ここには不気味な雰囲気が漂っていた。周りは木に囲われていて、外からではそこに神社があるとは到底思えない。鳥居が入り口のところにあってようやくそれと知れるくらいだ。
あんな場所だから、滅多なことでは迷い込むこともあるまいとは思う。しかしそれでも行くべきでない心霊スポットであるのは間違いない。危険かどうかわからない場所にはまず用心するというのは鉄則だからだ。それを守らないのは沸騰した湯の入っている鍋が熱いかどうか、触って調べようとするようなものだ。だから近づくのはお勧めしない』
その紹介文を読み、さらに残りの心霊スポットの紹介も読んだ後、最後のまとめのようなものがサイトの一番下に書かれていた。
『この心霊スポットを紹介したのは、読者の好奇心をあおるためではない。警戒を仰ぐためだ。間違っても行ってほしくないからだ。これはいたずらに興味を仰ぐために書いたサイトでは決してない。だからくれぐれも勘違いして、これらの場所には近づかないようにしてほしい。もし間違って行ってしまったとしても、少しでも嫌な雰囲気だと思ったら引き返してほしい。直感というものは得てして正しいものだから』
僕はそうしたメッセージを決して信じなかったわけではなかった。むしろ信じていた。それにもかかわらずその翌日僕は、その場所をグーグルマップで探し当て、その神社へと赴いた。この時、メッセージを軽んじていたということは否めない。しかし僕が古橋神社へ行くことにしたのは、何もメッセージを軽んじたからばかりではなかった。僕は心霊現象を体験した人というやつにあこがれていた。サイト上で自分の体験した心霊現象を書く人間をうらやましいと思った。そうした話の大半は嘘だろう、だと理解はしていた。しかしその中には本当の話もあると信じてもいた。そしてもし自分が真実を語る人間になることができたなら、それはどれほど素晴らしいことだろうとも思った。
そうした人間になれるのなら、多少の犠牲を払うのやむなしという考えが僕にはあった。よく言うではないか、虎口に入らずんば虎児を得ず、と。
学校から家に帰った後、僕はスマホやお守りをもって神社へ向かった。神社への入り口を見つけるのは大した手間ではなかった。そのあたりは何回か行ったことがあり、多少土地勘があったのだ。神社は御殿場市と箱根町を隔てる、長尾峠の方にあった。峠側の方は木々に覆われた、山同然ところがしばしばある。神社はそうしたところにあった。峠側へ向かっていくと、いつしか上り坂になり、そして急に木ばかり生い茂っているところに出くわす。その中でポツンと、鳥居が立っているのを僕は見つけた。
僕は鳥居をくぐった。そして木々ばかりの道の中へと入っていった。すると全身をぐにゃぐにゃしたゼリー状のもので包まれてくまなく圧迫されたような気分を感じた。
進んでいくとすぐに、立ち入り禁止のロープが張り渡されているのを見つけた。しかし僕はそれをかまわず踏み越えた。誰もこんなところにいたり、僕のことを見たりしていないと思って大胆になっていた。さらに進んでいき階段を上ったり、曲がったりするうち、とうとう開けたところに出た。かと思うと、建物が見えた。僕はとうとう神社を見つけた。神社そのものはさほど目を引くようなものではなかった。どこにでも見るような神社、地味で、狛犬と獅子さえない。ちっぽけでぼろぼろの、みすぼらしい神社だった。
ここが本当に心霊スポットなのかと僕は疑った。拍子抜けするほどに何もなかった。たえずいやな気分は味わってはいたものの、境内に来たからと言ってその気分が格別強くなったわけでもなかった。
僕はぽかんと神社を見上げていた。
「ここ立ち入り禁止だよ」
後ろから女性の声がした。その声に反応して、僕の体が震えた。僕はすぐさま振り向いた。
僕の背後には大人の女性が立っていた。多分二十代後半か三十代後半だろうと思われた。髪を後ろに束ね、ジーンズをはいていた。
「何で勝手に入ってきてるの?」
僕は女性にそういわれてすっかりばつが悪くなった。ルールを破ったということ、しかも遊び半分で来たということ、そのうえ見も知らぬ他人から怒られているということ、いろいろな要因が重なってたまらなくばつが悪かった。
僕はすっかり気が動転してしまった。とっさに頭を下げた。そして低い声で、すいませんと言った。しかし声があんまり小さかったから、たぶん相手にはもごもごとしか伝わらなかっただろう。
