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第45話 潜入
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翌朝、まだ夜が明けぬ暗いうちから迷宮探索の旅に出発。
前日のうちに借りていた、今までとは別の馬車で移動。
御者を務めるユアンも、フードをかぶって正体がばれないようにしていた。これは、俺達の後をつける、怪しい連中の目を眩ますためだ。
三時間ほど走り、巨大な岩が密集する地形まできて、手頃な大岩の側に馬車を隠す様に停めた。
そこからは歩きで、さらに二時間。
定期的に糸(ライン)の確認をさせられ、その方向に間違いが無いことを確認した。
ようやく目的地に着いた頃にはかなり疲れていたが、これからが本番だ。
地形は相変わらず、岩場が幾重にも重なっている。
そんな中、ぽつんと、縦横二メルずつぐらいの大きな扉が存在した。
金属製で、全くさびが付いていない。
汚れており、古さは感じるものの、非常に丈夫そうな印象を受けた。
所々、小さな傷がついている。
「この扉、力ずくで開けることはできない。昨日も言ったように、強力な魔法がかけられている。爆破を試みた者さえいるようだが、小さな傷をつけるのが精一杯だったようだ」
「……でも、アクトは開けられるんでしょう?」
「ああ、特別な呪文を唱えればな……その前に、ミリア、周囲に誰かいないか調べられるか?」
「……強い魔法だと、逆に私達の場所を教えてしまう……弱い魔法なら、範囲と精度が落ちる……」
「……ならば、弱い魔法の方でいい。調べてくれ」
アクトがそう指示すると、ミリアは俺の方を見た。
彼女は、最終的には俺の指示にしか従わない。
俺が頷くと、彼女はごくわずかな動作で、探知の魔法を使ったようだった。
「……半径一キロ以内に、人はいない……ここに来るまでも、後をつけてくる者はいなかった……」
「……道中も調べてくれていたんだな……よかった、ありがとう。馬車を変えたのは正解だったな……」
俺はミリアに感謝し、そしてアクトの方を見た。
彼は頷くと、右手を扉にかざし、なにやら、ぼそりと呪文の様なものを呟いた。
重い金属が石の上を引きずられる音がして、扉がゆっくりと外側に開いてくる。
黒く、深い闇が続いているように見えた。
ランタンで前方を照らし、まずアクトが中に入る。俺達もそれに続いた。
入り口付近は意外と広く、ちょっとした石造りの広間のようになっていた。
「……俺達以外の誰かが入ってくると厄介だからな……扉は閉じておく」
彼は開けたときと同様、右手をかざして呪文を唱え、扉を閉めた。
この扉を開けられるのは、王族の血を濃く引く者だけだという。これで安心して探索を続ける事ができる。
アクトを先頭に、我々も続く。
ここは踏破済みの迷宮であり、罠もなく、魔物が出ることもないという。
高さ約二メル、幅は二人並んで歩けるぐらい。
足元は平坦で、歩きにくいことはない。
アクトが道を知っていたこともあり、また、糸も見えていたため、当初の準備が本当に必要だったのか、と思うほど順調に進む。
彼は、糸が複雑に入り組んだ迷宮の奥を指し示していることに、改めて驚嘆の声を上げていたが、俺達からすればそれはもう慣れたものだった。
この探索、案外楽に終わるかもしれない……そう楽天的に考えていたのだが、天上の高さが十メルを超えたところで、大きな門をくぐり、そこに存在した物を見て、俺達は声を失った。
「鉄製の人型巨兵器……百年前の討伐隊は、こいつを倒すために、七人もの騎士を亡くした……」
――死者が出た、というアクトのセリフに、危険だとは覚悟していたのに、俺も、おそらく他のメンバーも、戦慄した。
復活した太古の禁呪により闇の命を吹き込まれた、戦う事のみを義務づけられた存在。
今はもう動かぬ、巨大な黒鉄の殺戮兵器が、首と胴体、そして手足が分離された状態で転がっていた。
前日のうちに借りていた、今までとは別の馬車で移動。
御者を務めるユアンも、フードをかぶって正体がばれないようにしていた。これは、俺達の後をつける、怪しい連中の目を眩ますためだ。
三時間ほど走り、巨大な岩が密集する地形まできて、手頃な大岩の側に馬車を隠す様に停めた。
そこからは歩きで、さらに二時間。
定期的に糸(ライン)の確認をさせられ、その方向に間違いが無いことを確認した。
ようやく目的地に着いた頃にはかなり疲れていたが、これからが本番だ。
地形は相変わらず、岩場が幾重にも重なっている。
そんな中、ぽつんと、縦横二メルずつぐらいの大きな扉が存在した。
金属製で、全くさびが付いていない。
汚れており、古さは感じるものの、非常に丈夫そうな印象を受けた。
所々、小さな傷がついている。
「この扉、力ずくで開けることはできない。昨日も言ったように、強力な魔法がかけられている。爆破を試みた者さえいるようだが、小さな傷をつけるのが精一杯だったようだ」
「……でも、アクトは開けられるんでしょう?」
「ああ、特別な呪文を唱えればな……その前に、ミリア、周囲に誰かいないか調べられるか?」
「……強い魔法だと、逆に私達の場所を教えてしまう……弱い魔法なら、範囲と精度が落ちる……」
「……ならば、弱い魔法の方でいい。調べてくれ」
アクトがそう指示すると、ミリアは俺の方を見た。
彼女は、最終的には俺の指示にしか従わない。
俺が頷くと、彼女はごくわずかな動作で、探知の魔法を使ったようだった。
「……半径一キロ以内に、人はいない……ここに来るまでも、後をつけてくる者はいなかった……」
「……道中も調べてくれていたんだな……よかった、ありがとう。馬車を変えたのは正解だったな……」
俺はミリアに感謝し、そしてアクトの方を見た。
彼は頷くと、右手を扉にかざし、なにやら、ぼそりと呪文の様なものを呟いた。
重い金属が石の上を引きずられる音がして、扉がゆっくりと外側に開いてくる。
黒く、深い闇が続いているように見えた。
ランタンで前方を照らし、まずアクトが中に入る。俺達もそれに続いた。
入り口付近は意外と広く、ちょっとした石造りの広間のようになっていた。
「……俺達以外の誰かが入ってくると厄介だからな……扉は閉じておく」
彼は開けたときと同様、右手をかざして呪文を唱え、扉を閉めた。
この扉を開けられるのは、王族の血を濃く引く者だけだという。これで安心して探索を続ける事ができる。
アクトを先頭に、我々も続く。
ここは踏破済みの迷宮であり、罠もなく、魔物が出ることもないという。
高さ約二メル、幅は二人並んで歩けるぐらい。
足元は平坦で、歩きにくいことはない。
アクトが道を知っていたこともあり、また、糸も見えていたため、当初の準備が本当に必要だったのか、と思うほど順調に進む。
彼は、糸が複雑に入り組んだ迷宮の奥を指し示していることに、改めて驚嘆の声を上げていたが、俺達からすればそれはもう慣れたものだった。
この探索、案外楽に終わるかもしれない……そう楽天的に考えていたのだが、天上の高さが十メルを超えたところで、大きな門をくぐり、そこに存在した物を見て、俺達は声を失った。
「鉄製の人型巨兵器……百年前の討伐隊は、こいつを倒すために、七人もの騎士を亡くした……」
――死者が出た、というアクトのセリフに、危険だとは覚悟していたのに、俺も、おそらく他のメンバーも、戦慄した。
復活した太古の禁呪により闇の命を吹き込まれた、戦う事のみを義務づけられた存在。
今はもう動かぬ、巨大な黒鉄の殺戮兵器が、首と胴体、そして手足が分離された状態で転がっていた。
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