27 / 72
第27話 選ばれし者達
しおりを挟む
俺の戸惑った様子に気付いたイケメン青年のジフラールさんは、
「この娘について、変わった点に気付いたようですね……さすがです。先に申し上げておきますが、あまり込み入った事情はお話できませんので、まずは結果のみ、教えていただけませんか?」
と、先に注意を促してきた。
こう言われてしまうと、この女の子の、明らかにおかしい点は質問しづらくなってしまう。
「……そうですね……結果から言いますと……すみません、見えませんでした」
その俺の言葉に、すぐ隣のユナが、驚いたように俺の顔を見たのが分かった。
「ただ、それが意味することもまた不明です。ひょっとしたら、まだこの世にお相手が生まれてきていないのかもしれませんし、単に僕の実力不足なだけなのかも……」
さすがに、この場で
「この娘は誰と結婚しても幸せになれない」
とか、
「誰とも結婚できない」
とか、ましてや
「ひょっとしたら、この子が一番幸せになれる結婚相手は、僕かもしれません」
なんてことを言えるはずもない。
しかし、そんな俺の言い訳を老占術師が手を左右に振って制した。
「いやいや……適当な結婚相手を言われれば、逆にその時点で貴殿の能力を疑っておったところですじゃ。先程ジフラールが申した通り、この娘に関してのみ言えば、普通の人間とは大きく異なる点がある。しかし、だからこそこの娘は存在できておりますでの……それに、気付いた点があったのであれば、実はそれこそが占っていただいた目的であるとご理解くだされ」
老占術師は、怪しげな笑みを浮かべながらそう言ったが……ご理解どころか、頭の中は疑問符だらけだ。
「……それは、一体どういうことでしょうか……」
難解なその言葉に、今までじっと聞き入っていたジル先生が初めて口を開いた。
「……姫様を占っていただいた後でお話しようと考えておりましたが、先に申し上げておきましょうか……先程も申し上げた通り、儂は、眠り続ける姫様を助ける方法を、神に問いかけた……その結果、一人の優秀な若い占い師が、解決の糸口を見いだすイメージを得た。そしてそれには続きがあり、占い師と、それを補佐する治癒術師、魔導剣士、氷結系の魔術師、若い剣士、そしてこの娘、ミリアが共に旅立つ様子が見えたのですじゃ」
「なっ……旅立ち? ……この女の子も一緒に、ですか?」
珍しく、焦ったような声を上げたのはオルド公だった。
その時、俺はというと、老占術師の言葉が信じられなかった……いや、理解ができなかった。
たぶん俺だけでなく、オルド公を除く全員がそうだっただろう。
「……しかも、先生は『若い剣士』とおっしゃった……つまり、私は入っていないということですか?」
「……その通りですじゃ。神が選んだのは……神が、確実に姫様を助ける手段として儂に示したのは、貴殿以外の、ここにいる五人の青年達と、この娘、ミリアなのですじゃ」
老占術師は、真剣な表情でそう断言した。
「……なんということだ……」
オルド公はしばらく絶句した。
その厳しい表情から、俺は、なにか嫌な予感を感じた。
長い間があって、ようやく彼は俺達の方を向いて、言葉を発した。
「……この国の行く末を決めるにあたって、デルモベート先生の言葉は絶対だ。そなた達は、重責を背負って旅立つ事になるだろう。その際、私は同行することはできぬ……」
オルド公の悲痛な表情と、その発言の重みに、俺達は息を飲んだのだった。
――このとき、国家特別占術師・デルモベート老公は、俺達に隠していた。
旅立つ六人のうち、一人が無事には帰って来られぬということを。
「この娘について、変わった点に気付いたようですね……さすがです。先に申し上げておきますが、あまり込み入った事情はお話できませんので、まずは結果のみ、教えていただけませんか?」
と、先に注意を促してきた。
こう言われてしまうと、この女の子の、明らかにおかしい点は質問しづらくなってしまう。
「……そうですね……結果から言いますと……すみません、見えませんでした」
その俺の言葉に、すぐ隣のユナが、驚いたように俺の顔を見たのが分かった。
「ただ、それが意味することもまた不明です。ひょっとしたら、まだこの世にお相手が生まれてきていないのかもしれませんし、単に僕の実力不足なだけなのかも……」
さすがに、この場で
「この娘は誰と結婚しても幸せになれない」
とか、
「誰とも結婚できない」
とか、ましてや
「ひょっとしたら、この子が一番幸せになれる結婚相手は、僕かもしれません」
なんてことを言えるはずもない。
しかし、そんな俺の言い訳を老占術師が手を左右に振って制した。
「いやいや……適当な結婚相手を言われれば、逆にその時点で貴殿の能力を疑っておったところですじゃ。先程ジフラールが申した通り、この娘に関してのみ言えば、普通の人間とは大きく異なる点がある。しかし、だからこそこの娘は存在できておりますでの……それに、気付いた点があったのであれば、実はそれこそが占っていただいた目的であるとご理解くだされ」
老占術師は、怪しげな笑みを浮かべながらそう言ったが……ご理解どころか、頭の中は疑問符だらけだ。
「……それは、一体どういうことでしょうか……」
難解なその言葉に、今までじっと聞き入っていたジル先生が初めて口を開いた。
「……姫様を占っていただいた後でお話しようと考えておりましたが、先に申し上げておきましょうか……先程も申し上げた通り、儂は、眠り続ける姫様を助ける方法を、神に問いかけた……その結果、一人の優秀な若い占い師が、解決の糸口を見いだすイメージを得た。そしてそれには続きがあり、占い師と、それを補佐する治癒術師、魔導剣士、氷結系の魔術師、若い剣士、そしてこの娘、ミリアが共に旅立つ様子が見えたのですじゃ」
「なっ……旅立ち? ……この女の子も一緒に、ですか?」
珍しく、焦ったような声を上げたのはオルド公だった。
その時、俺はというと、老占術師の言葉が信じられなかった……いや、理解ができなかった。
たぶん俺だけでなく、オルド公を除く全員がそうだっただろう。
「……しかも、先生は『若い剣士』とおっしゃった……つまり、私は入っていないということですか?」
「……その通りですじゃ。神が選んだのは……神が、確実に姫様を助ける手段として儂に示したのは、貴殿以外の、ここにいる五人の青年達と、この娘、ミリアなのですじゃ」
老占術師は、真剣な表情でそう断言した。
「……なんということだ……」
オルド公はしばらく絶句した。
その厳しい表情から、俺は、なにか嫌な予感を感じた。
長い間があって、ようやく彼は俺達の方を向いて、言葉を発した。
「……この国の行く末を決めるにあたって、デルモベート先生の言葉は絶対だ。そなた達は、重責を背負って旅立つ事になるだろう。その際、私は同行することはできぬ……」
オルド公の悲痛な表情と、その発言の重みに、俺達は息を飲んだのだった。
――このとき、国家特別占術師・デルモベート老公は、俺達に隠していた。
旅立つ六人のうち、一人が無事には帰って来られぬということを。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる