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御芳にて
スタッフの募集
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工事がもうすぐ始まる。
その前の週まるまる、マキノはバイトのお休みをもらった。その間にいろいろなことを片づけなければいけない。先日書きだしたルーズリーフを広げてみる。
何をするにも・・・パートナーが欲しいな。お互いが信頼し合い助け合える仲間。
まず、困ったときの朝市のおばちゃんだのみ。夕方ルミエールからの帰りに、いつも朝市をしている広場でおばちゃん達がおしゃべりしているのを見つけて、そのおしゃべりの輪に入って、バイトに来てくれるような人がいないかたずねてみた。
マキノの問いかけに対して、おばちゃんたちは口々に好きなことを言ってくる。
「豆のコーヒーを淹れるのって難しそうだね。」
「若い女の子がいいんじゃない?そんな子いたかねぇ。」
「このばあちゃんを雇ってもらおうか。お運び手伝うよ。」
「あんたみたいな腰の曲がったばあちゃんはダメよ。あはは。」
「何言ってんの、お互い様でしょうが。あははは。」
「あ、佐藤さんちの奥さんどう?」
「そうそう、下の女の子が小学校に入ったから、お昼の間に何かしたいんじゃない?」
「子どもが帰ってくるまでの時間しかダメだと思うけど。」
「あの奥さんは、かわいいよねぇ。」
「うんうん。いい子だよね。」
マキノは、おばちゃん達の意見が一致したところを見計らって、その佐藤さんとやらを紹介してくれるように頼んだ。
「ここにもよく来てるよ。マキノちゃんも会ったことあるんじゃない。」
「小学生の子どもさんがいる、かわいい人ですか・・。」
ああ、なんとなく顔が浮かぶ。女の子を二人連れてくる、ちょっとくせ毛で、小柄な人だった気がする。当番では当たったことはないけれど、クッキーと野菜を出していた。きっとその人だ。持っていたメモ帳を一枚破って、自分の携帯の番号を書く。
「電話番号書いておくので、よかったら連絡くださいって伝えてもらえますか?」
おばちゃんたちは快く引き受けてくれた。
おばちゃん達一押しの佐藤さんの奥さんはメモを預けた翌日に連絡がきて、面接をすることになった。これまでの人生で、人様の評価などしたこともない。マキノの連休の初日、土曜日の朝市が終わったあとの午後、少々緊張してそわそわと待っていた。
こんにちわぁと、佐藤さんの奥さんがやってきた。やわらかい声だ。
「いらっしゃいませ、どうぞ。」
佐藤さんの奥さんは、イズミさんと言った。まだ30代半ばぐらいに見える。若いけれど、第一印象は穏やかでふんわりしたような印象だった。
コーヒーを淹れて座敷のテーブルに白紙のルーズリーフを広げて、向かい合って座る。
まずは、自分がどんなお店をしたいかを説明して、今は改装もできていないからイメージは想像してもらうしかないが、一緒に考えてくれる人を求めているという事を訴えた。
仕事の時間の希望をたずねると、子どもの都合でときどきお休みをいただく以外は、平日のお昼の間ずっと来れるとのことだった。直感だけれども、イズミさんの発する言葉の端端から、実はしっかりしていて頼れるのではないかという感じが伝わってくる。もし平日が任せられれば、あとは土・日は学生バイトが雇えそうだからその部分も都合がいい。
仕事についての話をすませてしまうと、次は家族の話題へと移ってゆく。
「佐藤さんの子どもさんはおいくつですか?」
「小学校の4年生と1年生のどちらも女の子。あのう、さっきから思っていたんだけれどね、・・下の名前で呼び合うというのはだめかしら。」
「あっ・・それもそうですね。じゃあ、イズミさん?」
「それでいいと思う、マキノちゃん。」
うふふふとお互い照れ笑いをしてからマキノは何気なくたずねた。
「あの、ご主人さんは、ご職業何をなさってるんですか?イズミさんが野菜やお菓子を朝市に出してるのを見たけど、農家じゃないですよね。」
「ああ、あの野菜は、私が畑を少し作ってて、たくさん出来過ぎたものを出してただけなの。お菓子はね、実は私じゃなくて、主人が作るのよ。」
イズミさんはそう言って恥ずかしそうに笑った。
「へえ・・器用なご主人さんなんですね。おしゃれな方なのかなぁ。」
「無口で、無愛想で、おしゃれとは縁遠いような風体よ。」
「どんな方だろう・・。」
「山が好きで、山にばかり行くの。主人が勤めている会社が大きな山林を所有してて、その管理をするのが仕事。」
「・・や・・山・・山ですか?」
「そう、山の木々の管理。杉や桧とか。だから自分のことキコリって言うのよ。」
「・・キッ・・キキ・・キコリ!!」
「変でしょ? 斧で木を切るわけでもないのにね。」
「おぉのぉおおっ!!!」
マキノが、がたっとイスから立ち上がった。イズミさんが少しひるんだ。
「・・お・・斧がどうかしたの?」
ポムドテールのママさんが言っていた、キーワードは覚えてる!
