本気の宇宙戦記を書きたいが巨乳も好きなのだ 〜The saga of ΛΛ〜 巨乳戦記

砂嶋真三

文字の大きさ
165 / 230
起転承[乱]結Λ

24話 昼行燈。

しおりを挟む
「親切なだけでなく、陛下への忠誠も篤い方なんですよ」

 メディア関係者を前に、トールは真心を込めて語っていた。
 己が過去に犯した愚行と――、

「だからこそ、内緒で借金をチャラにしようなんて申し出てくれたんです」

 ――ロマン・クルノフ男爵の崇高さについてである。

「ですが、先ほどのご説明では、その申し出をお断りになったそうですが?」

 質問者した記者も訝し気な表情を浮かべている。

「ええ、無論です」

 トールは重々しく頷いたつもりだったが、上手く出来たか否かについては自信が無かった。
 
 諸事、重厚さに欠けた男なのである。

「あらゆる困った方々を救いたいと言われる崇高な男爵に、過去の失敗を尻拭いさせるわけにはいきませんとも」

 ロマン男爵が同席したなら、そこまでは言っていないと強く主張しただろうが──。

「あの、クルノフ男爵は――そこまで?」
「分かり易く帝国CDBDレートで言えば、なんと二百兆ですっ!!」

 質問への直接的な回答を澄まし顔で避けたトールは二本の指を立てて微笑んだ。

「は、はあ」
「考えてみれば、ベルニク領邦の年間予算すら上回ってましたね」

 メディア関係者と領邦民は呆れを通り越して畏怖すら感じている。

 ――ボクだって、昔のボクが怖いんだよね。
 ――ここまでギャンブルにのめり込むなんて有り得るのかな?
 ――いや、それより問題は──誰がこんなに貸してくれたんだろう。

「その返済は、やはり税金――」

 領民達が真に恐れているのは、返済の為に各種税金が上がる事だろう。

 いつの時代も為政者の抱えるツケは一般大衆に回ってくるのだ。

「いいえ」

 だが、トール・ベルニクはピュアオビタルである。

「ボクにはね、これが有りますから」

 そう言って、自身の頭をポンと叩いた。

 ◇

「わぁ、楽しそうですねぇ」

 記者会見を終えて執務室に戻ったトールは、インフィニティ・モルディブに先乗りしているテルミナとEPR通信をしていた。

 照射モニタにはバカンススタイルの美女四人と、ご満悦な様子の大司教が映っている。

「まあ、楽しいっちゃ楽しいけどよ」

 トールがテルミナに与えた任務は至極単純だった。

 過去の自分が使っていたジャンケットと接触し、そのアテンドを受けてカジノで好き放題に遊ぶべし。
 
 また、遊び人を演ずるのは知名度があって社会的地位の高い人物であること。

 それを受けてテルミナはマリとクリスの二人を伴ったのだ。

 マリは女男爵メイドとして何度かメディアで取り上げられている。トールの愛人疑惑などもゴシップ系メディアが書き立てていた。

 他方のクリスも奴隷船で戦って生き抜いた伯爵令嬢として有名である。

「ハイローラーエリアには、もう入れましたか?」

 高額な賭博を愉しむ資産家向けのVIPルームだ。

「ああ。入れたんだが――」

 と、報告の途中で横からクリスが顔を出し話を遮った。

「昨日、大勝ちしたのよおおお!! 今日も、今日も勝つわよっ!! ふふっふふふ」

 彼女の隣に立つマリが少し心配そうな表情を浮かべていた。

 クリスは、ビギナーズラックを掴んでしまったのだ。

「――これで――フィリップ家再興の資金が――ふふっふふ」
「あのぅ、ボクは皆さんに負けて欲しいんですけどね。なるべく派手に」
「はあ?」

 トールの目論見は、負けが込んだ自然な状態で、ジャンケットに金策の相談をして欲しかったのである。

 ――けど、まあ、ずっと続けてれば必ず負けるかな。

 確率の女神は常に胴元を祝福する。

「アハッ、こちらの話です。ともあれ、テルミナさん。例のジャンケットの背後関係を――いや、そういえば、何ていう方なんですか?」
「チッ。テメェの記憶喪失も大概だな」

