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23.真央が気になっていることは
しおりを挟む学校では、何度も進路についての話があり、具体的に自分の力で進めるかどうか、そのためにどうするか、方向をしぼってゆく時期になってきた。真央も、あれやこれやと長い間迷っていたが、とりあえず英語を生かす方向にしぼることにした。
京都と大阪の大学を一つずつ受けることに決めた。推薦の試験は10月と11月だ。
英語の勉強をして、何をするのか、どんな仕事につくかはまだ決めていない。
将来的には、旅行会社に勤めたり、ホテルや、航空会社なんかもいいなと思う。大学のことも大事かもしれないけど、結局はその先が自分の将来なんだから、考えるのが早すぎるなんてこと・・ないよね。
カフェでバイトしてると、接客業が楽しいから、ホテルがいいなと思う。仕事の内容は全然違うとは思うけど共通点はあるんじゃないのかな。
そういう目標でがんばれば、何かが開けてくるような気がするのだ。自分の将来がどうなっていくかワクワクする。
ただ、時間もないし、もっと勉強しないといけないから、バイトもやめなくちゃいけないと思うのだけれど、辞めるとは言い出せないでいる。
おこずかいも欲しいし、楽しいし・・。
それにみんなには言ってない理由がもうひとつ。・・ある。
るぽのカフェでバイトをするようになって7カ月・・。
最初は、お客さんも少なくて、未来ちゃんと一緒に気楽に遊びに来ているような状態だったけど、最近は毎日とても忙しい。
バイト始めたばかりの頃は、言われたことをするだけでも精一杯だったし、大きな声であいさつするのも緊張したけれど、もう慣れた。
敏ちゃんが買って来てくれた、カランカランとなるベルの音が合図になって、「いらっしゃいませー」のみんなの声が揃うと楽しくなる。
マキノさんは仕事を楽しむ天才だと思う。
次は何をしよう、どんなメニューにしようって、いつも考えていて、何か作っては私たちに食べさせてくれる。マキノさんの作るお菓子はいつも素朴でおいしい。
家でも真似したいなと思うような焼き菓子が多い。
マキノさんの真似をして白黒のユニフォームにすることになったのも気に入ってる。
それに合わせて、未来と2人で、モノトーンのバンダナや髪留めをそろえたものだ。
お店が忙しくなってきた頃に、遊がスタッフに加わった。
最初は、怖そうな男の子たちと一緒に来たけど、よく見ると顔もきれいで背が高くてかっこしいし、性格もやさしくて、・・・いいなと思うようになった。
初めてキャベツを刻むのを見たとき、あまりの上手さに目が点になってしまった。男子のくせに、何故こんなに包丁の使い方がうまいのか。
聞いたら、旅館の板場で仕事していたらしいから、そうなのかと納得したけど、私も負けられないなと思った。
・・私が高校卒業して四月になれば・・もうバイトも続けられなくなるし、遊と会えなくなるのかなと思ったら、とても寂しい。けど、まだ今はそういう事を考えないようにしてる。来年の3月までまだ時間がある。
この間マキノさんが突然バレーボールをしようって言うから、ホントはあまり気が進まなかったけど、参加してよかったと思う。
遊のバレーボールをしているところを見ることができたから。
素直に、うまいなぁと思ったし、心の底からかっこいいなと思った。私のすぐそばで跳んでレシーブしたところ思い出すと今でもドキドキする。
有希ちゃんと速攻とかセンターから打つのとか、コンビネーションっていうのかなんていうのかしらないけど、ちょこっと合わせて攻撃するのが、ちょっぴりうらやましかった。
私もバレーボールやっとけばよかったって一瞬思った。
・・・でも、やっぱり無理だな。そもそも私の中でバレーボールの印象が悪い。
今の学校の女子バレーボール部のゴタゴタは、ホントにひどかった。
たまに体育館で練習しているところを見かけても、有希ちゃんがいつも一人でいたし、重そうな荷物をひとりで持っていたり、辛そうに見えた。
何があったのか知らないけど、どんなに相性が悪かったとしても、バレーボールやってるんだから、協力しなきゃどうしようもないのにね。
