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沙汰
しおりを挟むその日、王宮の謁見の間には、三人の男が呼び出されていた。
宮廷騎士団長に、侯爵、最近勢力を拡大している豪商など、様々な立場の人間が、目の前の玉座に座る国王を不安げに見つめる。
「今日呼ばれたことに心当たりはあるか?」
国王の問いに、男達は各々口を開いた。
「此度は愚息が多大なる無礼を働き、誠に申し訳ございません。償っても償いきれないことは理解しておりますが、我ら一族どのような罰も謹んでお受け致します」
そう言ったのはジェラールの父、宮廷騎士団団長ジャック・モーガン公爵だ。
長らく王家に使えてきた彼の態度には国王も好ましく思った。
「私めもモーガン殿と同じ気持ちでございます。嫡男ではないからと言って愚息を少々甘やかしすぎたようです。息子共々しっかり罰を受け反省する所存です」
次に口を開いたのはトーマスの父、ドナート侯爵だ。
そして最後に、
「大変申し訳ございません国王陛下!!所謂成り上がりの家系故愚息は世間知らずなところがありまして…私がしっかり教育しなければならなかったのですが…跡取りの教育にばかりかまけてしまいました。私の落ち度です。御二方同様しっかり罰を受けたく存じます」
リッツの父親である豪商のコナー・ベルムスだ。
国王は三人の真摯な態度に好感を持ち、満足気に微笑むのだった。
「そなた達の息子は、異世界から迷い込んできた少女の妄言を信じ込み、我が娘ミリアを傷つけるだけでなく、王家の権威を失墜させるよう誘導するという大罪を犯した。これは国家転覆罪に相当する」
国王の言葉に彼らはごくりと息を飲む。
「沙汰を言い渡そう」
ゆっくりと視線を動かし、順番に三人を見つめながら国王は言葉を続ける。
「騎士団長子息ジェラール・モーガン、そして侯爵子息トーマス・グラハムについては、貴族としての身分を剥奪とする。今後は平民として新しい生を送ることを命じる」
貴族社会で生きてきた彼らにとって、その罰は決して甘いものではなかった。
生活能力に欠如した貴族の息子達が簡単に平民の暮らしに慣れることがてぎるとは到底思えない。
「そしてリッツ・ベルムスは、取り上げる身分もないが…彼については、ベルムス家追放の後、貧民街での奉仕活動に尽力してもらうこととする」
国王が沙汰を下し終わると、彼らは揃って承知する旨を告げた。
「そしてお前達三人は、罰金だ。昨年度領地から得た収入や商売の売上の半分を、このグランディア王国に納めてもらう。なに、民や一族の暮らしが危うくなる程の額ではないだろう。逆らうことは許さぬ」
その言葉に三人は大きく目を見開く。
それは彼らにとって甘すぎる処罰だった。
三人とも収入の半分を失っても、実質暮らしぶりが悪くなることも、領民が困窮することもない程には潤っている。
「僭越ながら陛下…それではあまりにも…」
もごもごと口を動かす騎士団長に陛下は言葉を返す。
「お主らの息子達が異世界という自分達とはかけ離れた暮らしぶりに憧れ、王家に対する反感を覚えてしまったのは、この国を治める私の統治にも原因はあるのだろう。思春期の少年達にはそれぞれ抑圧されたものもあったはずだ。お主らの育て方が悪かったと言えばそれまでの話。子を持つ親の気持ちは私にもよくわかる。…お前達は離れたところから子を見守り続けるのだ。彼らだって国の未来を担う人材の一人であることは変わらないのだからな」
国王は凛とした態度でそんなことを口にする。
寛大な措置と国王として慢心するこなく自分を省みる彼に、三人は改めて王の資質を感じるのだった。
「承知致しました。陛下の御意思に添える様、陰ながら愚息を見守っていこうと思います。そして我が一族総出で生涯この国に尽くし続けることを誓います」
騎士団長の言葉に他の二人も深く頷く。
「そなたらが支払う罰金は貧民街を始めとする困窮地域の環境改善に役立てるつもりだ」
国王は満足そうにそう言った。
「沙汰は以上だ。下がって良い」
その言葉に、三人は王宮を後にするのだった。
「…さて、次は私の番だな」
三人が去った後、国王は小さくそんな言葉を洩らした。
■□▪▫■□▫▪■□▪▫■□▫
話のストックが切れてしまったので、本日から更新は一日一話にしようと思います。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
もうしばらくお付き合いいただけると幸いです。
タグについて、私の認識が甘く、御不快な思いをさせてしまったようで、申し訳ありません。
ネタバレにならない程度に修正いたしました。
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