33 / 110
33.定休日を決める。
しおりを挟む遊は、週3回、学校へ通いはじめた。
そして、真央未来もしばらくの間お休みすることになった。
彼女らは、受験が終わるとまた帰って来てくれるので、新しいバイトさんを雇うのは考えどころだ。
有希ちゃんは暑さがやわらぎ気候が良くなってきて、原付バイクで通ってくるのが快適になったよう。
仕事中も元気いっぱいだ。
9月以後の戦力補強については危機感を持っていたが、ヒロトと千尋さんが加わったおかげでスムーズに回っていくことがわかった。
マキノは、秋になって、お店のこと以外にいろいろしなければいけないことが増えてきた。
11月に式を挙げようということになっていたので、簡単に簡単にと言いながらも考えることがたくさんあったのだ。結婚式は、春樹さんのお友達が司会をしてくれるらしくて、マキノ側の受付は元同僚のサクラに頼もうと思っている。というか、そういう予約をされていた。
案内状を出すのは、子どもの頃から中学高校大学それぞれの友達、母さんと万里子姉夫婦。春樹が招待する分は春樹にまかせてあるからノータッチ。
派手な事は好きではないが、祝福してくれる人達に、“今幸せです”という報告はしたい。
カフェのスタッフはどうしようかと思ったけれど、当日お休みにして2次会をお店で用意しておいてもらうことになり、今まで関わってくれた人達と一緒に過ごすことにした。
イズミさんは式に出てくれるから、仁美さんと遊とヒロトが、準備をしてくれる。特に仁美さんが、まだ2ヶ月もあるというのに張り切っている。
春樹の学校でも2学期が始まり、9月の終わりにある運動会のために、準備や練習で忙しそうにしている。当日はお天気がよければいいのにな。と思う。
9月になったら定休日を作るはずだったが、平日の5日間のお弁当を始めてしまったのもあるし、土曜、日曜は閉めたくないしと、ずるずると決められずにいた。
マキノは、何気なくそばにいたイズミさんに相談してみた。
「定休日ってどうしたらいいと思います?」
「あったほうがいい。とくにマキノちゃんのために。」
即答だ。わたしのために・・という意味はあまりピンとこなかったが“自分さえ頑張れば”という考えが良くないという事は、一度電池切れになったときによくわかった。
自分も一人のスタッフとして常識的な仕事の量に抑えなくてはと思っている。
何かあった時、返って周りに迷惑をかけてしまう。
「ねーねー・・・。」
イズミさんがヒソヒソ声で話しかけてきた。
「赤ちゃんは?」
・・ぼんやりと考えてはいたけど、あまり実感がない・・。
そうだなぁ。もっと現実的に考えなくちゃ。
自分がいなくても回るようにしておかなくてはいけない。
高校生3人に一日任せた日はあったけれど、あれは変則的な日でもあったし、自分がいない時のアニュアルも考えておかなくてはいけないのか・・。
少し考え込んで黙っていると、イズミさんが言い訳のように付け足した。
「気にさわったらごめんなさい。深い意味はないのよ。」
「いえ、違うんです。確かに定休日も自分不在のことも考えないとなぁって思って。まだそういう気配はありませんけどね。」
とりあえずイズミさんには、同じようなヒソヒソ声で返事をした。
― ― ― ― ―
秋分の日の夕方から、お店は早めに閉めて、スタッフ全員が揃って会議をすることになった。ヒロトが作ったお料理の試食会も兼ねてだ。
「治部煮って、おいしいね。要は鶏肉の煮物だけどね。」
「この昆布締めってヒロト君が作ったの?お昆布がついたままでもいけるね。おいしいわ。」
「秋はやっぱりナスねー。」
「これいいね。鮭ときのこのホイル焼き。」
「結局、洗練されたお料理より家庭的なものがウケるというか、食べたくなるね。」
和風の物および和洋折衷なものを中心にというリクエストを受けていたヒロトは、笑顔を少しひきつらせながら、主婦達の批評を受け止めている。
「ヒロト君、試食の作成お疲れさま。みなさん食べながらでいいので、会議を始めます~。」
マキノが笑いながら、すでにしっかり口の動いている主婦組に話し合いを促した。
「議題は皆さんご承知の通り、定休日について。ご意見を伺いたいと思います。」
では・・と,最初に敏ちゃんが挙手した。
「えーと、私が思うに、ここまでカフェ・ル・ルポをやってきて、もうこの地域の皆さんにはちゃんとなくてはならないお店になったと考えています。ですから、定休日というものを設け、緩やかな営業になったとしても人から忘れ去られることなく“このお店の定休日は何曜日だ” っていう感じでやって行けると思います。」
「お休み歓迎。」
「敏ちゃんと同じでーす。」
根回しができているのか、異議のある様子はない。
「はい。ありがとうございます。では,何曜日がいいですか?」
「土曜日曜はお店を開けておいた方がいいかなと思います。新しいお客さんが来ることが多いから。」と仁美さんが言った。
「水曜日がいいんじゃないかな。お弁当の問題はあるけど。」とイズミさん
「お弁当のことを言いだすと休めなくなっちゃうから、水曜日でいいんじゃない?献立考えるのも少し楽になるし、ニーズとしてもみんなが毎日うちのお弁当ばかりを食べたいわけじゃないと思うから、水曜日のお弁当がなくなる分は、他の曜日に移るだけだよきっと。」と敏ちゃんが言った。
若い子たちはもぐもぐと口を動かすだけで、話は大人たちに任せているようだ。
話しは簡単にまとまった。
「じゃあ、10月から、定休日は水曜日に決定ね。」
敏ちゃんには、10月以後の新しいシフトを組んでもらうように頼んだ。人の動きの難しいところを考えてもらえるのは、マキノにとってホントに大助かりだ。
ちなみに、ヒロトの作ったお料理は、懐石料理に似た感じの家庭料理と言えた。
使っている材料がありふれたものだから、そう感じるのかもしれない。
ヒロトの親しみやすい笑顔の雰囲気と同じように,なつかしさを感じる味だった。
0
あなたにおすすめの小説
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』
本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」
かつて、私は信じていた。
優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な──
そんな普通のお兄ちゃんを。
でも──
中学卒業の春、
帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、
私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった!
家では「戦利品だー!」と絶叫し、
年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、
さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!?
……ちがう。
こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない!
たとえ、世界中がオタクを称えたって、
私は、絶対に──
お兄ちゃんを“元に戻して”みせる!
これは、
ブラコン妹と
中二病オタク姫が、
一人の「兄」をめぐって
全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──!
そしていつしか、
誰も予想できなかった
本当の「大好き」のカタチを探す、
壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。
異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?
来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。
そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった!
亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。
「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」
「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」
おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。
現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。
お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、
美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!
里帰りをしていたら離婚届が送られてきたので今から様子を見に行ってきます
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<離婚届?納得いかないので今から内密に帰ります>
政略結婚で2年もの間「白い結婚」を続ける最中、妹の出産祝いで里帰りしていると突然届いた離婚届。あまりに理不尽で到底受け入れられないので内緒で帰ってみた結果・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
【完結】モンスターに好かれるテイマーの僕は、チュトラリーになる!
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
15歳になった男子は、冒険者になる。それが当たり前の世界。だがクテュールは、冒険者になるつもりはなかった。男だけど裁縫が好きで、道具屋とかに勤めたいと思っていた。
クテュールは、15歳になる前日に、幼馴染のエジンに稽古すると連れ出され殺されかけた!いや、偶然魔物の上に落ち助かったのだ!それが『レッドアイの森』のボス、キュイだった!
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる