本気の宇宙戦記を書きたいが巨乳も好きなのだ 〜The saga of ΛΛ〜 巨乳戦記

砂嶋真三

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[起]転承乱結Λ

17話 反体制派。

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 単純に興味があったのだ。
 
 ――確かボクって、本当はバスカヴィ宇宙港で反体制派に殺されたんだよね。
 ――あんまり詳しくは書いてなかったけど……。
 
 卑怯なモブ領主が、反体制派に殺されました――というだけである。
 
「どんな人達なのかなぁと思って」
 
 勿論、現在集まっている人々の中に犯人がいるとは限らない。
 
「どうしてもと仰るので、向かってますけど――」
 
 隣に座るロベニカは不満顔だった。
 治安部隊の出動を具申しに駆け付けたのだが、またも意外な返答に腰を抜かしそうになった。
 
 ――じゃあ、行ってみましょうか。
 
 面倒なので護衛も不要と言い出す始末だ。
 どうなることか、とロベニカは頭を抱えている。
 
「心配ご無用ですわ」
 
 軍服姿に戻ったジャンヌが前部座席から振り返る。
 
「――狼藉者など、私が斬り捨てましょう」
 
 ジャンヌから是が非もな表情で迫られたロベニカは同乗を許可している。
 本人が言う通り護衛代わりになるとも判断したのだ。
 
「ジャンヌ少佐、ここは穏便にお願いしますね」
 
 興味本位で見に行くだけのトールとしては、争いごとを起こしたいわけではない。
 反体制派とはいえ領民の血を流したとあっては、寝覚めが悪いと考えたのだろう。
 
 ――いい夢にしたいからね。
 
 それにしても――とトールの思考は続く。
 
 ――こんなに素敵な巨乳――い、いや、それは失礼だな。素敵な女性二人と車に乗れるなんて領主は最高だなぁ。
 
 などと、トールが不埒な思いを抱く一方、バスカヴィ宇宙港では――、
 
「旅客船を出せーーー!」
「避難計画なんてウソだろうがーーー」
「金持ち優遇はんたーい」
「ゲートなんてぶち壊してしまえ!」
「うおおおッ!!」
「領民のためにぃぃぃ!」
 
 旅客船の運航が停止し、閑散としていたはずのロビーが人の波で埋め尽くされていた。
 警察と宙港セキュリティは懸命に宥めようとしているが、圧倒的な人数差に収集がつかなくなっている。
 
 その様子を、ロビー吹き抜けの二階テラスから眺めている女がいた。
 
「そ、ソフィア」
「何?」
 
 反政府系メディア、エクソダスMのソフィアである。
 
「――これで良かったんだよな?」
 
 落ち着き払ったソフィアとは異なり、男は周囲を気にしながら怯えた様子を見せている。
 彼が着用している制服は、宇宙港職員のそれであった。
 
 ソフィアの元に、とある反体制派に属する知人から連絡が入ったのは数日前の事だ。
 
 ――大規模な抗議デモを予定してる。取材するだろ?
 ――どこで?
 ――バスカヴィがいいな。中で騒ぎたいんだが、入港規制がきついから外になる可能性はある。
 ――ふぅん。だったら私の伝手で――。
 
 先史以前、地球の重力圏内で地表人類のみが暮らしていた時代の話だ。
 
 民主主義という制度があった。
 非合理的で、スピード感も無く、広大な国土を治めるには不向きな制度である。
 
 ソフィア自身、この制度に対する幻想など抱いていない。
 唯一の見るべき点は、為政者に対する不満の表明が、政治システムに組み込まれていた点だろう。
 
 帝国は寛大な専制君主制度ではあるが、そのような仕組みは持ち合わせていない。
 
 時としてメディアは批判をするし、領民たちも抗議の声を上げる。
 だが、それは政治システムに組み込まれてはいないのだ。
 
 ――かといって他に方法が無い。
 
 領民が声を上げ、メディアがそれを増幅する。
 
 これでようやく耳の遠い為政者の鼓膜に響くのだろう。
 だからこそ、反体制派の頼み事に応じたのだ。
 
 とはいえ、彼女は反体制派ほどの過激思想は持ち合わせていない。
 反政府系メディアの記者ではあるが、過激な連中は概ね屑である事を知っている。

 三年ほど前、フレタニティという反体制派組織を取材した事があった。
 組織のリーダーは元軍人という話しだったが、ニューロデバイスを自ら切除したという変人である。

 ――ベネディクトゥスが光に満ちる日は近いッ。そのためにはベルニクの死が必要なのだあああ。

 などど、話す内容が支離滅裂な上、唐突に激高すると手が付けられない。
 あれで良く組織をまとめられるものだと感じた記憶がある。
 
 一方で、トールの印象は、実のところさほど悪く無かった。
 いや、むしろ良かった。
 
 ――苛めたくなる感じもたまんないのよね。
 
 有能か否かは判断を留保しているが、少なくとも不誠実な男では無いと感じたのだ。
 伝え聞くこれまでの行状からすると意外ではある。
 
 ――自分で言うのもなんだけど、メディアって信用できないから。
 
 無論、疑問に感じる点は残る。
 
 強襲突入艦に乗艦するという意図が分からぬ発言。
 未だに発表されない避難計画。
 
 報道では好意的に扱われていたが、いきなり軍属になったのも気まぐれなポピュリズムに感じていた。
 
 ――この声が、あの領主に届くといいのだけど。
 
 淡い期待。
 
 ――だけど――やたらと胸の大きな秘書官から、矮小化された報告を受けるだけかしらね。
 
 このデモを報じたところで、領主の目に止まる保証など無かった。
 数多の報告の一つとして埋没する可能性は大いにある。
 
「ふぅ」
 
 そんな思いに至り、息を吐いて上を見上げた時のことだった――、
 
「――え?」
 
 宇宙港のロビーは、三階まで続く吹き抜けになっている。
 一階が一般向けロビーで、二階は各宙航会社の提供するラウンジと飲食店があった。
 
 普通の人が入れるのはここまでだ。
 
 三階は限られた要人のみに提供され、通常とは異なるルートで入る事が出来る。
 その三階にある吹き抜けに面したテラスに現れたのは――。
 
「うわぁ、すごい人ですね。ちょっと下に降りてみましょうか」
 
 トール・ベルニクその人が、呑気な声を上げていた。
 
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