 舌打ちをして、テルミナが応える。

「ユキハっていう、黒髪の女だ」

 その名を聞いたマリは少し身体を強張らせた。

 ――女性だったのか――黒髪の――。

 トジバトル・ドルゴルや、リンファ・リュウと同じモンゴロイド系なのかもしれない。

 ――そういえば昔のボクがリンファさんにセクハラしてた理由って……。

「アホ領主と浅からぬ縁があったらしいぜ――あ~ん?」

 テルミナは目を細めて含みの有る言い方をした。

「浅からぬ?」

 などと言われても、トールには全く身に覚えが無い。

「――ふうん――ま、いっか」

 テルミナは昼行燈の追求は諦め、仕事に意識を切り替える事にした。

「ま、言われずとも裏は探る。アホに、ここまでの借金をさせた野郎は間違いなく悪党だからな」

 ◇

「会って、どうするつもりです?」

 憲兵司令ガウス・イーデン少将は、自身の執務室を訪れた意外な客人に尋ねた。

「――協力が出来ると思う」

 いつになく清々しい表情のケヴィン・カウフマン中将が応える。

「オリヴァー大将――いや、オリヴァーは未だ予審にすら送られていないのだろう?」

 ベルニク軍の軍法会議において、公判に付すか否かを判断するのが軍法会議予審機関である。

「ええ、そうですな。憲兵司令部にて鋭意聴取中――という訳です」

 憲兵事案ではなく、通常の刑事事件であれば、とうに留置期限を過ぎている。

「本人は黙したまま、尚且つ物的証拠や、周囲の証言が十分に揃っていない」

 見事なまでに全ての証拠が隠滅されていたのだ。

「オリヴァーには厄介なお仲間が居るようです」

 この点、かつてであれば、第一容疑はオソロセア領邦となっただろう。
 
 情報部出身で抜け目のない領事ドミトリの差し金ではないか――と、ガウスも疑っていたのだ。

 だが――、

「私なら、彼に語らせる事が可能かもしれない」
「ほう?」
「――それが無理なら、証言人となっても良い」
「えっ?」

 思わず、ガウスは驚きの声を上げた。ケヴィンの申し出は、自らの裏切りも宣する事を意味するからだ。

「ケヴィン中将――」

 彼がオリヴァー・ボルツ一派に属していた事を、軍関係者であれば誰もが知っている。

 蛮族侵攻時の裏切りに加担していたとて不思議ではないし、ガウス自身も長らくその疑念を抱いていたのだ。

「私はな、少将。自分の愚行を――恥じている」

 僅かな手勢を率いるトールが防衛戦に出撃しようとした時、彼は月面基地から逃亡しようとしていた。運命か――あるいは女神の悪戯でトールの初陣に連れ立ったに過ぎない。

 ――この恥は、生涯消えないのだろう。

 故に、これ以上の恥を重ねたくなかった。

 妻子には申し訳ないが、必要な代償を払う覚悟も出来ている。

「だから――」
「この際ですからハッキリ言いますけどね、中将」

 続きを語らせまいとするかのように、ガウスは声を高めケヴィンの言葉を遮った。

「私は、あなたについて閣下に忠告した事がある」

 ケヴィンは顔を俯け、瞳を閉じた。

「閣下は、何て答えたと思います?」

 ――オリヴァー・ボルツの息が掛かっている可能性が有ります。
 ――まさか。ケヴィンさんが!? う~ん、なるほど――ううむ。
 ――ですから――。
 ――あのですね、ガウス少将。それは――、

「どちらでも良い――そうおっしゃった」

 ――馬鹿な上司を追い落とそうってのも、ある意味では健全でしょうしね。

 そう言って、やはり彼はアハハと笑った。

「オリヴァーの裏切りすら、さほど気にしておられない」
「な――」
「そもそも、予審送りになっていないのは、証拠不十分が理由ではないのです」

 驚くばかりのケヴィンを、ガウスは柔らかな瞳で見据えた。

「閣下の意向ですよ」
「え?」

 慈悲なのか、と出かけた言葉を、ケヴィンは喉元で押さえる。

 ――そんな訳がない。あの方は――トール様は――。

「餌――と、聞いております」

 領地を簒奪しようとした裏切り者は、今やトールが蒔いた単なる餌である。

「オリヴァーの裏を閣下は気にしておられるのです。本丸はロスチスラフ侯では無かったようでしてな。ふむ、ですが――」

 ガウスは少しばかり考える様子を見せた。

「中将が面会されるのも良いかもしれません。アレから面白い話が聞ければ、閣下も喜ばれる事でしょう」

 彼等の主人である昼行燈は、少なくとも間抜けではない。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

​『イージス艦長、インパール最前線へ。――牟田口廉也に転生した俺は、地獄の餓死作戦を「鉄壁の兵站要塞」に変える』

月神世一
SF
​【あらすじ】 ​「補給がなければ、戦場に立つ資格すらない」 ​ 坂上真一(さかがみ しんいち)、50歳。  かつてイージス艦長として鉄壁の防空網を指揮し、現在は海上自衛隊で次世代艦の兵站システムを設計する男。  背中には若き日の過ちである「仁王」の刺青を隠し持ち、北辰一刀流の達人でもある彼は、ある日、勤務中に仮眠をとる。 ​ 目が覚めると、そこは湿気と熱気に満ちた1944年のビルマだった。  鏡に映っていたのは、小太りで口髭の男――歴史の教科書で見た、あの「牟田口廉也」。 ​ しかも時期は、日本陸軍史上最悪の汚点とされる「インパール作戦」決行の直前。  部下たちは「必勝の精神論」を叫び、無謀な突撃を今か今かと待っている。 ​ (……ふざけるな。俺に、部下を餓死させろと言うのか?) ​ 現代の知識と、冷徹な計算、そして海自仕込みのロジスティクス能力。  すべてを駆使して、坂上(中身)は歴史への介入を開始する。  精神論を振りかざすふりをして上層部を欺き、現地改修で兵器を強化し、密かに撤退路を整備する。 ​ これは、「史上最も無能な指揮官」の皮を被った「現代の有能な指揮官」が、確定した敗北の運命をねじ伏せ、数万の命を救うために戦う、逆転の戦記ドラマ。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

大東亜戦争を有利に

ゆみすけ
歴史・時代
 日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

処理中です...