小説練習帖 九月

犬束

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9月25日(日)

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還暦W

 買い物に行こうと 家を出たら 背の高いお爺さんに名前を呼ばれた
——みっちゃんには お世話になったんだよ こんなに近所に住んでるなんてね
 父方の祖父の名前が 光る蔵と書いて「みつぞう」なので 死んだ祖父さんの知り合いらしい
——こちらも世話をしたけれど ずいぶんお世話になってねえ
 幾つくらいだろうか シミはあっても肌艶はいいし クリーニング済の衣服をぱんぱんに詰めた 大きなレジ袋を下げ 杖もつかずに すたすた歩いている
 あちこち転職した話をするが 家の祖父さんとの接点は まだ分からない
——膝が悪くてさ 数えで大還暦だから
 大還暦って 何歳のお祝いだ? 還暦よりは年上っぽい 祖父さんよりは年下っぽい
 適当に お若く見えます とかなんとか 取りつくろう
——この年になると 若く見えたら 身体がエライよ じゃあ
 ちょうど信号が青になったので お爺さんは さっさと横断歩道を渡って行った
 大還暦を検索してみたら 還暦を二度迎える 百二十歳のことだった
 いや マジで お若いですって

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