僕は顔を伏せたまま、女性のそばを走って通り過ぎようとした。
「何逃げようとしてんの?」
僕は走っていくところを肩をつかまれて引き留められた。
「なんで入ってきたのか聞いてないんだけど」
「いや、あの」
「何?はっきりしなよ」
「その、すいません」
僕はとりあえず謝った。しかし女性は何も答えなかった。ただ僕の目をじっと見てくる。その目があんまりギラギラしていてまるで山猫みたいだった。僕はその目によって隠し事をする勇気をすっかり失った。
「ネットでここのことを知って。心霊スポットだって。それでどんなところかな、と思ったので」
「もう二度と入ってこないで。何度も言うけど立ち入り禁止だから、ここ」
「はい。すいませんでした」
「じゃ、行ってよし」
女性は軽く僕の背中を押した。僕は解放されたと知るや、その場から逃げるように立ち去った。
そこははじめ暗闇だった。暗闇の中、僕が途方に暮れていると、だんだん辺りが明るくなってきた。それでも完全には明るくならず、薄暗い、さながら宵の時ぐらいの状態になった。
奥に人影が見えた。顔かたちも何もかも一切わからない。ただ相手は男であるような気がした。
「――」
人影が何か言った。僕に向かってだった。僕は人影が僕に何か用があるのだと思い、近寄っていった。人影は僕を手招きしていた。やはり僕に用があるのだ。
どんどん近づいて行って、やがて僕はその人影に対して不吉なものを感じた。だんだん近づいていく足の動きが鈍った。それでも近づいていった。やがて、僕はどうして見知らぬものに対して近づいているのか、もし危険なものだったらどうするのかということに思い至った。僕は立ち止まった。そして後ずさった。すると人影が走り寄ってきた。僕はとっさに直感した。逃げなければと。そして行動にすぐさまうつした。
僕は懸命に走った。にもかかわらず足音がどんどん近づいてくる。したっしたっと乾いた地面をける音が。それは裸足で地面をける音だった。
そしてとうとうそれは僕のすぐ背後に迫ってきた。足音でそれを感じられた。直後、二の腕をつかまれた。痛いくらいに強い握り方だった。
僕は身をこわばらせ、そして叫んだ。
そして目が覚めた。夢うつつから次第に覚醒に近づき、やがて自分が夢を見ていたと知った。そして安堵した。僕は誰にもつかまったりしていなかったのである。
僕は自分の馬鹿さ加減に呆れながら頭を起こした。その時そこがベッドでないことを知った。僕が寝ていたのはコンクリートの上だった。そこは家の前だった。
どうして僕はこんなところで眠っているのか。いや、そもそもいつ眠ったのだろうか?いいや、眠った覚えはない。僕はついさっきまで、ネットの怪談を読んでいたはず。その時急に部屋が真っ暗になって――。
そこから先を全然覚えていない。
僕はその時、いつまでも続く二の腕の痛みが気になり始めた。僕は袖をまくった。。二の腕を見ると、青紫色のあざがついていた。それは五本の線から形作られていた。手の形であることは明らかであった。
何が起こったのか、自分では全く分からなかった。いったいどうして、変な夢を見たかと思ったら家の前で寝ているのか。そもそも僕はいつの間に外へ出たのか。
僕は家の中へと入った。家の中では、両親がテレビを見ていた。
「お帰り、琢磨」
「ただいま」
「随分遅くまで神社に行っていたじゃない」
「え?」
「神社行ってたんじゃないの?」
「神社なんて行ってない。誰がそんなこと」
「あんたが言ったんじゃないの。夕飯食べ終わった後外出て行くから、どこへ行くのって聞いたじゃない。そしたら神社、なんていって」
僕ははじめ戸惑っていたが、二階へ上がり、頭を抱えながら考えるうち、しだいに起こったことを理解し始めた。
僕はあの神社に引き寄せられたのだ。怪談を読んでいるときに暗闇に包まれた瞬間、僕は外に呼び出された。自分の足で歩き、神社まで向かった。そして途中で引き返したものの、捕まった。だから二の腕にあるあざは――。
僕はすぐさま部屋に戻った。そして部屋に置いてあったお守りを手にした。ご利益は無病息災だが、この際ないよりもましだ。
僕はそれから、一階へと駆け降りた。そして台所にある食卓塩を手につかみ取った。そして頭に大量に、ばらばらと振りかけた。
「何してるの?」
母がそんなことを言ったが気にしない。何度も何度も振りかけ、それから塩を洗い流すためにシャワーを浴びた。ついでに追いかけてきたやつの厄も洗い流せるかもしれないいう考えも、無くはなかった。
そのあと僕は着替えを着て、お守りを手に持ち、ベッドに入った。僕は眠れないものと思っていた。ところが次第にうつらうつらとし始め、いつしか眠ってしまった。
「たすけて」
「たすけて」
「たすけて」
「たすけて」
目が覚めた。僕はベッドの中にいた。ベッドの中で覚醒していくのを感じながら、僕は気が付いた。彼は土に埋められた。そして僕に助けを求めていたのだと。
僕は起き上がった。時間は午前一時。明日彼を掘り起こしに行こうか。いいや、駄目だ。明日の昼間などに言ったりしてはいけない。なぜなら、あの女がいる。あの女は平日にもかかわらずあの神社に僕が入ったことを知った。つまりあそこを見張っているはずだ。陽のあるうちには容易には入れない。
それならば、夜に行くしかない。そうだ夜に行くのがいい。彼は暗闇が好きだから。僕はなぜだか、そのことを知っていた。
僕は一階へと降りた。そして頭につける形の懐中電灯とスコップをもって外に出た。
神社の境内にたどり着くと、僕は迷うことなく地面を掘り始めた。掘るべき場所はわかっていた。彼が教えてくれたから。
掘り進めていくと、スコップが何かに突き当たった。土を払いのけると、木箱のようなものが見えた。多分棺桶だ。
僕はさらに発掘作業を進め、とうとう棺桶の全体が見えるところまで掘り出した。そこまでやり終えるといったん穴から出た。そして棺桶をしばらく見つめていた。これが彼の入っている――。
ごと。
そんな音がした。それは棺桶を、何かがたたいた音だった。いや、何かと言う必要はない。それは明らかに彼だった。
馬鹿な。彼は死んでいるのでは。
棺桶の蓋がまたたたかれた。次にふたが浮き上がった。蓋は押し上げられた。その中から突き出された腕が懐中電灯の明かりに照らされた。その腕はカサカサに乾き、ひび割れている色はくすんだ茶色だった。。腕は二本伸びてきて、ふたをすっかり押し上げた。その中にあったのは、棺桶をくまなく満たすように詰められた土と、彼だった。その眼窩には目玉はなく、ただ闇だけが満たしていた。
それの上体が起き上がった。すると土がパラパラと棺桶の中へ落ちていった。
僕は後ずさった。それは穴から這い上がった。僕はまた後ずさる。それは僕の方へと近づいてきた。
彼はなぜ僕の方へ近づいてくるのだ。一体何を考えているのか。
彼は長い間穴の中に入っていた。そしていま起きあがった。まず起きたら、何をする?歯を磨いてそれから、ご飯を食べる。
もちろんそれだけじゃない。ほかにも学校の支度だってする。しかしそのいずれも彼には必要なさそうだ。そして彼は僕に向かって、近づいてきている。
はめられた。
畜生。僕はあいつにはめられた。あいつを掘り起こすために利用され、挙句の果てに食料にされようとしている。
「くそっ!」
僕はスコップをミイラに向かって振り下ろした。しかしミイラはびくともしなかった。まるで木か何かをたたいたような感触だった。
ミイラの手が僕の両方の二の腕に伸びてきた。目の前にミイラが立っている。その時初めて僕はミイラのにおいをかいだ。すっかり干からびているはずにもかかわらず、そいつからは腐臭がした。甘く、すえたようなにおい。鼻がつんとするやつだ。それから金臭いにおいもした。多分、血の匂いだ。こいつが今まで食ってきた人たちの。
その時、急に騒々しくなった。誰かの叫び声が聞こえ、そのほかにもばたばたという音がした。
次いでミイラの顔面に何か太く大きなものが突き刺さった。途端、僕の二の腕を握っていた手から地かが抜けた。
僕は自分でも驚くほどの速さで後ろへと逃げた。その前に誰かが躍り出る。その人は頭の後ろに束ねた黒い髪をはためかせていた。そして下に倒れているミイラに向かって何度も何度も太く大きなもの、槍を突き立てた。
やがて昨日神社で出会った女性はミイラを突き刺すのをやめた。ミイラは身動き一つしなかった。
「大丈夫?怪我とかしてない?」
女性はこちらを振り向いていった。
「はい」
「あんた、ここへ立ち入り禁止だって」
「無理でした。僕はそいつに呼ばれてしまって。どうしても逆らえませんでした」
「ああ」
女性は戸惑ったように口を開け、声を発した。
「まあ、もう安心だから。家に」
そのあとは本当に一瞬のことだったと思う。しかし僕にはひどくゆっくりに感じられた。あれが走馬灯というやつなのかもしれない。
