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第13話 分からない
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その後、ユナは診療所で、ジルさんの更なる治療を受けて、結構な出血を伴った怪我だったにもかかわらず、傷跡も残らず完治したという。
「ジルさんの腕が良かったから」
と、彼女はあっけらかんとしていたが、少なくとも外傷に対する治療という点では、確かに彼は一流の腕前なのだろう。
そのユナも、治療したジルさんも、そして俺も徹夜の行進開けでふらふらになっていた。
俺とユナは昨日と同じ宿を、特別に午前中から借りて、夕方まで爆睡。
ジルさんは、 (うらやましいことに)アイシスさんの家で仮眠を取らせてもらったという。
その後、起きた俺とユナは夕暮れの村を、暗くなるまで観光がてらに散歩した。
特にめずらしいものはないのだが、素朴なたたずまいで落ち着く。
アイシスさんから教わった、評判の良い名物料理店も、この地方独特の肉料理がなかなかうまかった。
うん、なんか、ちょっとしたデート気分だ。
ユナがそう思ったかどうかはわからないが、もう完全に打ち解けているし、楽しそうにしていたから、まあ、良かった。
俺としてはこの日のうちに帰りたかったが、夜に馬車を走らせるのは危険だということで、結局もう一日宿泊することになった。
これで予定は二日オーバーだ。
ちなみに、あの真竜については、ちょうどこの地方の領主様が二ヶ月ぶりに王都での公務から帰って来たということで、対策を申し出るということだ。
正式に騎士団を出陣させてもらうか、または懸賞金を大幅にアップしてもらうか、どちらかまたは両方の案を、村の代表が直々に陳情するという。
その夜、俺は昼間あれだけ寝たというのに、またもや宿屋で爆睡。
ひょっとしたらユナ、前と同じように俺の部屋を尋ねてきたかな、と思ったが、彼女も朝までぐっすり寝たという。
翌朝、ようやくサウスバブルの街へ帰るための準備が整った。
ジルさん、もう休みはこの日までしか取っていないと言うことで、一旦サウスバブルへ馬車で戻ることとなっていて、村に来たときと同様、ジルさんが御者となり、俺とユナが後の席に並んで座った。
ここに来るときは、女の子と接すること自体があまり経験がなく、くっついて座るのはかなりドキドキしたものだが、今は落ち着くというか、幸せというか、そんな気分になっているから不思議だ。
といっても、別につきあい始めたわけでもなんでもなく、単に仲良くなった、ぐらいのレベルなのだが……。
わずかな期間とはいえ、互いに死線を乗り越えて来た。
そこで生まれた縁は、単純な恋愛感情ではない、別の深い絆を、俺とユナにもたらしてくれたのかもしれない。
ユナは、相当な美少女だ。
その上、上級冒険者でもある。
さらに、そんな彼女を、支えてくれる男性が理想なのだという。
俺には、彼女の最高の結婚相手が見えない。
だからといって、俺自身がその相手であるなんて、到底……。
「……さっきから、何をぶつぶつ言っているの?」
ユナに顔をのぞき込まれて、鼓動が大きく跳ね上がるのを感じた。
落ち着く、なんて思ったとたん、それが覆ってしまった。
「い、いや、今後の事を考えてたんだ。店、予定より長く閉めてるし……」
「……指輪、光ったよ?」
「……そのアイテム、ずるすぎる!」
俺が口をとがらせると、ユナはケラケラと笑った。
「暇だし、お互いに質問タイムにしない? 宿屋の続き」
「……指輪、貸してくれるならするけど」
「いいよ。変な質問だったら、答えなければいいんだし。決定。じゃあ、まず、私からね」
「……さっきの質問は?」
「あれは、タクが自滅しただけだからノーカウント」
「やっぱり、ずるいなあ……」
なまじ当たっているだけに、強く文句が言えない。
「じゃあ、質問。私の事、『失いたくない本当に大事な存在』って言ってくれたの……もっと詳しく、その意味を教えて欲しいな……」
……うぐっ! いきなり核心を突いてきた……俺にとっては、最も触れられたくないセリフだったのに……。
