小説練習帖 九月

９月17日（土）

金平糖

　三連休が始まるので　うれしくて　久しぶりに　稲垣足穂の『一千一秒物語』を読みながら　夜ふかしをした
　明け方　どうしてだか　外の様子が気になって　窓を開けてみた
　空から　ゆっくりと　光の小さな粒が　ボタン雪みたいに降っては　地面に落ちる前に　消え失せている
　ランダムに弾く　パイプオルガンみたいな音も聴こえる　上空に吸い込まれた　百貨店前の　チェロの音かも知れないと思った
　よく眺めると　雪というよりか　パステルカラーの金平糖みたいだ
　腕を伸ばして　ひとつ摘んでみる　確かに　発光する　これは水色の金平糖だ　食べてみよう　口にふくんだとたん　パチパチとけて　かすかなラムネの香りが　鼻にぬけた