ミイラは音もなく起きあがった。そして大口を開けた。女性の首に歯を突き立てんとしていた。
僕はミイラに向かって走り寄った。そしてミイラの口に腕を突っ込んだ。ミイラは僕の拳を飲み込み、そして手首に歯を突き立てた。手首から血が染み出る。ミイラの顎に鮮血が滴った。
「ちくしょう!」
女性が叫んだ。そして槍の刃をミイラの左の胸、心臓に突き立てた。
ミイラはまた力を失った。僕の手首から歯が離れた。そして倒れ、今度こそ絶命した。
「シャツ脱いで!」
女性は言いながら、僕のシャツを脱がせた。そしてそのシャツを僕の手首に巻き付け、止血した。それから電話をかけ始めた。
「とりあえず下に降りよう」
僕と女性は下に降りた。そして通りに出て地面に座った。
僕は手首からだらだら血を流している割に、冷静だった。不思議と手首はいたくなかった。ただ僕はいろんなことが気になって仕方がなくて、そっちのことばかり考えていた。
「あの、あれはいったい何なんですか?」
僕は訊いた。
「わからない」
「あれは死んだと思いますか?それとも」
「心臓を刺したから大丈夫だと思うけど。吸血鬼は心臓に杭を刺したら死ぬじゃん」
「あれ、吸血鬼なんですか、もしかして」
「わかんない」
「もしかして僕、吸血鬼になったりとか」
「それもわかんない。もしそうなったら、ごめん」
「いや、そんな全然。むしろ助けてもらってありがたいぐらいです」
「いや、私が油断してたからこうなった。これは私の責任だから。もしなんかあったとしたら何としてでも君のことを助けるから。一応、なんかあった時のために私の名前伝えとく。私の名前は金崎鈴。連絡先は、スマホ持ってる?」
僕はスマホを差し出した。女性はしばらく操作をした後スマホを返した。
「電話の連絡先いれておいたから。ラインはいれてない。苦手なんだ」
「ありがとうございます」
「ところであの、どうしてここに?今、深夜ですよ?」
「んー、なんていったらいいのかなぁ、人より勘がいいっていうか……。まあ、あんまり気にしないで」
「はあ」
不明瞭な返答に不満はあった。しかし言いにくいことをわざわざ言わせるのも失礼なような気がした。
「なんで槍を持ってたんですか?」
「護身用」
いや、そういうことではなくて、と思いつつもそれ以上の答えを聞きだす気も失せた。槍の由来何ぞ聞いてどうするのか。これは先祖代々から受け継がれた、などという話を聞きたいわけでもない。それから僕は訊くこともなくなったように思い、黙って座っていた。
しばらくして救急車が来た。僕はそれに運ばれた。
それからのち、僕は両親に夜の出来事をこう説明した。自分の将来に不安を感じて気持ちがくさくさしたため、深夜の散歩に出たところ、野良犬に出くわした。その時たまたま僕はコンビニで買ったパンを手に持っていた。そのパンを手まるごと食われ、手首にけがを負った。そうして困っているところに金崎という女性が現れて助けてくれた。スコップを持って行ったこと、神社の土をほじくり返したことについては聞かれなかった。周りの人たちは神社の穴やスコップのことまでは発見できなかった。僕が話さなかったし、まさか神社に穴を掘っていたと思う人はいないからだ。
女生とは救急車が来る前に別れた。槍を持っているところを見つかったらやばいということで女性が立ち去ったのだ。そうか、槍は銃刀法違反に引っかかるものな。
それからあの化け物のことであるが、そのことについてはニュースにはおろか、地元の新聞にも載らなかった。学校で怪しいうわさ話として聞かされることもなかった。
後日あの神社へ行ってみると、そこには何もなかった。穴も埋まっていた。ただ、一部分の地面だけ、掘り返されたばかりみたいに見えたような気がした。
「たすけて」
「たすけて」
「たすけて」
何回も何回も、人影は声を発した。その声を聞いているうち、いつしか暗闇の中に青空が見え始めた。
僕はひんやりとした地面に横たわっていた。周りは地面に囲われていた。僕が横たわっているのは穴の中だった。
僕の上に土がかけられた。土が顔にかかり、目に入った。僕はそれを払い落とそうとした。しかしできなかった。指一本動かすことができず、目を閉じることさえできない。体はまるで肉の塊みたいに感覚がなく、力なく横たわっている。
そうしているうちにどんどん土がかけられていく。やめてくれ。死んでしまう!
僕はそう言いたかった。しかし言葉は発せられなかった。そして土が降り積もり、いつしか暗闇に包まれて行った。
僕は学校から帰るたびにホラー小説を読んだり、怪現象に関するサイトを閲覧したりする日々を送っていた。当時の僕は部活を引退してしまって、暇をもてあましていた。また進学のための勉強などというものはほとんどやらなかった。それというのも、進学する先は専門学校で、たいした勉強をする必要もないだろうと高をくくっていたからである。のちに先生から脅されて焦って猛勉強をしたこと、しかしいざ受験してみるとテストはやはり楽勝だったことは、また別の話である。
僕が古橋神社の存在を知ったのは八月の半ばごろだったと思う。僕が古橋神社の存在を知ったのは「心霊体験記~ここは行くな!~」という題名のブログだった。
『古橋神社
場所:静岡県御殿場市、御幸老人ホーム近く
解説:
この神社の来歴に関しては皆目見当がつかない。あらゆる手を尽くして調べてみたが、何もわからなかった。
この神社そのものはご神体がとっくに移動されている。もはや建物ばかりで、神社としての役割は果たしていない。にもかかわらず、ここには不気味な雰囲気が漂っていた。周りは木に囲われていて、外からではそこに神社があるとは到底思えない。鳥居が入り口のところにあってようやくそれと知れるくらいだ。
あんな場所だから、滅多なことでは迷い込むこともあるまいとは思う。しかしそれでも行くべきでない心霊スポットであるのは間違いない。危険かどうかわからない場所にはまず用心するというのは鉄則だからだ。それを守らないのは沸騰した湯の入っている鍋が熱いかどうか、触って調べようとするようなものだ。だから近づくのはお勧めしない』
その紹介文を読み、さらに残りの心霊スポットの紹介も読んだ後、最後のまとめのようなものがサイトの一番下に書かれていた。
『この心霊スポットを紹介したのは、読者の好奇心をあおるためではない。警戒を仰ぐためだ。間違っても行ってほしくないからだ。これはいたずらに興味を仰ぐために書いたサイトでは決してない。だからくれぐれも勘違いして、これらの場所には近づかないようにしてほしい。もし間違って行ってしまったとしても、少しでも嫌な雰囲気だと思ったら引き返してほしい。直感というものは得てして正しいものだから』
僕はそうしたメッセージを決して信じなかったわけではなかった。むしろ信じていた。それにもかかわらずその翌日僕は、その場所をグーグルマップで探し当て、その神社へと赴いた。この時、メッセージを軽んじていたということは否めない。しかし僕が古橋神社へ行くことにしたのは、何もメッセージを軽んじたからばかりではなかった。僕は心霊現象を体験した人というやつにあこがれていた。サイト上で自分の体験した心霊現象を書く人間をうらやましいと思った。そうした話の大半は嘘だろう、だと理解はしていた。しかしその中には本当の話もあると信じてもいた。そしてもし自分が真実を語る人間になることができたなら、それはどれほど素晴らしいことだろうとも思った。
そうした人間になれるのなら、多少の犠牲を払うのやむなしという考えが僕にはあった。よく言うではないか、虎口に入らずんば虎児を得ず、と。
学校から家に帰った後、僕はスマホやお守りをもって神社へ向かった。神社への入り口を見つけるのは大した手間ではなかった。そのあたりは何回か行ったことがあり、多少土地勘があったのだ。神社は御殿場市と箱根町を隔てる、長尾峠の方にあった。峠側の方は木々に覆われた、山同然ところがしばしばある。神社はそうしたところにあった。峠側へ向かっていくと、いつしか上り坂になり、そして急に木ばかり生い茂っているところに出くわす。その中でポツンと、鳥居が立っているのを僕は見つけた。
僕は鳥居をくぐった。そして木々ばかりの道の中へと入っていった。すると全身をぐにゃぐにゃしたゼリー状のもので包まれてくまなく圧迫されたような気分を感じた。
進んでいくとすぐに、立ち入り禁止のロープが張り渡されているのを見つけた。しかし僕はそれをかまわず踏み越えた。誰もこんなところにいたり、僕のことを見たりしていないと思って大胆になっていた。さらに進んでいき階段を上ったり、曲がったりするうち、とうとう開けたところに出た。かと思うと、建物が見えた。僕はとうとう神社を見つけた。神社そのものはさほど目を引くようなものではなかった。どこにでも見るような神社、地味で、狛犬と獅子さえない。ちっぽけでぼろぼろの、みすぼらしい神社だった。
ここが本当に心霊スポットなのかと僕は疑った。拍子抜けするほどに何もなかった。たえずいやな気分は味わってはいたものの、境内に来たからと言ってその気分が格別強くなったわけでもなかった。
僕はぽかんと神社を見上げていた。
「ここ立ち入り禁止だよ」
後ろから女性の声がした。その声に反応して、僕の体が震えた。僕はすぐさま振り向いた。
僕の背後には大人の女性が立っていた。多分二十代後半か三十代後半だろうと思われた。髪を後ろに束ね、ジーンズをはいていた。
「何で勝手に入ってきてるの?」
僕は女性にそういわれてすっかりばつが悪くなった。ルールを破ったということ、しかも遊び半分で来たということ、そのうえ見も知らぬ他人から怒られているということ、いろいろな要因が重なってたまらなくばつが悪かった。
僕はすっかり気が動転してしまった。とっさに頭を下げた。そして低い声で、すいませんと言った。しかし声があんまり小さかったから、たぶん相手にはもごもごとしか伝わらなかっただろう。
僕は顔を伏せたまま、女性のそばを走って通り過ぎようとした。
「何逃げようとしてんの?」
僕は走っていくところを肩をつかまれて引き留められた。
「なんで入ってきたのか聞いてないんだけど」
「いや、あの」
「何?はっきりしなよ」
「その、すいません」
僕はとりあえず謝った。しかし女性は何も答えなかった。ただ僕の目をじっと見てくる。その目があんまりギラギラしていてまるで山猫みたいだった。僕はその目によって隠し事をする勇気をすっかり失った。
「ネットでここのことを知って。心霊スポットだって。それでどんなところかな、と思ったので」
「もう二度と入ってこないで。何度も言うけど立ち入り禁止だから、ここ」
「はい。すいませんでした」
「じゃ、行ってよし」
女性は軽く僕の背中を押した。僕は解放されたと知るや、その場から逃げるように立ち去った。
そこははじめ暗闇だった。暗闇の中、僕が途方に暮れていると、だんだん辺りが明るくなってきた。それでも完全には明るくならず、薄暗い、さながら宵の時ぐらいの状態になった。
奥に人影が見えた。顔かたちも何もかも一切わからない。ただ相手は男であるような気がした。
「――」
人影が何か言った。僕に向かってだった。僕は人影が僕に何か用があるのだと思い、近寄っていった。人影は僕を手招きしていた。やはり僕に用があるのだ。
どんどん近づいて行って、やがて僕はその人影に対して不吉なものを感じた。だんだん近づいていく足の動きが鈍った。それでも近づいていった。やがて、僕はどうして見知らぬものに対して近づいているのか、もし危険なものだったらどうするのかということに思い至った。僕は立ち止まった。そして後ずさった。すると人影が走り寄ってきた。僕はとっさに直感した。逃げなければと。そして行動にすぐさまうつした。
僕は懸命に走った。にもかかわらず足音がどんどん近づいてくる。したっしたっと乾いた地面をける音が。それは裸足で地面をける音だった。
そしてとうとうそれは僕のすぐ背後に迫ってきた。足音でそれを感じられた。直後、二の腕をつかまれた。痛いくらいに強い握り方だった。
僕は身をこわばらせ、そして叫んだ。
そして目が覚めた。夢うつつから次第に覚醒に近づき、やがて自分が夢を見ていたと知った。そして安堵した。僕は誰にもつかまったりしていなかったのである。
僕は自分の馬鹿さ加減に呆れながら頭を起こした。その時そこがベッドでないことを知った。僕が寝ていたのはコンクリートの上だった。そこは家の前だった。
どうして僕はこんなところで眠っているのか。いや、そもそもいつ眠ったのだろうか?いいや、眠った覚えはない。僕はついさっきまで、ネットの怪談を読んでいたはず。その時急に部屋が真っ暗になって――。
そこから先を全然覚えていない。
僕はその時、いつまでも続く二の腕の痛みが気になり始めた。僕は袖をまくった。。二の腕を見ると、青紫色のあざがついていた。それは五本の線から形作られていた。手の形であることは明らかであった。
何が起こったのか、自分では全く分からなかった。いったいどうして、変な夢を見たかと思ったら家の前で寝ているのか。そもそも僕はいつの間に外へ出たのか。
僕は家の中へと入った。家の中では、両親がテレビを見ていた。
「お帰り、琢磨」
「ただいま」
「随分遅くまで神社に行っていたじゃない」
「え?」
「神社行ってたんじゃないの?」
「神社なんて行ってない。誰がそんなこと」
「あんたが言ったんじゃないの。夕飯食べ終わった後外出て行くから、どこへ行くのって聞いたじゃない。そしたら神社、なんていって」
僕ははじめ戸惑っていたが、二階へ上がり、頭を抱えながら考えるうち、しだいに起こったことを理解し始めた。
僕はあの神社に引き寄せられたのだ。怪談を読んでいるときに暗闇に包まれた瞬間、僕は外に呼び出された。自分の足で歩き、神社まで向かった。そして途中で引き返したものの、捕まった。だから二の腕にあるあざは――。
僕はすぐさま部屋に戻った。そして部屋に置いてあったお守りを手にした。ご利益は無病息災だが、この際ないよりもましだ。
僕はそれから、一階へと駆け降りた。そして台所にある食卓塩を手につかみ取った。そして頭に大量に、ばらばらと振りかけた。
「何してるの?」
母がそんなことを言ったが気にしない。何度も何度も振りかけ、それから塩を洗い流すためにシャワーを浴びた。ついでに追いかけてきたやつの厄も洗い流せるかもしれないいう考えも、無くはなかった。
そのあと僕は着替えを着て、お守りを手に持ち、ベッドに入った。僕は眠れないものと思っていた。ところが次第にうつらうつらとし始め、いつしか眠ってしまった。