そのひとつひとつが順番に鮮明に思い出された。
「自分のことキコリって言ってる」
「奥さんがかわいい」
「うちの近所」
「無口で無愛想!」
全部がつながった!それ以外ないっ!!
「あのっあのっあのっ、ご主人って、もしかして、もしかして、」
「はい?」
イズミさんが若干ひいてる。でもかまわないっ!
「もしかして、タツヒコさんてお名前ですかっ?」
「う・・うん。あら、知ってたの?」
「そっ、そっ、その節はっ・・!」
マキノは腰を90度にぺこっと折って叫んだ。
「たいへんおせわになりましたあああっ!!」
面接のはずだったのに、イズミさんがタツヒコさんの奥さんだったことが判明して、マキノばかりが必死で語り続けることになった。ソロツーリングをしていて、パンクして雨が降って困り果てているときに奇跡のように救われたこと。それから会社を辞めた話。ここでカフェをすると決めて頑張ってきたことをずっと聞いてもらった。
「そう。全然知らなかった。主人はそんなこと教えてくれなかったよ。」
「ご主人さんにとっては、とるに足らない事だったんでしょうね。」
タツヒコさん視点でよくよく考えたら、仕事の帰り道に、落し物(私)を拾い、いつものバイク屋さんに寄って、落し物(私)は、自宅の近所のペンションに届けた。・・普段とほぼ変わらない、ただの一日でしかなかったのだ。
「それから2年も経つんですよね・・。」
「でも、すごく勇気があるね。せっかくいい会社に勤めていたのに、それを辞めてまでこんな田舎にきちゃって。」
「うーん。なんかね、あの頃は、あの会社の仕事をずっとしていてもやりがいは見つけられないって思っちゃったんですよ。・・もっと深く関われば自分の居場所があったかもしれないのにって、今なら思えますけど。」
イズミさんはうんうんとうなずいて、話の続きを促してくれる。
「損害保険って、突然起こった事柄を救済するものでしょう。一般の方って、普段はは自分が事故に遭ったり災難に遭うことなんてを想像しにくいものだと思うんですが、何気ない日々でも危険な事って転がってるから、それを気づかせてあげて、安心を売るんですよね。でも、大きな会社の内情って、個人個人に寄り添うよりも、会社の利益や成績や効率を重視してることがよくあって、それって本当に保険の理念として正しいの?という疑問が常にあったんです。上司も厳しくて辛かったし、私がしてたのは事務系の仕事ばかりで、会社の歯車の一つでしかなくて、自分が何をしたかったのかを見失ってました。今思えば保険のおかげで助かる人もたくさんいて、人が生活する上でとても重要なことだったんですよね。だから、・・悪くない仕事っていうか、世のため人のためになる仕事だったんだなぁって、思ってます。」
会社を辞めたことは後悔していない。辞めたからこそ以前の仕事の良い所を認識することもできた。あの頃は人間関係が辛かったはずなのに、今は、人と人との関わりの中に大事なものがあるのだと思える。まだ何も始まっていないけど、期待がどんどんふくらんでいる。
初めて会ったイズミさんなのに、いろいろしゃべりすぎてる。でも他人とは思えないのだ。
コーヒーのおかわりを勧めて、自分で焼いたラングドシャを試食してもらった。
「サクッとしてる。歯触りがいいね。アーモンドが香ばしくておいしい。」
「イズミさんは、こういうの焼くのお好きですか?」
「うーん。少しはお菓子も作ってたのに、主人の方が上手だから、しなくなったな。」
「ご主人すごいですね。雇いたい。」
「ふふふ。」
4時を過ぎて、イズミさんが席を立った。出かけていた家族が帰ってくる時間らしい。
「じゃあ、また、一緒にお勉強させてね。」
「はい・・よろしくお願いします。」
「お店が始まるまでに、時々は遊びに来てもいいかな。研修がてら、いろいろ教えてね。私がどんな仕事できるかわからないし。」
「一緒に考えてもらえたら嬉しいです。できるだけ研修費だせるようにします。」
マキノは、たくさんお給料を渡せるように、絶対頑張ろう・・と心に誓った。
その前の週まるまる、マキノはバイトのお休みをもらった。その間にいろいろなことを片づけなければいけない。先日書きだしたルーズリーフを広げてみる。
何をするにも・・・パートナーが欲しいな。お互いが信頼し合い助け合える仲間。