しかも、ウソはつけないし、沈黙も、なんか気まずい気がする。
「……真面目に答えていいか?」
「真面目? うん、それでいいよ」
「……正直、怖かった……ユナ、本気で死んでしまうと思ったから」
「……」
俺が本当に真面目に答えたものだから、ユナも真剣な表情になった。
「だから、言葉に出たんだ……本気で失いたくないって思ったから。理由を聞かれても、うまく言えない。最高の結婚相手かもしれないっていうのも、それまでに何度か意識はしていた。でも、そんなことより、ただ、君を失うのが怖かった……」
俺が淡々と、自分の思いを伝える間、彼女はじっと指輪を見つめていた。
それは、俺のウソを見分けようとしていただけではなく……俺と視線を合わせるのを避けていたように思えた。
「……ありがと。それと、ごめんなさい、心配かけて……」
「……い、いや、分かってくれればそれでいいんだ」
意外にも、彼女が素直に謝ったものだから、こっちの方がドギマギしてしまった。
彼女、悪かったと思ってたんだ……。
「うん、タクの言葉にウソはなかった。本当に、私の事、心配してくれてたのね。それだけで嬉しいよ。今までの人と、ちょっと違う」
「……今までの人?」
「うん。『好きだ』とか、『一生大事にする』とか、言い寄ってくる人いっぱいいたけど、変な下心がある人がほとんどだったし……」
……げっ、その歳で、すでに何人にも告白されていたか……。まあ、これだけ可愛い女の子が一人旅してるんだ、そうなって普通か。
「……それで、付き合ったことあるのか?」
「ううん、ちょっと一緒に歩いたり、買い物したりしたことがあるぐらいかな。中には真剣に付き合おうとしてくれる人もいたけど……なんとなく、合わなかった」
「なるほど……ちなみに、俺とは合っているのか?」
「……それ、質問? だったら、指輪、渡すけど?」
「い、いや、こんなので質問一回使うの、もったいない」
ちょっと焦った俺を見て、ユナはまた声に出して笑った。
「……タクとは、一番合ってると思うよ。ずっと話していられるし、一緒にいて楽しい」
「……そっか、それならよかった」
「……ウソかもね」
「やっぱり、指輪、貸してくれ」
俺の言葉に、今度は小さく笑って、指輪を渡してくれた。
「……じゃあ、俺からの質問。ユナ、君は……俺の事、どう思ってる?」
「……それって、占いの店の助手として? 冒険のパートナーとして? それとも……恋愛相手として?」
彼女から、恋愛っていう言葉が出て来て、さらに鼓動が高まった。
しかし、さっきの、何人もに言い寄られたという言葉が、ふっとよぎった。
ここで強引に恋愛話にもっていくと、なんていうか、下心だけで興味があるように思われそうに感じた。
「……全部、ひっくるめて」
「……全部、か……ちょっとずるい質問だけど……うん、正直に答えるね。私は、タクのこと……」
彼女の表情は、真剣だ。
俺は借りた指輪をはめている、彼女のウソは見抜ける。
「……よく分かんない」
「……へっ?」
指輪は、光らない。
彼女は全くウソは言っていない。
「まだ、タクのこと、よく分からない。あなたに興味持ってる、私自身の気持ちもよくわからない。なんでこんなに話が合うのか、一緒にいて落ち着くのか……どうして、二回も命がけで私の事を助けてくれたのか。分からない事だらけ……」
指輪は、チラリとも光らない。
「……ついでに言うなら、タクの占いも分からない。どうして、私の最高の結婚相手がタクに見えないのか、本当にタクがその人なのか……ちょっとだけ意識しているけど、やっぱり自分の気持ち、よく分からない。……どう、私ウソ言っている?」
「……いや、本当の事しか言っていない……」
「でしょう? ほんとによく分からないの……ちょっと、質問に多く答えすぎたね。私の方が長く答えたから、あと一回、私の方から質問するよ。それで終わり」
「……なんだ、結局俺の方が質問回数、少ないじゃないか」
笑いながら、俺は指輪をユナに返した。
「……まあ、私がこれ、貸してあげていること自体がサービスだから。じゃあ、最後の質問。タク、貴方は、自分の最高の結婚相手が、私だと思ってる?」
……うお、直球で攻めてきたか!
けど、俺の正直な気持ちは、実は、彼女と同じだった。
「……分からない」
「……えー、そんなの、ずる……」
そこまで言って、彼女は自分も同じだと気付いたのか、それ以上言葉に出さなかった。
「……さすがに、見えないことは、ウソではないと自信を持って言えないよ。ただ……」
「……ただ?」
「よく考えたら、それって普通じゃないかな? 自分の最高の結婚相手が誰なのか分からない、目の前の人と結婚しても、必ず幸せになれるとは限らない、って」
「……そう言われて見れば、そうね……」
ユナは思案顔で何度か頷き、その様子をじっと見ていた俺と目が合って……なぜか、それだけのことがおかしくて、二人でまた笑った。
午後になり、ようやくサウスバブルの街へ到着。
『タクヤ結婚相談所』の前で馬車は止まり、ジルさんは約束の料金と、さらに特別に同じ金額を、成功報酬だと言って渡してくれた。
また、ユナにも同じだけの金額を渡してた。
もちろん、こんなにもらえないと断ったものの、あれだけ命がけの酷い思いをさせたのだ、これでも少ないぐらいだ、と、半ば強引に渡された。
その後、別れの挨拶と握手をした後、彼は馬車で街の中心部へと消えて行った。
そして、ようやく店を開けたものの、これまで何日か閉めていたのが響いたのか、ユナと二人で夕方まで待っていたものの、結局誰も来なかった。
彼女は、臨時収入も入ってきたことだし、ちょっと豪華な宿を取る、ということで、近いうちの再会しようと約束をして、握手をし、別れたのだった。
あれだけの冒険を一緒にして、あれだけ打ち解けたユナと、あっけなく離ればなれになる。
再会の約束はしているが、絶対ではない。
その事に、不安と、喪失感を覚えた。
それから、三日後。
『タクヤ結婚相談所』の隣、空き家だった建物に、『ユナ上級ハンター依頼受付所』という新しい店舗が入ったのだった。
「ジルさんの腕が良かったから」
と、彼女はあっけらかんとしていたが、少なくとも外傷に対する治療という点では、確かに彼は一流の腕前なのだろう。
そのユナも、治療したジルさんも、そして俺も徹夜の行進開けでふらふらになっていた。
俺とユナは昨日と同じ宿を、特別に午前中から借りて、夕方まで爆睡。
ジルさんは、 (うらやましいことに)アイシスさんの家で仮眠を取らせてもらったという。
その後、起きた俺とユナは夕暮れの村を、暗くなるまで観光がてらに散歩した。
特にめずらしいものはないのだが、素朴なたたずまいで落ち着く。
アイシスさんから教わった、評判の良い名物料理店も、この地方独特の肉料理がなかなかうまかった。
うん、なんか、ちょっとしたデート気分だ。
ユナがそう思ったかどうかはわからないが、もう完全に打ち解けているし、楽しそうにしていたから、まあ、良かった。
俺としてはこの日のうちに帰りたかったが、夜に馬車を走らせるのは危険だということで、結局もう一日宿泊することになった。
これで予定は二日オーバーだ。
ちなみに、あの真竜については、ちょうどこの地方の領主様が二ヶ月ぶりに王都での公務から帰って来たということで、対策を申し出るということだ。
正式に騎士団を出陣させてもらうか、または懸賞金を大幅にアップしてもらうか、どちらかまたは両方の案を、村の代表が直々に陳情するという。
その夜、俺は昼間あれだけ寝たというのに、またもや宿屋で爆睡。
ひょっとしたらユナ、前と同じように俺の部屋を尋ねてきたかな、と思ったが、彼女も朝までぐっすり寝たという。
翌朝、ようやくサウスバブルの街へ帰るための準備が整った。
ジルさん、もう休みはこの日までしか取っていないと言うことで、一旦サウスバブルへ馬車で戻ることとなっていて、村に来たときと同様、ジルさんが御者となり、俺とユナが後の席に並んで座った。
ここに来るときは、女の子と接すること自体があまり経験がなく、くっついて座るのはかなりドキドキしたものだが、今は落ち着くというか、幸せというか、そんな気分になっているから不思議だ。
といっても、別につきあい始めたわけでもなんでもなく、単に仲良くなった、ぐらいのレベルなのだが……。
わずかな期間とはいえ、互いに死線を乗り越えて来た。
そこで生まれた縁は、単純な恋愛感情ではない、別の深い絆を、俺とユナにもたらしてくれたのかもしれない。
ユナは、相当な美少女だ。
その上、上級冒険者でもある。
さらに、そんな彼女を、支えてくれる男性が理想なのだという。
俺には、彼女の最高の結婚相手が見えない。
だからといって、俺自身がその相手であるなんて、到底……。
「……さっきから、何をぶつぶつ言っているの?」
ユナに顔をのぞき込まれて、鼓動が大きく跳ね上がるのを感じた。
落ち着く、なんて思ったとたん、それが覆ってしまった。
「い、いや、今後の事を考えてたんだ。店、予定より長く閉めてるし……」
「……指輪、光ったよ?」
「……そのアイテム、ずるすぎる!」
俺が口をとがらせると、ユナはケラケラと笑った。
「暇だし、お互いに質問タイムにしない? 宿屋の続き」
「……指輪、貸してくれるならするけど」
「いいよ。変な質問だったら、答えなければいいんだし。決定。じゃあ、まず、私からね」
「……さっきの質問は?」
「あれは、タクが自滅しただけだからノーカウント」
「やっぱり、ずるいなあ……」
なまじ当たっているだけに、強く文句が言えない。
「じゃあ、質問。私の事、『失いたくない本当に大事な存在』って言ってくれたの……もっと詳しく、その意味を教えて欲しいな……」
……うぐっ! いきなり核心を突いてきた……俺にとっては、最も触れられたくないセリフだったのに……。
しかも、ウソはつけないし、沈黙も、なんか気まずい気がする。
「……真面目に答えていいか?」
「真面目? うん、それでいいよ」
「……正直、怖かった……ユナ、本気で死んでしまうと思ったから」
「……」
俺が本当に真面目に答えたものだから、ユナも真剣な表情になった。
「だから、言葉に出たんだ……本気で失いたくないって思ったから。理由を聞かれても、うまく言えない。最高の結婚相手かもしれないっていうのも、それまでに何度か意識はしていた。でも、そんなことより、ただ、君を失うのが怖かった……」
俺が淡々と、自分の思いを伝える間、彼女はじっと指輪を見つめていた。
それは、俺のウソを見分けようとしていただけではなく……俺と視線を合わせるのを避けていたように思えた。
「……ありがと。それと、ごめんなさい、心配かけて……」
「……い、いや、分かってくれればそれでいいんだ」
意外にも、彼女が素直に謝ったものだから、こっちの方がドギマギしてしまった。
彼女、悪かったと思ってたんだ……。
「うん、タクの言葉にウソはなかった。本当に、私の事、心配してくれてたのね。それだけで嬉しいよ。今までの人と、ちょっと違う」
「……今までの人?」
「うん。『好きだ』とか、『一生大事にする』とか、言い寄ってくる人いっぱいいたけど、変な下心がある人がほとんどだったし……」
……げっ、その歳で、すでに何人にも告白されていたか……。まあ、これだけ可愛い女の子が一人旅してるんだ、そうなって普通か。
「……それで、付き合ったことあるのか?」
「ううん、ちょっと一緒に歩いたり、買い物したりしたことがあるぐらいかな。中には真剣に付き合おうとしてくれる人もいたけど……なんとなく、合わなかった」
「なるほど……ちなみに、俺とは合っているのか?」
「……それ、質問? だったら、指輪、渡すけど?」
「い、いや、こんなので質問一回使うの、もったいない」
ちょっと焦った俺を見て、ユナはまた声に出して笑った。
「……タクとは、一番合ってると思うよ。ずっと話していられるし、一緒にいて楽しい」
「……そっか、それならよかった」
「……ウソかもね」
「やっぱり、指輪、貸してくれ」
俺の言葉に、今度は小さく笑って、指輪を渡してくれた。
「……じゃあ、俺からの質問。ユナ、君は……俺の事、どう思ってる?」
「……それって、占いの店の助手として? 冒険のパートナーとして? それとも……恋愛相手として?」
彼女から、恋愛っていう言葉が出て来て、さらに鼓動が高まった。
しかし、さっきの、何人もに言い寄られたという言葉が、ふっとよぎった。
ここで強引に恋愛話にもっていくと、なんていうか、下心だけで興味があるように思われそうに感じた。
「……全部、ひっくるめて」
「……全部、か……ちょっとずるい質問だけど……うん、正直に答えるね。私は、タクのこと……」
彼女の表情は、真剣だ。
俺は借りた指輪をはめている、彼女のウソは見抜ける。
「……よく分かんない」
「……へっ?」
指輪は、光らない。
彼女は全くウソは言っていない。
「まだ、タクのこと、よく分からない。あなたに興味持ってる、私自身の気持ちもよくわからない。なんでこんなに話が合うのか、一緒にいて落ち着くのか……どうして、二回も命がけで私の事を助けてくれたのか。分からない事だらけ……」
指輪は、チラリとも光らない。
「……ついでに言うなら、タクの占いも分からない。どうして、私の最高の結婚相手がタクに見えないのか、本当にタクがその人なのか……ちょっとだけ意識しているけど、やっぱり自分の気持ち、よく分からない。……どう、私ウソ言っている?」
「……いや、本当の事しか言っていない……」
「でしょう? ほんとによく分からないの……ちょっと、質問に多く答えすぎたね。私の方が長く答えたから、あと一回、私の方から質問するよ。それで終わり」
「……なんだ、結局俺の方が質問回数、少ないじゃないか」
笑いながら、俺は指輪をユナに返した。
「……まあ、私がこれ、貸してあげていること自体がサービスだから。じゃあ、最後の質問。タク、貴方は、自分の最高の結婚相手が、私だと思ってる?」
……うお、直球で攻めてきたか!
けど、俺の正直な気持ちは、実は、彼女と同じだった。
「……分からない」
「……えー、そんなの、ずる……」
そこまで言って、彼女は自分も同じだと気付いたのか、それ以上言葉に出さなかった。
「……さすがに、見えないことは、ウソではないと自信を持って言えないよ。ただ……」
「……ただ?」
「よく考えたら、それって普通じゃないかな? 自分の最高の結婚相手が誰なのか分からない、目の前の人と結婚しても、必ず幸せになれるとは限らない、って」
「……そう言われて見れば、そうね……」
ユナは思案顔で何度か頷き、その様子をじっと見ていた俺と目が合って……なぜか、それだけのことがおかしくて、二人でまた笑った。
午後になり、ようやくサウスバブルの街へ到着。
『タクヤ結婚相談所』の前で馬車は止まり、ジルさんは約束の料金と、さらに特別に同じ金額を、成功報酬だと言って渡してくれた。
また、ユナにも同じだけの金額を渡してた。
もちろん、こんなにもらえないと断ったものの、あれだけ命がけの酷い思いをさせたのだ、これでも少ないぐらいだ、と、半ば強引に渡された。
その後、別れの挨拶と握手をした後、彼は馬車で街の中心部へと消えて行った。
そして、ようやく店を開けたものの、これまで何日か閉めていたのが響いたのか、ユナと二人で夕方まで待っていたものの、結局誰も来なかった。
彼女は、臨時収入も入ってきたことだし、ちょっと豪華な宿を取る、ということで、近いうちの再会しようと約束をして、握手をし、別れたのだった。
あれだけの冒険を一緒にして、あれだけ打ち解けたユナと、あっけなく離ればなれになる。
再会の約束はしているが、絶対ではない。
その事に、不安と、喪失感を覚えた。
それから、三日後。
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