8 / 8
終:またいつか
しおりを挟むSide ルイス
■□▪▫■□▫▪■□▪▫
「ルイス君…」
俺の名前を呼びながら温かい手で体を撫でられる。
すごく心地よい…
だんだんといろんな感覚が無くなっていく中、ご主人の体温だけがいつまでも感じられる。
「…ルイス君、まだ逝かないで」
「ルイス、僕にミレイユとられちゃってもいいのかい?」
「るいすっ起きて?シルヴィと遊ぼ?」
みんなが俺を引き止める。
心配しなくてもどこにも行かねえよバカ。
けど、今は少し眠い…
起きたらいっぱい遊んでやるからなシルヴィア。
「っ、やぁ…ルイス、くん!」
ぼんやりとした視界に、何故か悲しそうな表情のご主人と、そっとご主人に寄り添うセドリックが見えた。
仲が良いな相変わらず。
あの焦れったい二人が懐かしい。
ああ、視界が…微睡む。
「ルイス、ルイスだめだ!!目を開けてくれ」
何言ってんだよ、俺が眠ってる間はご主人を独り占めできるって喜んでたじゃじゃねえか。
変なセドリックだ。
大好きなご主人の胸に抱かれ、窓から入る陽だまりを含んだ空気が気持ちいい。
激しい眠気に抵抗できない。
「ルイス君、お願いよ…」
ご主人のこんなに悲しげな声は聞いたことがなかった。
セドリックのそっけない態度に悩んでいた時だって、まだましだった。
「…お願いだから、」
ご主人の頼み事、俺が聞かなかったことあるか?
いつだってもふもふさせたし、膝の上に座る時だってお利口だっただろ?俺。
「っ…死なないで!!」
「ご、しゅじん…?」
ぽたぽたと頭を濡らす熱い雫に、唐突に理解した。
____ああ、俺、もう死ぬのか。
病気でも怪我でもなく、ただの寿命。
ご主人得意の治癒魔法も老衰にはなんの効果もない。
そっかぁ…これが死か。
猫は自分の死を誰にも見せないっていつか聞いたことがあるが、俺は最期にご主人やセドリック、シルヴィアに囲まれて死ねるようだ。
悲しい顔は、させたくなかったが
「ご主人…俺、すげえ幸せ」
温かい腕の中で、大切な人達に囲まれて最期を迎えられて、俺はすごく恵まれてる。
「っ、ルイス君」
「そっか…ルイス、僕達もルイスと一緒に過ごせてとても幸せだったよ。ありがとうルイス」
ああ、俺がいなくなっても…しっかりご主人とシルヴィアを守ってくれよ。
お前になら、二人を任せられる。
「ほら、シルヴィアもミレイユもルイスにお別れの挨拶しなきゃ…」
「ルイス、ばいばいなの?シルヴィはルイスと離れたくないよ…?」
「シルヴィア…」
俺も、できれば離れたくないけど…それでも、さよならしなきゃいけないんだ。
「ルイス君…」
なんだよ、ご主人。
「寂しいけど、やっぱりもう逝っちゃうのね。ルイス君、私達本当にあなたが大好きよ。今までも、これからも…ずっとずっと」
…ああ、俺もだよ。
「だから、いつかまた私のところに帰ってきてくるって信じてるわ」
薄らとした視界に見えたご主人の顔は、笑っている気がする。
また、ご主人のところに…
「わかったよ、ご主人」
そう口にしたつもりだったが、今の俺はもうまともに話すこともできなくなってしまったようだ。
音とも呼べない掠れた声が宙に消える。
「おやすみ、ルイス」
おやすみ、ご主人。
次に会う時は、俺も、もっともっとずっとみんなといたいなあ…
■□▪▫
「姉ちゃんっ、なんだよこんなとこに連れ出して!!!」
「いいからっ!みて、これ!!」
俺は七歳上の姉であるシルヴィアに強引に手を引かれて、屋敷の奥にある一つの部屋に連れてこられた。
「うわ、何だこれ、キモい模様!」
「もう、ルイは口が悪いわよっ…これは魔法陣って言うんだって、学校で教えてもらったの!」
魔法陣…?
聞きなれない言葉だ。
だか、このよくわからないごちゃごちゃとした円に、何故か胸が高なった。
どこか、懐かしいような…見たことあるような?
小さい頃屋敷を探検でもした時に偶然見たことがあったのだろうか。
思い出せなかった。
「魔法陣はいろんな魔法を発動する手助けをしてくれるんだって。これを見つけた時からすごく気になっていたの!でも、自分でやるのは少し怖いじゃない…?」
にこにこと話す姉に嫌な予感がした。
「だから、ルイがやってみて!」
ドンッと背中を押され、俺は勢いよくその魔法陣に倒れ込んだ。
「うん、そうそう。両手を合わせたら発動できるって先生に聞いたの!いい感じよルイ!」
俺に口が悪いと注意する姉は、非常に手癖が悪い。
すぐに手が出る。おまけに足も。
パァァとカラフルに光り出す魔法陣に冷や汗が流れる。
このままどうなってしまうのか。
「っ、」
ぽんっ
そんな音がして、それから
「う、うわぁぁぁああ!!!」
視界に入った小さな手、というか前足?は明らかに人間のものとは違っている。
「ルイが、ルイが猫になっちゃった!!」
「猫ぉぉぉおお!?!!?」
姉の叫び声につられて俺まで叫び出してしまう。
「それに、この子は…」
「姉ちゃん!!どうすんだよ!!つーかとりあえず母さんのとこ行かなきゃ!魔法のことなら母さん詳しいからなんとかしてくれるかも」
「そ、そうね」
姉ちゃんの言葉を遮るようにそう言うと、姉ちゃんは急いで俺を抱き抱え母さんと父さんが書類仕事をやっている部屋に向かった。
「母様大変!!ルイが猫になっちゃった!」
「ええ!?」
勢いよく扉を開いて駆け込んできた姉ちゃんに、父さんと母さんが目を見開く。
二人は姉ちゃんの腕に抱かれる俺に視線を送る。
「っ、嘘…」
「本当に、帰ってきてくれていたのか」
母さんがボロボロと涙を零し始めた時は、さすがに焦った。
最初は息子が猫になったから心配しているのかと思ったが、どうやら違うようだ。
「ルイが、ルイス君だったの…」
「僕達の愛しい息子として、今度はもっとずっと長く一緒にいられるんだね」
母さんを支える父さんまで涙目だ。
「母さん、俺、どうしよう!!」
「ふふっ、大丈夫よルイ。戻りたいって心の中で念じてみなさい?」
母さんに言われて、一生懸命に心の中で戻りたいと呟く。
ぽんっ
「戻ったあ!!!」
「あら残念。猫の姿のルイも可愛かったのに」
「お母様、ルイスってルイが生まれる前に飼っていた猫のことでしょう?」
「ええ、そうよ。シルヴィアはルイス君にすごく懐いていたわね」
俺が生まれる前に飼っていた猫…?
ああ、確か写真だけ見せてもらったことがある気がする。
確か、マンチカンという種類の可愛い猫だった。
どうやら俺はその猫とそっくりらしい。
「ルイス君とね、約束したのよ」
「約束…?」
母さんは嬉しそうに笑って言葉を続ける。
「きっと私たちのもとへ帰ってきてって。ふふっ、ルイはルイス君の生まれ変わりなのね」
「俺が、ルイスの生まれ変わり?」
たまたま似ている猫なだけじゃないの?
「ルイス君の独特な毛の模様まで一緒なんだもの、びっくりしちゃったわ」
「俺、ルイじゃなくてルイスなの?」
なんとなく、俺の人格を否定されたようで不安になって尋ねてみた。
「それは違うわ。ルイの中に、ルイスがいるのよ…どちらも私の愛しい子よ。ルイは今まで通り、何も変わらないわ」
「そうだよルイ。きっとルイスがルイを選んで来てくれたんだ」
「えー、私は?」
「シルヴィアは、私とセドリック様の愛しい娘で…ルイスの妹でルイの大切なお姉ちゃんよ」
「そっか、嬉しい」
ルイとルイス。
意図的に似せたような名前なのに、母様は俺とルイスは別の存在だと言う。
兄弟の名前が似ているのは珍しくもないし、まあいいか。
俺も、ルイスに会ってみたかったかも。
(俺はずっと、ここにいんじゃねえか)
ふと頭の中で、
俺と似た、乱暴な言葉遣いの声が聞こえた気がした。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
ため息ひとつ――王宮に散る花びらのように
柴田はつみ
恋愛
「離縁を、お願いしたいのです」
笑顔で、震えずに、エレナはそう言った。
夫は言葉を失った。泣いてくれれば、怒ってくれれば、まだ受け止め方があった。しかしあの静けさは、エレナがもう十分に泣き終わった後の顔だと、ヴィクトルにはわかった。
幼なじみと結ばれた三年間。すれ違いは静かに始まり、深紅のドレスの令嬢によって加速した。ため息を飲み込み、完璧な微笑みを保ち続けた公爵夫人が、最後に選んだのは――。
王宮に散る花びらのような、夫婦の崩壊と再生の物語。
私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです
こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。
まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。
幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。
「子供が欲しいの」
「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」
それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。
あなたを愛するつもりはない、と言われたので自由にしたら旦那様が嬉しそうです
ワイちゃん
恋愛
「あなたを愛するつもりはない」
伯爵令嬢のセリアは、結婚適齢期。家族から、縁談を次から次へと用意されるが、家族のメガネに合わず家族が破談にするような日々を送っている。そんな中で、ずっと続けているピアノ教室で、かつて慕ってくれていたノウェに出会う。ノウェはセリアの変化を感じ取ると、何か考えたようなそぶりをして去っていき、次の日には親から公爵位のノウェから縁談が入ったと言われる。縁談はとんとん拍子で決まるがノウェには「あなたを愛するつもりはない」と言われる。自分が認められる手段であった結婚がうまくいかない中でセリアは自由に過ごすようになっていく。ノウェはそれを喜んでいるようで……?
愛する事はないと言ってくれ
ひよこ1号
恋愛
とある事情で、侯爵の妻になってしまった伯爵令嬢の私は、白い結婚を目指そうと心に決めた。でも、身分差があるから、相手から言い出してくれないと困るのよね。勝率は五分。だって、彼には「真実の愛」のお相手、子爵令嬢のオリビア様がいるのだから。だからとっとと言えよな!
※誤字脱字ミスが撲滅できません(ご報告感謝です)
※代表作「悪役令嬢?何それ美味しいの?」は秋頃刊行予定です。読んで頂けると嬉しいです。
【完結】 メイドをお手つきにした夫に、「お前妻として、クビな」で実の子供と追い出され、婚約破棄です。
BBやっこ
恋愛
侯爵家で、当時の当主様から見出され婚約。結婚したメイヤー・クルール。子爵令嬢次女にしては、玉の輿だろう。まあ、肝心のお相手とは心が通ったことはなかったけど。
父親に決められた婚約者が気に入らない。その奔放な性格と評された男は、私と子供を追い出した!
メイドに手を出す当主なんて、要らないですよ!
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
破滅は皆さんご一緒に?
しゃーりん
恋愛
帰宅途中、何者かに連れ去られたサラシュ。
そのことを知った婚約者ボーデンは夜会の最中に婚約破棄を言い渡す。
ボーデンのことは嫌いだが、婚約者として我慢をしてきた。
しかし、あまりの言い草に我慢することがアホらしくなった。
この場でボーデンの所業を暴露して周りも一緒に破滅してもらいましょう。
自分も破滅覚悟で静かにキレた令嬢のお話です。
平手打ちされたので、婚約破棄宣言に拳でお答えしました
Megumi
恋愛
婚約破棄を告げられ、婚約者に平手打ちされた——その瞬間。
伯爵令嬢イヴの拳が炸裂した。
理不尽に耐える淑女の時代は、もう終わり。
これは“我慢しない令嬢”が、これまでの常識を覆す話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
シルちゃまの
ルイスのおよめさーん発言に
ほのぼの、、❀.(*´ ꒳ `*)❀.
うちの子守り猫様も
アテレコしたらこうなんだろーなー、
っておもいます(*^^*)
孫にままごとの相手させられてる時(⑉• •⑉)
『たすけろ!』ってじとみされてます(笑)
でも、泣くと走って行くのよね!
ルイスくーん、、、(/Д`;
となり、
ルイ変身で、
またまた、号(┳◇┳)泣
ルイスいた〜!
よい、話をありがとうございました!(´▽`)
喋れるネコはだめだ…萎える…
向き不向き別れるかもしれませんね💦
フィクションなのでゆる〜く見ていただければ幸いです☺️