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妖精さんとゴブリンさん②〜野蛮はどちら?〜
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「傷の調子はどう?」
コバロス村に到着した一行は、集落にある小さな宿で休みをとっていた。大都市であるグランノア周辺だというのに、旅人や冒険者は少ないようで、閑散としていた。
コバロス村の小さな宿。窓から差し込む夕日が薄暗い部屋を柔らかく照らしている。マリウスはベッドの上で片腕を押さえながら答えた。
「そこまで深く刺さってなかったから、激しく動かさなければ大丈夫だと思う」
「しばらくして赤くなってきたら化膿してるから、その時は教えて」
マリオンは冷静な声で言いながら、弟の肩越しに手早く包帯を締めた。この宿は小さく、部屋には古びたベッドとテーブルがあるだけだったが、今の彼らには十分だ。周囲を見回しても、他に泊まっている客の姿はない。グランノア近郊という立地にもかかわらず、この村が妙に閑散としているのが気にかかる。
「マリオン、あの鏃(やじり)見た?」
マリウスは声を低くして問いかける。マリオンは、ふーっと息を吐き、答えた。
「なんかの骨で作られてたんでしょ。おかげでそこまで大ごとにならなくてよかったじゃない」
姉は弟の怪我が大事に至らなかったことに安堵しているようだが、マリウスの疑問は別の方向に向いていた。
「いや、傷の話じゃなくて、どうして骨を使ってるんだろうって」
「さぁ? あの様子だと普通の店で買えないから自分たちで作ったんじゃないの?」
「そうじゃなくて、何で作ったんだろうって。あの」
マリウスの言葉に、マリオンは眉をひそめた。弟の煮え切らない言い方が少し苛立たしい。マリウスは小声で続ける。
「もしかしたら、だけど、襲った人間の骨を使っているんじゃないかなって思って」
マリウスの言葉を聞き、マリオンの表情が引き攣る。弟の言葉は現実味を帯びていたからだ。
「もしかしたら、そうかもしれないね。実際はわかんないけど」
「だったら大ごとになる!」
「もしそうなら大ごとになってるでしょ。何? どうしたいの?」
「もし本当に襲った人の骨を使っているなら、絶対にやめさせないと。被害が大きくなる前に!」
「ゴブリンはそんなことしないよ?」
マリウスが声を荒げたその瞬間。先ほどまで天井に吊されたランタンにしがみついてたシルフが、ぷんぷんと怒った様子で抗議する。
「シルフはどうしてそう思うんだい?」
「だってこれまで会ってきたゴブリンさん達はそんなことしてないよ?」
「でも、さっき会ったゴブリンたちは違うかもしれないんだ。今まで会ってきたゴブリンたちとは違う、怖いことをしているかもしれないんだ」
「しないよ! 絶対にしない!」
普段能天気なシルフがここまで言い返してくるのは珍しい。マリウスはシルフを諭そうとしたが、言葉に詰まる。確かにシルフの言う通り、過去に出会ったゴブリンたちは確かに敵意を見せるどころか協力的だった。彼女の言葉には説得力があったのだ。
「まぁ、シルフの言う通りならいいけどね」
マリオンが肩をすくめながら、場を収めようとする。だが、このままでは埒が明かないと判断し、村で情報を集めることを提案した。
--------------------
コバロス村の唯一の酒場は、店構えも内部も質素なものだった。カウンターの上には少量の埃が積もり、客の数もまばらだ。マリオンたちは中央の席を選び、常連らしき男たちに声をかけた。
「あの、このへんにゴブリンについて話を聞きたいのですが」
男たちは一瞬黙り込んだが、すぐに矢継ぎ早に話し始めた。
「あのゴブリンか? 最近っていっても、1年くらい前からだな。主にグランノアに立ち寄る冒険者を中心に狙ってるって噂だな」
「ゴブリンたちの蛮行には村長も困り果てているようでな。グランノアにも何度か討伐依頼が出されてるが、後回しにされてるらしい」
「集落に被害が出てきたらやばいよな。グランノアの連中は何してんだよ!」
