上 下
64 / 150
仮面を被った私達

第10話

しおりを挟む
「焦り過ぎて嚙んでますよ(笑)」

「すみません、つい、思った事を言ってしまったのに、それを言うって言うから」

「冗談です。ありがとうございます、胸に刻んでおきます」

正直、この時の私自身はもう彼の事を好きになっていると確信していた。理由として彼の一言一言に対して敏感になりすぎてたり、つい苛めたくなったり…何よりも傍にいて癒してあげたい。そう思う様になったからだ。

だからと言ってここで”私も好きです”なんて言ったらもう…周りを裏切る事になるし、人生を棒に振る可能性だってあるから口が裂けたって言えない。これは、何れ私が”アイドル卒業”という未来が来ない限りは不可能な事。勿論、今やっとrainbow自体が軌道に乗り始めているのに、このタイミングでアイドル卒業となると、同時に一人でも欠けてはいけないrainbowの終了を意味する。これだけは避けたい所…

「…上原さん?」

「あ、あはい!」

新高さんの声に反応する私。この一瞬でつい考え事をしてしまった。

「大丈夫?急に深刻な感じ出しちゃって?」

「大丈夫ですすみません」


今は仕事!私の恋愛事情なんてどうだっていい!


私は心でそう言い聞かせながら平謝りする。

「少し疲れてきましたかね?これが終わったら休憩でここの料理を食べれますから、あと少しだけ頑張りましょう」

新高さんは心配してそう言う。

「すみませんね、僕が余計なことを…」

今度は西君が謝り始めた。私は誤解を解く為に、

「いえいえ違うんです!寧ろ毎回伝えてくれるから私、凄く幸せだなって感じてるくらいなんで」

「そ、それなら良いんですけど…」

私の必死の訴えもあまり届いていない様子。そう感じた私は、このまま微妙な雰囲気になりそうだったので、


こうなったら…
しおりを挟む

処理中です...