本気の宇宙戦記を書きたいが巨乳も好きなのだ 〜The saga of ΛΛ〜 巨乳戦記

砂嶋真三

文字の大きさ
128 / 230
起転[承]乱結Λ

39話 偽装。

しおりを挟む
「そ、想定したより――随分とお客様が増えましたな」

 月面基地の司令官室にて、ケヴィン・カウフマンは幾分か緊張している。

 ――女帝陛下に鞭打たれた時ほどではないが……。

「直ぐに出発ですから。お構いなく」

 と言われても、ケヴィンとしては構わざるを得ない。

 なぜなら──、

「菓子皿も空になったが、何より喉が渇いておる」

 信仰の頂点に君臨する教皇が、ケヴィンの武骨な執務室に居合わせているのだ。

「あ、し、失礼をば――」

 自ら茶の用意に行こうとしたケヴィンを、女男爵メイドが手を挙げて引き留めた。

「炭酸水がある」

 マリ特製炭酸水の入ったタンブラーを何処いずこからともなく取り出した。

「ちょっと、アタシにも飲ませなさいよ。元誘拐犯ッ!!」

 奴隷船の反乱で名を馳せる伯爵令嬢クリスティーナ・ノルドマンである。

「ううぅ」

 そのクリスが吠えると、マリの背後に立つ大柄な女は不安そうに呻いた。

 ――むむ、この女は確か──天秤衆のはずだ。

 悪漢教皇、無愛想な女男爵、奴隷船帰りの伯爵令嬢、白痴の天秤衆、そして呑気。

 ――カオスだ。私の執務室がカオスになっている……。

「念の為の確認ですが、本当にグノーシス船団国へ皆さま揃って行かれるので?」

 トール以外の面子は軍属では無い。

「是非もなし。我は異端を裁かねばならん」

 アレクサンデルは、船団国討伐という前例の無い一手を打つ事で、教会内における権力基盤を盤石にしようと考えていた。
 彼の秘したる目論見を達成する為にである。

「ですね。元から聖下は計画に入ってましたから。けど──」

 トールは申し訳なさそうな表情をマリに向けた。

「大丈夫」

 と、マリは気丈に頷いた。

 巫女を連れて台座に乗って逃げたフリッツとトーマスを追うには、マリに流れるベルツ家の血が必要となったのだ。

 また、二人と悶着を起こした女ソルジャーの証言から、「台座」や「城塞」という単語をフリッツが使った事も判明している。

 城塞に興味を抱くトールは、二人を取り戻して話を聞きたいと考えていた。

 結果、マリから離れないブリジットと、ブリジットを慕い続けるクリスまでが同行する次第となったのである。

 当初は渋っていたトールだが、ロベニカに耳打ちをされて許可をした。

 ――ブリジットはマリの護衛になります。そして──ブリジットが正気に戻った場合の保険も必要です。

 いざいとはなれば、クリスを人質にせよという意味だ。

「あ、そうだ。そうでした。そういえば――」

 カオスな執務室を一刻も早く出ていきたいケヴィンが幾分か芝居がかった声を上げた。

「私はドックの視察に行く予定が入っていたのです。いやはや、月面基地司令というのも意外に忙しいものでして――わわわ」

 ケヴィンが出ようとしたところで、司令官室の扉が開いた。

「あら――司令?」

 優雅に敬礼をするジャンヌ・バルバストルが立っていた。

「ただいま到着致しました、閣下」

 ランドポータル方面の防衛陣にて第五戦隊を指揮していたが、ホワイトローズ旗下千隻と共に月面基地へ参じたのである。

「無理を言ってすみません。ジャンヌ中佐」

 休暇日を返上させて急ぎ呼び寄せたのだ。

「光栄ですわ」

 フェリクス宇宙港で見た領主の背中は、彼女が死の眠りに就くまで輝きを失わない。

「閣下と共に万物を薙ぎ払いに参りました」

 不吉な宣言に、ケヴィンは肩を震わせた。

 ――怖い――やはり怖いッ――。

「今回は万物というより――」
「で、では、皆さん。私は視察の予定がありますので──」

 妙な話に巻き込まれる事が無いよう、ドックを司令官が視察する予定を組んでおいたのである。

「よし! 仲間が全員揃いました」

 そう言ってトールは急ぎ足でケヴィンに近付くと、彼の腕をなぜか力強く掴んだ。

「か、閣下!?」

 無礼とはならぬ程度に腕を揺すってみたが一向に放してくれる気配が無い。

「さ、行きますよ。ケヴィン少将」

 トールが微笑んだ。

「今回も一緒に頑張りましょうね!」

 ◇

 その頃、トールの屋敷で一人の男が激怒していた。

 統帥府長官ヨーゼフ・ヴィルトである。

 彼を激高させるに足る報告が部下より入って来たのだ。

まこと――なのだな」
「は、はい」
「オソロセア領邦との同盟締結に向けた外交行事を控えた──この時期にか?」

 その為に補佐官と局長達は会議室に雁首を揃えているのだ。

 明日の協議には参加してくれるようトールには何度も念を押してあった。

 ところが、木星方面管区艦隊と聖骸布艦隊の合同軍事演習にトールが同行するというのである。

「対海賊用の艦隊と聖骸布艦隊が軍事演習? 馬鹿も休み休みに言えッ!」
「――は、はあ、まあ」

 ヨーゼフの罵声を浴びる不運な部下は、生返事をする以外の選択肢がなかった。

 他方で会議室の面々は緊張した面持ちでヨーゼフを見詰めている。

「少しはまともな領主になったかと期待したが――」

 ヨーゼフにも積年の思いがあるのだろうと何名かの補佐官には同情心が沸いていた。

「やはり、浮薄な愚かさは──」
「長官」

 決定的な不敬となりかねない言葉をロベニカが遮った。

「閣下にも何かお考えが有っての事でしょう」
「海賊艦との戦争ゴッコにか──」

 この言葉で、勘の良い人間は気付いたかもしれない。

 ヨーゼフ・ヴィルトは人から好かれるタイプではなかった。

 礼儀礼節に煩く小言が多い点は大いに煙たがられており、誰が相手でも直言を辞さない男である。

 だが──彼は嫌味な言い回しを決して好まない。

「それは――分かりませんけれど――」

 ロベニカの方も珍しく、しおらしい様子で早々に矛を収めた。

「ふん」

 ともあれ、この小さな一幕は、噂好きな京雀が繰り広げる伝言ゲームにより、遠くカドガン領邦のフォックス・ロイドにまで届くのだろう。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

処理中です...