「向こうも内政がゴタゴタしてるからな。吸血鬼の件もあって、対応する暇がないんだろ」
彼らの話は、マリウスの予感を確信へと変えていった。やはりあのゴブリンは危険だ。このまま放置していたら、取り返しのつかないことになる。
「誰かが退治しにいこうとかって話はないんですか?」
マリオンが尋ねる。他の村や都市であれば、自警団が魔物に対して何かしらの対策を立てるはずだ。しかし、男たちは首を横にふる。
「さっきも言ったけど、ここまで手を出してこないんだよ」
「どうして?」
「さぁ? 冒険者達を狩る方が楽なのか、故郷だから手荒なことをしないのか」
問題点としては上がっているが、今のところ集落全体には被害が出ていない。だからか具体的な対応にまでは踏み出せていないようだ。しかし、いつまでも被害が出ないと約束されているわけではない。本来であれば、集落をあげて対応策を考えるべきだろう。しかし、この集落からそのような様子は見れない。マリオンが怪訝な表情を浮かべた瞬間、背後から声が響いた。
「ちょっと失礼。お話よろしいでしょうか?」
マリオンが振り返ると、背筋をぴんと伸ばした老年の男が立っていた。絹のように滑らかな黒いスーツに、銀のボタンが光を反射している。
「旅人や冒険者に被害が出ている状況です。皆さんにぜひ解決をお願いしたい」
男の名はメンティソロ。この村の村長の秘書だという。彼は柔らかな物腰でマリオンたちを席に案内し、集落とゴブリンの関係性について話し始める。
ゴブリン達により集落を訪れる旅人や冒険者に被害が出ていること、今後集落にも襲撃しにくる可能性があるということ、そしてこの問題を解決してくれる人物を探しているということを。
「なんかあやしいー」
胸ポケットからちょこんと顔を出し、訝しむように言葉を発した。
「おや、これはこれは。愛くるしい妖精さんもご一緒でしたか」
メンティソロはシルフの言葉を受け流し、話を続ける。
「ではお話を戻します。単刀直入にお願いしましょう。ぜひあのゴブリン達を退治していただきたい。よろしければ、これから村長の宅にご案内します」
やはりそうきたか…。マリオンは男の言葉を聞き、心の中でため息を漏らす。おそらくマリウスは乗り気だろう。メンティソロの話を聞き、マリウスのゴブリンへの疑惑は確信に変わっているのだ。しかし、マリオンにはいくつか腑に落ちない点がある。ゴブリンの脅威に怯えているのなら、この集落は何故自衛をしないのだろうか。
「なぜ村の自衛策は取られていないんです?」
その質問に、メンティソロは一瞬だけ言葉を詰まらせる。そして、笑みを浮かべてこう答えた。
「ゴブリンが攻撃してくるのは、村の外の話ですから」
マリオンは、その言葉の裏に、何か隠された意図があるように感じられた――。
--------------------
3人の姿を見送った男たちは、ぽつりぽつりと呟く。
「あの連中も、戻ってこねぇかもな」
「何人目だよ、こうやって村長に呼ばれるの」
「まぁ、上手くいけばいいけどな」
――――――――――――埃っぽい空気の中、その言葉だけが静かに響いた。
--------------------
メンティソロに連れられ、村長の部屋に上がり込む。メンティソロが2人と1匹にお茶を出していると、穏やかな物腰の女性が現れた。
「暗い時間にごめんなさいね。村長のバーバラです。」
上品な口調でバーバラは席につくと、部屋の鍵をかけ、静かな声で話し始めた。
「秘書の方から話は聞いていると思いますが、今、私たちは未曾有の危機に直面しています。かつて同志だったゴブリンたちが集落近くに巣を作り、グランノアに訪れる旅人を襲っているのです。そして、その野蛮な連中は、あろうことか襲った旅人を…ああ、言葉にするのも恐ろしい!」
「ねーね、それ、うそじゃないの?」
これまで胸ポケットに隠れていたシルフが、ぴょんと顔を出して問いかけた。村長は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑みを浮かべて応じた。
「あら、可愛い妖精さん。もちろん、嘘ではありませんよ。力無い私たちは、常に野蛮なゴブリンの脅威に怯えているのです。そのため、このように正義感あふれる善良な旅人様に助けを求めているのです。」
「ゴブリンはそんなことしない! うそだよ!」
バーバラの言葉に、シルフが鋭く反論し、緊張が走った。
「うちの妖精が失礼しました。教えていただきたいのですが、このようなお話をされるのは、これが初めてではないのですよね?」
興奮するシルフを抑えつつ、マリオンが尋ねる。
「…残念ながら、一度や二度ではありません。大変心苦しいのですが、実際に帰ってこなかった冒険者の方々もいらっしゃいます。」
バーバラの言葉を聞いたマリオンは、ずっと抱えていた疑問を投げかけた。
「自分たちでも何かしら対応策を考えるのが筋では? 見たところ、何も対策をしているようには見えませんが。」
「仕方ないのです。元々この集落は、グランノアに向かう旅人の宿泊地として発展してきました。対応策など考えたところで、素人芸に過ぎません。それに私たちは無力です! 対して奴らは野蛮な人喰い。下手に反抗しようものなら、取り返しのつかないことになるかもしれません。」
バーバラの言い分は理解できる。しかし、マリオンは納得できなかった。
「だから、我々に頼ると?」
「本当に申し訳ないと感じています。ですが、あなた方に頼るしかないのです。」
再び静寂が部屋を包み込む。その静寂を破ったのは、マリウスだった。
「やろう。マリオン、あのゴブリン達には俺達も襲われたんだ。どんな理由にせよ、このままにはできない。」
「まぁ! 勇敢な旅人に巡り会えて幸せです! 感謝します! では、さっそく準備を…」
興奮気味に話し始めるバーバラを、マリオンが諌める。
「ちょっと待ってください。ゴブリンは夜でも目がよく効きます。明日にしてください。」
「もちろん構いません。おっしゃる通り、ゴブリンは夜行性。明日の朝、出発してください。もちろん、今晩の宿はこちらで用意しますわ。ソロ、メンティソロ! この方々の宿を用意しなさい!」
「大丈夫です。宿はこちらで用意していますから」
バーバラの提案を断り、マリオン達は屋敷を後にする。野蛮なゴブリンの討伐。決行の日は明日だ。
コバロス村に到着した一行は、集落にある小さな宿で休みをとっていた。大都市であるグランノア周辺だというのに、旅人や冒険者は少ないようで、閑散としていた。
コバロス村の小さな宿。窓から差し込む夕日が薄暗い部屋を柔らかく照らしている。マリウスはベッドの上で片腕を押さえながら答えた。
「そこまで深く刺さってなかったから、激しく動かさなければ大丈夫だと思う」
「しばらくして赤くなってきたら化膿してるから、その時は教えて」
マリオンは冷静な声で言いながら、弟の肩越しに手早く包帯を締めた。この宿は小さく、部屋には古びたベッドとテーブルがあるだけだったが、今の彼らには十分だ。周囲を見回しても、他に泊まっている客の姿はない。グランノア近郊という立地にもかかわらず、この村が妙に閑散としているのが気にかかる。
「マリオン、あの鏃(やじり)見た?」
マリウスは声を低くして問いかける。マリオンは、ふーっと息を吐き、答えた。
「なんかの骨で作られてたんでしょ。おかげでそこまで大ごとにならなくてよかったじゃない」
姉は弟の怪我が大事に至らなかったことに安堵しているようだが、マリウスの疑問は別の方向に向いていた。
「いや、傷の話じゃなくて、どうして骨を使ってるんだろうって」
「さぁ? あの様子だと普通の店で買えないから自分たちで作ったんじゃないの?」
「そうじゃなくて、何で作ったんだろうって。あの」
マリウスの言葉に、マリオンは眉をひそめた。弟の煮え切らない言い方が少し苛立たしい。マリウスは小声で続ける。
「もしかしたら、だけど、襲った人間の骨を使っているんじゃないかなって思って」
マリウスの言葉を聞き、マリオンの表情が引き攣る。弟の言葉は現実味を帯びていたからだ。
「もしかしたら、そうかもしれないね。実際はわかんないけど」
「だったら大ごとになる!」
「もしそうなら大ごとになってるでしょ。何? どうしたいの?」
「もし本当に襲った人の骨を使っているなら、絶対にやめさせないと。被害が大きくなる前に!」
「ゴブリンはそんなことしないよ?」
マリウスが声を荒げたその瞬間。先ほどまで天井に吊されたランタンにしがみついてたシルフが、ぷんぷんと怒った様子で抗議する。
「シルフはどうしてそう思うんだい?」
「だってこれまで会ってきたゴブリンさん達はそんなことしてないよ?」
「でも、さっき会ったゴブリンたちは違うかもしれないんだ。今まで会ってきたゴブリンたちとは違う、怖いことをしているかもしれないんだ」
「しないよ! 絶対にしない!」
普段能天気なシルフがここまで言い返してくるのは珍しい。マリウスはシルフを諭そうとしたが、言葉に詰まる。確かにシルフの言う通り、過去に出会ったゴブリンたちは確かに敵意を見せるどころか協力的だった。彼女の言葉には説得力があったのだ。
「まぁ、シルフの言う通りならいいけどね」
マリオンが肩をすくめながら、場を収めようとする。だが、このままでは埒が明かないと判断し、村で情報を集めることを提案した。
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コバロス村の唯一の酒場は、店構えも内部も質素なものだった。カウンターの上には少量の埃が積もり、客の数もまばらだ。マリオンたちは中央の席を選び、常連らしき男たちに声をかけた。
「あの、このへんにゴブリンについて話を聞きたいのですが」
男たちは一瞬黙り込んだが、すぐに矢継ぎ早に話し始めた。
「あのゴブリンか? 最近っていっても、1年くらい前からだな。主にグランノアに立ち寄る冒険者を中心に狙ってるって噂だな」
「ゴブリンたちの蛮行には村長も困り果てているようでな。グランノアにも何度か討伐依頼が出されてるが、後回しにされてるらしい」
「集落に被害が出てきたらやばいよな。グランノアの連中は何してんだよ!」
「向こうも内政がゴタゴタしてるからな。吸血鬼の件もあって、対応する暇がないんだろ」
彼らの話は、マリウスの予感を確信へと変えていった。やはりあのゴブリンは危険だ。このまま放置していたら、取り返しのつかないことになる。
「誰かが退治しにいこうとかって話はないんですか?」
マリオンが尋ねる。他の村や都市であれば、自警団が魔物に対して何かしらの対策を立てるはずだ。しかし、男たちは首を横にふる。
「さっきも言ったけど、ここまで手を出してこないんだよ」
「どうして?」
「さぁ? 冒険者達を狩る方が楽なのか、故郷だから手荒なことをしないのか」
問題点としては上がっているが、今のところ集落全体には被害が出ていない。だからか具体的な対応にまでは踏み出せていないようだ。しかし、いつまでも被害が出ないと約束されているわけではない。本来であれば、集落をあげて対応策を考えるべきだろう。しかし、この集落からそのような様子は見れない。マリオンが怪訝な表情を浮かべた瞬間、背後から声が響いた。
「ちょっと失礼。お話よろしいでしょうか?」
マリオンが振り返ると、背筋をぴんと伸ばした老年の男が立っていた。絹のように滑らかな黒いスーツに、銀のボタンが光を反射している。
「旅人や冒険者に被害が出ている状況です。皆さんにぜひ解決をお願いしたい」
男の名はメンティソロ。この村の村長の秘書だという。彼は柔らかな物腰でマリオンたちを席に案内し、集落とゴブリンの関係性について話し始める。
ゴブリン達により集落を訪れる旅人や冒険者に被害が出ていること、今後集落にも襲撃しにくる可能性があるということ、そしてこの問題を解決してくれる人物を探しているということを。
「なんかあやしいー」
胸ポケットからちょこんと顔を出し、訝しむように言葉を発した。
「おや、これはこれは。愛くるしい妖精さんもご一緒でしたか」
メンティソロはシルフの言葉を受け流し、話を続ける。
「ではお話を戻します。単刀直入にお願いしましょう。ぜひあのゴブリン達を退治していただきたい。よろしければ、これから村長の宅にご案内します」
やはりそうきたか…。マリオンは男の言葉を聞き、心の中でため息を漏らす。おそらくマリウスは乗り気だろう。メンティソロの話を聞き、マリウスのゴブリンへの疑惑は確信に変わっているのだ。しかし、マリオンにはいくつか腑に落ちない点がある。ゴブリンの脅威に怯えているのなら、この集落は何故自衛をしないのだろうか。
「なぜ村の自衛策は取られていないんです?」
その質問に、メンティソロは一瞬だけ言葉を詰まらせる。そして、笑みを浮かべてこう答えた。
「ゴブリンが攻撃してくるのは、村の外の話ですから」
マリオンは、その言葉の裏に、何か隠された意図があるように感じられた――。
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3人の姿を見送った男たちは、ぽつりぽつりと呟く。
「あの連中も、戻ってこねぇかもな」
「何人目だよ、こうやって村長に呼ばれるの」
「まぁ、上手くいけばいいけどな」
――――――――――――埃っぽい空気の中、その言葉だけが静かに響いた。
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メンティソロに連れられ、村長の部屋に上がり込む。メンティソロが2人と1匹にお茶を出していると、穏やかな物腰の女性が現れた。
「暗い時間にごめんなさいね。村長のバーバラです。」
上品な口調でバーバラは席につくと、部屋の鍵をかけ、静かな声で話し始めた。
「秘書の方から話は聞いていると思いますが、今、私たちは未曾有の危機に直面しています。かつて同志だったゴブリンたちが集落近くに巣を作り、グランノアに訪れる旅人を襲っているのです。そして、その野蛮な連中は、あろうことか襲った旅人を…ああ、言葉にするのも恐ろしい!」
「ねーね、それ、うそじゃないの?」
これまで胸ポケットに隠れていたシルフが、ぴょんと顔を出して問いかけた。村長は一瞬驚いた顔をしたが、すぐに微笑みを浮かべて応じた。
「あら、可愛い妖精さん。もちろん、嘘ではありませんよ。力無い私たちは、常に野蛮なゴブリンの脅威に怯えているのです。そのため、このように正義感あふれる善良な旅人様に助けを求めているのです。」
「ゴブリンはそんなことしない! うそだよ!」
バーバラの言葉に、シルフが鋭く反論し、緊張が走った。
「うちの妖精が失礼しました。教えていただきたいのですが、このようなお話をされるのは、これが初めてではないのですよね?」
興奮するシルフを抑えつつ、マリオンが尋ねる。
「…残念ながら、一度や二度ではありません。大変心苦しいのですが、実際に帰ってこなかった冒険者の方々もいらっしゃいます。」
バーバラの言葉を聞いたマリオンは、ずっと抱えていた疑問を投げかけた。
「自分たちでも何かしら対応策を考えるのが筋では? 見たところ、何も対策をしているようには見えませんが。」
「仕方ないのです。元々この集落は、グランノアに向かう旅人の宿泊地として発展してきました。対応策など考えたところで、素人芸に過ぎません。それに私たちは無力です! 対して奴らは野蛮な人喰い。下手に反抗しようものなら、取り返しのつかないことになるかもしれません。」
バーバラの言い分は理解できる。しかし、マリオンは納得できなかった。
「だから、我々に頼ると?」
「本当に申し訳ないと感じています。ですが、あなた方に頼るしかないのです。」
再び静寂が部屋を包み込む。その静寂を破ったのは、マリウスだった。
「やろう。マリオン、あのゴブリン達には俺達も襲われたんだ。どんな理由にせよ、このままにはできない。」
「まぁ! 勇敢な旅人に巡り会えて幸せです! 感謝します! では、さっそく準備を…」
興奮気味に話し始めるバーバラを、マリオンが諌める。
「ちょっと待ってください。ゴブリンは夜でも目がよく効きます。明日にしてください。」
「もちろん構いません。おっしゃる通り、ゴブリンは夜行性。明日の朝、出発してください。もちろん、今晩の宿はこちらで用意しますわ。ソロ、メンティソロ! この方々の宿を用意しなさい!」
「大丈夫です。宿はこちらで用意していますから」
バーバラの提案を断り、マリオン達は屋敷を後にする。野蛮なゴブリンの討伐。決行の日は明日だ。
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