「たすけて」
「たすけて」
「たすけて」
「たすけて」
目が覚めた。僕はベッドの中にいた。ベッドの中で覚醒していくのを感じながら、僕は気が付いた。彼は土に埋められた。そして僕に助けを求めていたのだと。
僕は起き上がった。時間は午前一時。明日彼を掘り起こしに行こうか。いいや、駄目だ。明日の昼間などに言ったりしてはいけない。なぜなら、あの女がいる。あの女は平日にもかかわらずあの神社に僕が入ったことを知った。つまりあそこを見張っているはずだ。陽のあるうちには容易には入れない。
それならば、夜に行くしかない。そうだ夜に行くのがいい。彼は暗闇が好きだから。僕はなぜだか、そのことを知っていた。
僕は一階へと降りた。そして頭につける形の懐中電灯とスコップをもって外に出た。
神社の境内にたどり着くと、僕は迷うことなく地面を掘り始めた。掘るべき場所はわかっていた。彼が教えてくれたから。
掘り進めていくと、スコップが何かに突き当たった。土を払いのけると、木箱のようなものが見えた。多分棺桶だ。
僕はさらに発掘作業を進め、とうとう棺桶の全体が見えるところまで掘り出した。そこまでやり終えるといったん穴から出た。そして棺桶をしばらく見つめていた。これが彼の入っている――。
ごと。
そんな音がした。それは棺桶を、何かがたたいた音だった。いや、何かと言う必要はない。それは明らかに彼だった。
馬鹿な。彼は死んでいるのでは。
棺桶の蓋がまたたたかれた。次にふたが浮き上がった。蓋は押し上げられた。その中から突き出された腕が懐中電灯の明かりに照らされた。その腕はカサカサに乾き、ひび割れている色はくすんだ茶色だった。。腕は二本伸びてきて、ふたをすっかり押し上げた。その中にあったのは、棺桶をくまなく満たすように詰められた土と、彼だった。その眼窩には目玉はなく、ただ闇だけが満たしていた。
それの上体が起き上がった。すると土がパラパラと棺桶の中へ落ちていった。
僕は後ずさった。それは穴から這い上がった。僕はまた後ずさる。それは僕の方へと近づいてきた。
彼はなぜ僕の方へ近づいてくるのだ。一体何を考えているのか。
彼は長い間穴の中に入っていた。そしていま起きあがった。まず起きたら、何をする?歯を磨いてそれから、ご飯を食べる。
もちろんそれだけじゃない。ほかにも学校の支度だってする。しかしそのいずれも彼には必要なさそうだ。そして彼は僕に向かって、近づいてきている。
はめられた。
畜生。僕はあいつにはめられた。あいつを掘り起こすために利用され、挙句の果てに食料にされようとしている。
「くそっ!」
僕はスコップをミイラに向かって振り下ろした。しかしミイラはびくともしなかった。まるで木か何かをたたいたような感触だった。
ミイラの手が僕の両方の二の腕に伸びてきた。目の前にミイラが立っている。その時初めて僕はミイラのにおいをかいだ。すっかり干からびているはずにもかかわらず、そいつからは腐臭がした。甘く、すえたようなにおい。鼻がつんとするやつだ。それから金臭いにおいもした。多分、血の匂いだ。こいつが今まで食ってきた人たちの。
その時、急に騒々しくなった。誰かの叫び声が聞こえ、そのほかにもばたばたという音がした。
次いでミイラの顔面に何か太く大きなものが突き刺さった。途端、僕の二の腕を握っていた手から地かが抜けた。
僕は自分でも驚くほどの速さで後ろへと逃げた。その前に誰かが躍り出る。その人は頭の後ろに束ねた黒い髪をはためかせていた。そして下に倒れているミイラに向かって何度も何度も太く大きなもの、槍を突き立てた。
やがて昨日神社で出会った女性はミイラを突き刺すのをやめた。ミイラは身動き一つしなかった。
「大丈夫?怪我とかしてない?」
女性はこちらを振り向いていった。
「はい」
「あんた、ここへ立ち入り禁止だって」
「無理でした。僕はそいつに呼ばれてしまって。どうしても逆らえませんでした」
「ああ」
女性は戸惑ったように口を開け、声を発した。
「まあ、もう安心だから。家に」
そのあとは本当に一瞬のことだったと思う。しかし僕にはひどくゆっくりに感じられた。あれが走馬灯というやつなのかもしれない。
ミイラは音もなく起きあがった。そして大口を開けた。女性の首に歯を突き立てんとしていた。
僕はミイラに向かって走り寄った。そしてミイラの口に腕を突っ込んだ。ミイラは僕の拳を飲み込み、そして手首に歯を突き立てた。手首から血が染み出る。ミイラの顎に鮮血が滴った。
「ちくしょう!」
女性が叫んだ。そして槍の刃をミイラの左の胸、心臓に突き立てた。
ミイラはまた力を失った。僕の手首から歯が離れた。そして倒れ、今度こそ絶命した。
「シャツ脱いで!」
女性は言いながら、僕のシャツを脱がせた。そしてそのシャツを僕の手首に巻き付け、止血した。それから電話をかけ始めた。
「とりあえず下に降りよう」
僕と女性は下に降りた。そして通りに出て地面に座った。
僕は手首からだらだら血を流している割に、冷静だった。不思議と手首はいたくなかった。ただ僕はいろんなことが気になって仕方がなくて、そっちのことばかり考えていた。
「あの、あれはいったい何なんですか?」
僕は訊いた。
「わからない」
「あれは死んだと思いますか?それとも」
「心臓を刺したから大丈夫だと思うけど。吸血鬼は心臓に杭を刺したら死ぬじゃん」
「あれ、吸血鬼なんですか、もしかして」
「わかんない」
「もしかして僕、吸血鬼になったりとか」
「それもわかんない。もしそうなったら、ごめん」
「いや、そんな全然。むしろ助けてもらってありがたいぐらいです」
「いや、私が油断してたからこうなった。これは私の責任だから。もしなんかあったとしたら何としてでも君のことを助けるから。一応、なんかあった時のために私の名前伝えとく。私の名前は金崎鈴。連絡先は、スマホ持ってる?」
僕はスマホを差し出した。女性はしばらく操作をした後スマホを返した。
「電話の連絡先いれておいたから。ラインはいれてない。苦手なんだ」
「ありがとうございます」
「ところであの、どうしてここに?今、深夜ですよ?」
「んー、なんていったらいいのかなぁ、人より勘がいいっていうか……。まあ、あんまり気にしないで」
「はあ」
不明瞭な返答に不満はあった。しかし言いにくいことをわざわざ言わせるのも失礼なような気がした。
「なんで槍を持ってたんですか?」
「護身用」
いや、そういうことではなくて、と思いつつもそれ以上の答えを聞きだす気も失せた。槍の由来何ぞ聞いてどうするのか。これは先祖代々から受け継がれた、などという話を聞きたいわけでもない。それから僕は訊くこともなくなったように思い、黙って座っていた。
しばらくして救急車が来た。僕はそれに運ばれた。
それからのち、僕は両親に夜の出来事をこう説明した。自分の将来に不安を感じて気持ちがくさくさしたため、深夜の散歩に出たところ、野良犬に出くわした。その時たまたま僕はコンビニで買ったパンを手に持っていた。そのパンを手まるごと食われ、手首にけがを負った。そうして困っているところに金崎という女性が現れて助けてくれた。スコップを持って行ったこと、神社の土をほじくり返したことについては聞かれなかった。周りの人たちは神社の穴やスコップのことまでは発見できなかった。僕が話さなかったし、まさか神社に穴を掘っていたと思う人はいないからだ。
女生とは救急車が来る前に別れた。槍を持っているところを見つかったらやばいということで女性が立ち去ったのだ。そうか、槍は銃刀法違反に引っかかるものな。
それからあの化け物のことであるが、そのことについてはニュースにはおろか、地元の新聞にも載らなかった。学校で怪しいうわさ話として聞かされることもなかった。
後日あの神社へ行ってみると、そこには何もなかった。穴も埋まっていた。ただ、一部分の地面だけ、掘り返されたばかりみたいに見えたような気がした。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜
日々埋没。
ファンタジー
「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」
かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。
その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。
レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。
地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。
「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」
新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。
一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。
やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。
レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
『お前を愛する事はない』なんて言ってないでしょうね?
あんど もあ
ファンタジー
政略結婚で妻を娶った息子に、母親は穏やかに、だが厳しく訊ねる。
「『お前を愛する事は無い』なんて言ってないでしょうね?」
【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。
貴方なんて大嫌い
ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と
いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている
それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる