本気の宇宙戦記を書きたいが巨乳も好きなのだ 〜The saga of ΛΛ〜 巨乳戦記

砂嶋真三

文字の大きさ
67 / 230
起[転]承乱結Λ

23話 叛乱の嵐。

しおりを挟む
 謀略のくつ、詩編大聖堂からホテルに戻ると、ロベニカとマリは大急ぎで自室へと向かった。

 ――きっと、お風呂に入るんだな。いや、シャワーかな。いいや、お風呂だよね。

 などと、どうでも良い事を思い巡らし、トールも自室に――広々としたスイートルームに帰った。
 ジャンヌ達からの連絡を心待ちにしつつ、照射モニタで報道番組を眺める。

 ――アレクサンデルさんも喜んでるかな。

 新教皇誕生にまつわる報道を見ながら思った。
 
 なお、トールの異端審問予審への送致は既に止められないが、予審の構成員はアレクサンデル一派に置き換えられる。
 かくして、女神を否認した男は、政治によって異端を免れるのだ。

 ――ん?

 緊急ニュースを報せるアラーム音と共に、照射モニタの映像が顔馴染みとなった女の立ち姿に切り替わる。

 ――ムッチーノさん……。

 帝都出張をこなしつつ、本来の職務も務めているようだ。

 << ベネディクトゥスの光と称する勢力が、ベネディクトゥス星系にて武装蜂起しました >>

 想定した事態のためトールに驚きはない。

 << 同勢力は、既に総督府庁舎を占拠。また、艦隊戦力を有しており、同星系に駐留する公領撫民艦隊と交戦中の模様です >>

 公領撫民艦隊とは、帝国直轄地――つまり公領における駐留艦隊を意味し、その戦力は地方によりバラツキがある。

 ベネディクトゥス星系の駐留艦隊は、対海賊用の艦艇で構成されているため、叛乱軍にまともな指揮官と艦艇があるならば太刀打ち出来ないだろう。
 
 << 隣接するベルニク領邦軍は既に討伐軍の編成を終え、帝国基本法九条に基づく発令を待っているとの情報が入っています >>

 自領邦の素早い対応に、ソフィアは少しばかり誇らし気な表情を隠せない。

 << 異例の対応の早さについて、帝都ご滞在中のトール・ベルニク子爵閣下に直接おうかがいすべく―― >>

 ◇

 コンクラーヴェから一夜明けた翌日。

 ベネディクトゥス星系での叛乱を皮切りに、多くの公領で叛乱軍が一斉に蜂起し始めていた。

 宰相エヴァン・グリフィスはメディアを通じ以下の声明を発表する。

「ウルド陛下より勅諭ちょくゆを賜った故、告げる。帝国旗下万軍にて賊を討つ。諸侯と臣民は安んじて高覧あるべし」

 諸侯の領邦軍をあてにせず帝国軍が始末をつける――それが、女帝ウルドの意思であると公言したのだ。

 懸念を示す廷臣もいたが、コンクラーヴェにより各領主が帝都に滞在、または帰路にある途上という事情を考えると、やむを得ないとの結論になった。
 
 己の腹を痛める必要が無くなった諸侯としては、歓迎すべき声明である。

「公領、十五星系のうち、十二星系で叛乱が起きています。我々が把握できた敵勢力の状況はベネディクトゥスだけですが――」

 トールは、すっかり執務室の様相を呈するスイートルームで、ロベニカの報告を受けていた。

 照射モニタには、火星方面管区司令長官パトリック大将と、月面基地司令官ケヴィン准将が映し出されている。

「いかほどです?」

 トールの質問に、パトリックが答えた。

「戦艦、駆逐艦共に百隻、後は戦闘艇が二千隻程度ですな。会敵した公領撫民艦隊から打電がありました」

 艦型と整備状況は不明ながら、ベルニク領邦軍に見劣りしないどころか、戦艦の艦数では上回っていた。

 叛乱の起きた十二カ所が同兵力だと仮定すると、叛乱軍は三万近くの艦艇数を持っている事になる。

 艦艇数もさることながら、乗組員、指揮官、整備、さらには拠点が必要となり、反政府系組織やベルツ家残党だけで起こせるような叛乱ではない。
 となれば、有力諸侯のいずれかが関与しているのは明白なのだが――。

「これを帝国軍のみで始末するのか……」

 帝国軍が保持する艦艇数の公称値は十万であるが、実際に動かせる艦艇はその半分程度と言われ、また老朽艦が多数を占めていた。

 銀河を統一した帝国に対等な規模の外敵など存在せず、領邦同士の小競り合いは当事者同士が外交か武力で解決してきた。
 封建制度を採用した帝国とは領邦間の利害調整役であり、その力の源泉は伝統的権威である。

 国費を食いつぶす巨大な軍隊を維持する必要など無かったのだ。

「エゼキエル第一、第二基地、及びイザーク要塞から、今夜半頃には全艦出撃するそうです」

 惑星エゼキエルの周回衛星を改造したイザーク要塞は、帝都防衛のかなめである。

「随分と早いですね」
「ちょうど、大規模な演習が予定されていたんです」
「なるほど」

 ――エヴァン公も、色々と準備してたんだなぁ……。

 コンクラーヴェという隔絶された環境における女帝弑逆しいぎゃくの目論見はついえた。
 となれば、イリアム宮にて自然な形で始末するほかない。

 そのために、まずは帝都を丸裸にする選択肢を選んだのだろう。
 エヴァンの中では、計画時点でオプションの一つとしてあったはずである。

いずれにしても、ほとんどの艦隊が出払うわけですね……この星系から」
「はい。まともな戦力としては、近衛師団のみとなるでしょう」

 近衛師団は、白兵部隊だけでなく艦隊も保有する。
 エゼキエル第三基地に駐留しており、銀獅子艦隊とも呼ばれていた。

「ただし、グリフィス領邦に対しては、帝都防衛の勅命が下っています」
「あそこからだと、帝都までどれくらい掛かります?」
「艦隊編成にもよりますが、最短で三日程度かと」

 ベルニク領邦からであれば、超高速旅客船でも一週間は必要となる。
 近隣領邦を頼んだのだと言われれば、強く否定も出来ない。

 だが、丸裸となった星系に、エヴァン公の影響下にある軍隊のみが残るのだ。
 彼の狙いに見当が付く者からすると、分かり易い状況とはなった。

「――まあ、概ね期待通り――いや、想定の範囲内って感じですかね」

 この状況で、その言葉が出るかと、パトリックは頼もしい気持ちで片眉を上げた。

「ケヴィン准将」

 顔にまとわりつく猫と格闘していたケヴィンがこちらを向いた。

「し、失礼しました。猫様がたけっておられまして――」
「アハハ」

 トールは言葉を切り替えた。

「みゆうさん、この後のお客様が帰ったら、お話しできる時間がありますよ」
「え、ほんと?」
「はい。だから、ちょっとだけ待ってて下さいね」
「はぁい」

 ようやく、落ち着きを見せた猫に、ケヴィンは胸を撫でおろす。

「ええと、そんな訳でケヴィン准将。準備は万端ですか?」
「は、はい。出撃準備体制は敷いております」
「それなら良いです。後は、帝都に叛乱軍が――」
「あ、トール様。悪党――いえ――お客様のようです」

 来客モニタに、マリと二人の男が映っている。

 ロベニカの個人的感情からすると招かれざる客人であった。
 蛮族と手を結び、裏切り者オリヴァーを操って、ベルニク領邦を陥れようとした仇敵である。

「パトリック大将、ケヴィン准将、いったんEPR通信を切りましょう」

 ――呑気な顔はしていても、トール様って、やっぱり器が大きなひとだわ。
 ――必要だから、仕方なしに付き合ってるんでしょうね。
 ――ただ、あんな人達と関わっていると、悪企みに加担する羽目になりそうで心配だけれど……。

「さあて、これから、ロスチスラフさんやドミトリさん達と悪企みをしないとな。あ、ロベニカさんは同席して下さいね」

 トールは無邪気に微笑んでいる。

「ボク達、仲間なんですから」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

処理中です...