まず、困ったときの朝市のおばちゃんだのみ。夕方ルミエールからの帰りに、いつも朝市をしている広場でおばちゃん達がおしゃべりしているのを見つけて、そのおしゃべりの輪に入って、バイトに来てくれるような人がいないかたずねてみた。
マキノの問いかけに対して、おばちゃんたちは口々に好きなことを言ってくる。
「豆のコーヒーを淹れるのって難しそうだね。」
「若い女の子がいいんじゃない?そんな子いたかねぇ。」
「このばあちゃんを雇ってもらおうか。お運び手伝うよ。」
「あんたみたいな腰の曲がったばあちゃんはダメよ。あはは。」
「何言ってんの、お互い様でしょうが。あははは。」
「あ、佐藤さんちの奥さんどう?」
「そうそう、下の女の子が小学校に入ったから、お昼の間に何かしたいんじゃない?」
「子どもが帰ってくるまでの時間しかダメだと思うけど。」
「あの奥さんは、かわいいよねぇ。」
「うんうん。いい子だよね。」
マキノは、おばちゃん達の意見が一致したところを見計らって、その佐藤さんとやらを紹介してくれるように頼んだ。
「ここにもよく来てるよ。マキノちゃんも会ったことあるんじゃない。」
「小学生の子どもさんがいる、かわいい人ですか・・。」
ああ、なんとなく顔が浮かぶ。女の子を二人連れてくる、ちょっとくせ毛で、小柄な人だった気がする。当番では当たったことはないけれど、クッキーと野菜を出していた。きっとその人だ。持っていたメモ帳を一枚破って、自分の携帯の番号を書く。
「電話番号書いておくので、よかったら連絡くださいって伝えてもらえますか?」
おばちゃんたちは快く引き受けてくれた。
おばちゃん達一押しの佐藤さんの奥さんはメモを預けた翌日に連絡がきて、面接をすることになった。これまでの人生で、人様の評価などしたこともない。マキノの連休の初日、土曜日の朝市が終わったあとの午後、少々緊張してそわそわと待っていた。
こんにちわぁと、佐藤さんの奥さんがやってきた。やわらかい声だ。
「いらっしゃいませ、どうぞ。」
佐藤さんの奥さんは、イズミさんと言った。まだ30代半ばぐらいに見える。若いけれど、第一印象は穏やかでふんわりしたような印象だった。
コーヒーを淹れて座敷のテーブルに白紙のルーズリーフを広げて、向かい合って座る。
まずは、自分がどんなお店をしたいかを説明して、今は改装もできていないからイメージは想像してもらうしかないが、一緒に考えてくれる人を求めているという事を訴えた。
仕事の時間の希望をたずねると、子どもの都合でときどきお休みをいただく以外は、平日のお昼の間ずっと来れるとのことだった。直感だけれども、イズミさんの発する言葉の端端から、実はしっかりしていて頼れるのではないかという感じが伝わってくる。もし平日が任せられれば、あとは土・日は学生バイトが雇えそうだからその部分も都合がいい。
仕事についての話をすませてしまうと、次は家族の話題へと移ってゆく。
「佐藤さんの子どもさんはおいくつですか?」
「小学校の4年生と1年生のどちらも女の子。あのう、さっきから思っていたんだけれどね、・・下の名前で呼び合うというのはだめかしら。」
「あっ・・それもそうですね。じゃあ、イズミさん?」
「それでいいと思う、マキノちゃん。」
うふふふとお互い照れ笑いをしてからマキノは何気なくたずねた。
「あの、ご主人さんは、ご職業何をなさってるんですか?イズミさんが野菜やお菓子を朝市に出してるのを見たけど、農家じゃないですよね。」
「ああ、あの野菜は、私が畑を少し作ってて、たくさん出来過ぎたものを出してただけなの。お菓子はね、実は私じゃなくて、主人が作るのよ。」
イズミさんはそう言って恥ずかしそうに笑った。
「へえ・・器用なご主人さんなんですね。おしゃれな方なのかなぁ。」
「無口で、無愛想で、おしゃれとは縁遠いような風体よ。」
「どんな方だろう・・。」
「山が好きで、山にばかり行くの。主人が勤めている会社が大きな山林を所有してて、その管理をするのが仕事。」
「・・や・・山・・山ですか?」
「そう、山の木々の管理。杉や桧とか。だから自分のことキコリって言うのよ。」
「・・キッ・・キキ・・キコリ!!」
「変でしょ? 斧で木を切るわけでもないのにね。」
「おぉのぉおおっ!!!」
マキノが、がたっとイスから立ち上がった。イズミさんが少しひるんだ。
「・・お・・斧がどうかしたの?」
ポムドテールのママさんが言っていた、キーワードは覚えてる!
そのひとつひとつが順番に鮮明に思い出された。
「自分のことキコリって言ってる」
「奥さんがかわいい」
「うちの近所」
「無口で無愛想!」
全部がつながった!それ以外ないっ!!
「あのっあのっあのっ、ご主人って、もしかして、もしかして、」
「はい?」
イズミさんが若干ひいてる。でもかまわないっ!
「もしかして、タツヒコさんてお名前ですかっ?」
「う・・うん。あら、知ってたの?」
「そっ、そっ、その節はっ・・!」
マキノは腰を90度にぺこっと折って叫んだ。
「たいへんおせわになりましたあああっ!!」
面接のはずだったのに、イズミさんがタツヒコさんの奥さんだったことが判明して、マキノばかりが必死で語り続けることになった。ソロツーリングをしていて、パンクして雨が降って困り果てているときに奇跡のように救われたこと。それから会社を辞めた話。ここでカフェをすると決めて頑張ってきたことをずっと聞いてもらった。
「そう。全然知らなかった。主人はそんなこと教えてくれなかったよ。」
「ご主人さんにとっては、とるに足らない事だったんでしょうね。」
タツヒコさん視点でよくよく考えたら、仕事の帰り道に、落し物(私)を拾い、いつものバイク屋さんに寄って、落し物(私)は、自宅の近所のペンションに届けた。・・普段とほぼ変わらない、ただの一日でしかなかったのだ。
「それから2年も経つんですよね・・。」
「でも、すごく勇気があるね。せっかくいい会社に勤めていたのに、それを辞めてまでこんな田舎にきちゃって。」
「うーん。なんかね、あの頃は、あの会社の仕事をずっとしていてもやりがいは見つけられないって思っちゃったんですよ。・・もっと深く関われば自分の居場所があったかもしれないのにって、今なら思えますけど。」
イズミさんはうんうんとうなずいて、話の続きを促してくれる。
「損害保険って、突然起こった事柄を救済するものでしょう。一般の方って、普段はは自分が事故に遭ったり災難に遭うことなんてを想像しにくいものだと思うんですが、何気ない日々でも危険な事って転がってるから、それを気づかせてあげて、安心を売るんですよね。でも、大きな会社の内情って、個人個人に寄り添うよりも、会社の利益や成績や効率を重視してることがよくあって、それって本当に保険の理念として正しいの?という疑問が常にあったんです。上司も厳しくて辛かったし、私がしてたのは事務系の仕事ばかりで、会社の歯車の一つでしかなくて、自分が何をしたかったのかを見失ってました。今思えば保険のおかげで助かる人もたくさんいて、人が生活する上でとても重要なことだったんですよね。だから、・・悪くない仕事っていうか、世のため人のためになる仕事だったんだなぁって、思ってます。」
会社を辞めたことは後悔していない。辞めたからこそ以前の仕事の良い所を認識することもできた。あの頃は人間関係が辛かったはずなのに、今は、人と人との関わりの中に大事なものがあるのだと思える。まだ何も始まっていないけど、期待がどんどんふくらんでいる。
初めて会ったイズミさんなのに、いろいろしゃべりすぎてる。でも他人とは思えないのだ。
コーヒーのおかわりを勧めて、自分で焼いたラングドシャを試食してもらった。
「サクッとしてる。歯触りがいいね。アーモンドが香ばしくておいしい。」
「イズミさんは、こういうの焼くのお好きですか?」
「うーん。少しはお菓子も作ってたのに、主人の方が上手だから、しなくなったな。」
「ご主人すごいですね。雇いたい。」
「ふふふ。」
4時を過ぎて、イズミさんが席を立った。出かけていた家族が帰ってくる時間らしい。
「じゃあ、また、一緒にお勉強させてね。」
「はい・・よろしくお願いします。」
「お店が始まるまでに、時々は遊びに来てもいいかな。研修がてら、いろいろ教えてね。私がどんな仕事できるかわからないし。」
「一緒に考えてもらえたら嬉しいです。できるだけ研修費だせるようにします。」
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