まぁ。楽しいか楽しくないのかはいっしょにするメンバーによるんだなぁって、つくづく思う。バレーに限らず、バイトでもなんでもね。
今日は日曜日。昨日マキノさんがめずらしく調子を崩して帰ってしまったので、今日はお休みらしい。それで、昨日は「高校生組だけでお店を回すから、明日少しだけ早めに来てね。」って、遊から電話がかかって来たのだ。
スマホに、遊からの着信があって、私がどんなに跳びあがったか・・。
かけた本人は、絶対にわかってないだろうなぁ・・。
今日は、朝市も休まずやるって遊が決めたらしいから、私も協力したいと思った。
勉強はいつでもできる。今日はバイトをがんばりたい。もしかしたら3人で結託しているのを見ると未来が残念がるかな。・・えへへ。
マキノさんはあまり休まないけど、自分が休むときはおばさんチームを入れるようにシフトを組むよう敏ちゃんに言っているらしい。高校生チームでお留守番するときは時々あるけれど、一日任されるのは初めてだ。
午前中、遊は緊張したり焦ったりもしていたみたいだけど、だんだんいつも通りになって、なかなか頼りがいがあった。そしてなんだか楽しそうだった。
私も有希ちゃんも、いつもだったら、お客さんが途切れた時や、オーダーの待ち時間にはぼーっとしていたりするんだけど、今日はこの次は何をすればいいのか、何か足りないものがないのか、どうすれば遊の手助けになるのか、一生懸命考えて動いた。
3人の気持ちが一つになったような、仲間だ!って思えた。連帯感が嬉しかったな。
「おはよー!!みんなお疲れ~。」
3時にマキノさんと春樹さんが来た。お客さんはいたけど,オーダーは終わってて落ち着いていた。
春樹さんのことを有希ちゃんは先生と呼ぶ。6年生の時の一年間、春樹さんは先生として学校に来てた。もともと近所のお兄さんだと思うから、先生とは呼びにくい。
マキノさんとは・・。なんだかホントにぴったりだなって思う。
「ごめんね。心配かけて、突然休んじゃって。」
「ホントですよ。なにがオハヨーですか。業界みたいな言葉使っちゃって。」
遊がニヤニヤと笑いながら言ったのに対して、マキノさんは遊の頭をつかまえてガシガシっと乱し「やめてー。」と遊がわめいた。
マキノさんと遊は、すごく仲がいい・・と思う。仲がいいというよりも近いって感じかもしれない。あんな風に姉弟みたいにじゃれあえて、いいなぁ。
「真央ちゃんありがとう。有希ちゃんありがとう。今後は私もまじめに休むからこれからもよろしくね!」
なんの宣言だか・・・まじめに休むってマキノさんらしい。春樹さんが苦笑してる。
遊がせっかく「レジの中確認して。」と言っているのに、マキノさんは「敏ちゃんにまかせる。」なんて言ってる。
「どれだけ頑張ったか見てやればいいのに。」
春樹さんが言った。さすが我々の気持ちがよくわかってるな。
「あ、そだね、そうだね。でも頑張ってくれてるのはわかってるよぉ!」
マキノさんは、わたしたちを信用し過ぎなんだね。でも、遊が頑張ったのはちゃんと見てあげてほしいな。
「あっこれが朝市の分ね。忙しかったでしょう。ごめんね。そう言えばわたし、和風ランチのメニューぐらい何とか立てておけばよかったね。お、すごい。遊これハンバーグの仕込みもできたの?複雑だな~こりゃ。私がいなくてもこの店平気だね。」
「そんなわけない。」「そんなわけないですよ。」
3人の声が揃ったところで、それまで座っていたお客さんが立ちあがった。
「ありがとうございました~。」
座敷に誰もいなくなって、マキノさんはテーブルを片付けながらこちらに声をかけた。
「真央ちゃん、コーヒー淹れてくれるかな2つ。遊はこっちおいで。カフェオレでいい?二人とも好きな物淹れて飲んでね。」
「は~い。」「はい。」
マキノさんと春樹さんと遊が、三人で座敷に座り込んだ。
どきり・・・とした。
遊の将来に関する話しをするに違いない・・・。
思わず聞き耳を立てた。
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