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一章 記憶と魔力の目覚め
獣王
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ソフィアたちが休憩して幾分か時間が経った。太陽は十五の時間を指す。
「そろそろ行きましょうか」
ソフィアがそう言うと、腰を上げる。その時だ。森中に獣の咆哮が轟いた。
「なんだ!?」
その咆哮はソフィアたちだけではなく、森に住む動物たちをも恐怖させた。まるでこの世の終わりだ。
ソフィアは「どうする?」とみんなに問いかけた。咆哮の主に会いに行くのか、行かないのか、だ。
「私は行ってみたい」
エレナが真っ先に声を上げた。
「ナタリーとレーナもそれでいい?」
エレナが確認をとると二人とも頷いている。
「わかったわ、なら行きましょう」
ソフィアたちは森の奥深くへと歩みを進めた。
しばらく歩いていると、黒い影が見えた。それは大きくて白い牙を持つ、狼のような獣だ。その体毛は白銀で、その目は紅い眼光を放っている。
「こんな化物一体どこに隠れてたの?」
獣と対峙している少女が言った。彼女はアメリア。ソフィアがクラスで一番興味を持っている生徒だ。彼女の後ろには傷を負った生徒が数人倒れている。彼女の班メンバーだろうか。
ソフィアは駆けた。彼女の班メンバーを助ける為だ。ソフィアは倒れた生徒の元へ駆け寄ると、二人の生徒を両脇に抱えながら帰って来た。
「大丈夫?」
ソフィアは二人の顔を、ぺちぺちと叩きながらそう問いかける。二人は意識はあるようで、小さく頷いた。その様子を見たソフィアは少し安心し、獣の方を向くと、アメリアたちが戦闘していた。しかし状況は芳しくなさそうだ。
「くっ……」
アメリアが苦戦しているのがわかる。その牙は鋭く尖っており、まともに食らえば致命傷になるだろう。そして何よりその俊敏性だ。まるで瞬間移動をしているかのように素早い動きで翻弄してくるのだ。
ソフィアは「今助けに行くわ」と言って走り出そうとした。しかしアメリア本人からは「大丈夫です」と返ってきた。
「あなた達が来ても足でまといにしかなりません」
アメリアはそう言い切る。
「だからそこで見ててください。それに私一人で十分です」
アメリアはそう続けた。しかしソフィアはその言葉を無視するようにして走り出そうとする。
その瞬間、ソフィアは後ろを振り返った。
「三人は負傷者の手当と、流れ弾から守ってちょうだい」
エレナ達は驚きながらも了承した。ソフィアはアメリアの所まで走って行くと、その横に並ぶ。そして獣を睨みつけた。
「私、大丈夫って言いましたよね」
「今はそんなこと言ってる場合じゃ無いでしょ。殺されちゃうかもしれないのよ」
ソフィアとアメリアはにらみ合うようにして言葉を交わす。アメリアが呆れ混じりのため息を吐くと、その獣の方を見つめた。
「わかりました。でもピンチになっても自分で何とかしてくださいね」
「もちろん」
そんな会話が終わると、ソフィアは両手に魔力を込める。アメリアは魔力を内側に込めていた。
その行動はソフィアでさえも知識として無いものだった。
「それは……」
ソフィアが問いかけると、アメリアは答える。
「これは私の奥の手です」
それは魔法と対になる力。スキルと呼ばれるものだ。魔力に依存する魔法とは異なり、スキルはその人自身の存在や魂が具現化した力だ。魔力の影響を受けず、持ち主の内なる力を源として発現するスキルは、まさにその者だけの固有の能力であり、世界に二つと同じものは存在しない。
「行くわよ」
ソフィアがそう呟くと同時に二人は駆け出した。アメリアは獣に向かって一直線に突き進む。そして獣がその鋭い牙で噛み付こうとする瞬間を狙い、その攻撃を避けると、そのまま拳を打ち込んだ。
アメリアの拳を頬に受け、狼はよろける。その攻撃は強化を使ったソフィアのそれと遜色ない。
しかしアメリアは即座に追撃をかける。今度は狼の横腹に回し蹴りを食らわせると、その巨体が吹き飛んだ。
ソフィアはその様子を見て「すごい……」と呟く。本当にソフィアの助けは要らなかったのかもしれない。
「これで最後!」
アメリアはそう言うと最後の力を振り絞ってスキルを発動させた。
更に攻撃力が増し、その体は狼にへと一直線で進んで行く。そしてその手刀が深々と胸に突き刺さった。
だが、手応えが無い。スライムのようなそんな不定形物質に手を埋めたような気持ち悪さだけが残る。
アメリアはそれに勘づいたのか、すぐ手を引こうとしたが、それが絡み付いて離れない。その粘性は少しずつアメリアの体に這い上がっていく。
「この……クッ……うっ……」
振りほどこうとするも、上手くいかない。もがけばもがく程、深く沈み込んで行くのだ。
ソフィアは状況を理解すると、アメリアに絡みついた獣の粘液を剥がす。そしてそれを投げ飛ばした。しかしそれほど有効打にはならなかったようで、すぐに振り出しに戻っている。
「うっ……うぐっ……」
顔付近まで粘液が上がってきてしまった。まるでそれには知性があるのか、徐々にアメリアの口の方へと進んでいく。
そしてそのまま飲み込むように顔にまとわりついた。
全身が完全に飲み込まれてしまう。ソフィアが引き離そうとするも、どこまでが獣でどこまでがアメリアなのか分からない。
「ダメっ!」
ソフィアは思わずそう叫んでいた。
アメリアを完全に飲み込んだそれは、ぐにゃぐにゃと蠢いている。
蠢きながらそれは徐々に小さくなっていた。
その不定物質は人影を型どり始めた。二人分だ。一人とそいつがもう一人の首を掴み持ち上げている。
勿論持ち上げられているのはアメリアだ。持ち上げているのは、狼の耳を持った獣人。先程までの魔物だろう。
「まずい……止めなきゃ」
ソフィアはその姿を認識するとすぐに走りだした。獣人がアメリアの首を絞め始めたからだ。早くしなきゃ命は無いだろう。ソフィアは必死に走った。
「業火」
極大の炎が飛んで行き、獣人の頬に直撃した。
「へぇ私に楯突くやつがまだ居たとはねぇ」
獣人がソフィアの方向へと不気味なぐらい不自然に向き直る。その目には殺意が宿っている。
「ああ、いい事思い付いた。あんた達私に二人で挑みなさい」
獣人はパァっと顔を光らせるとそう提案した。
「いいわよ。その代わり私達が勝ったら大人しく引き下がりなさいよね」
ソフィアはそう答えると、獣人は了承したのか、アメリアから力を抜き、こちらに投げ飛ばしてきた。ソフィアが魔法で威力を弱め、そして強化を使い距離を詰める。
一直線に進むそれは、獣人に片手で容易く止められる。
ソフィアは掴まれた方の手の中で爆発を発動し、自分の手ごと吹き飛ばして逃れた。そしてそのまま空中で一回転し獣人に蹴りを入れる。しかしそれも片手で受け止められる。
「なかなかやるね」
ソフィアはもう一度距離を詰めると、今度は強化を使って連撃を繰り出す。しかしその全てを軽々と防がれてしまう。それどころかカウンターを食らいそうになるも、間一髪で避けることが出来た。
「へぇ~避けれるんだ」
獣人は感心したように呟くと、また攻撃を仕掛けてきた。それをなんとか受け流すと、距離を取る為に後ろに飛び退く。
「でも油断しちゃダメだよ」
一瞬にしてソフィアにまで肉薄してきた彼女はソフィアの脚を掴み、投げ飛ばす。こちらに向かって来ていたアメリアとぶつかる。二人とも重なりながら飛んで行った。
地面に手を付き勢いを殺す。
「あなたは他の人を連れて逃げてください。私が引き付けます」
「何言ってるのよ。私よ一緒に戦うに決まってるじゃない」
ソフィア達は向き直る。また、アメリアが内側に魔力を溜める。
赤い長髪が更に赤くなり、燃え上がる。全ての身体能力が増幅した。
「これが本当の奥の手です。あなたも巻き込んでしまうかもしれない。だからお願いします」
「嫌よ。それに私はあなたに言われた通り自分の身は自分で守るから」
ソフィアが聞かないことを悟ったのかアメリアは了承した。
「分かりました。どうなっても知りませんよ」
アメリアが動く。ソフィアにも捉えきれない速度で走った。唯一、その抉れた様な跡と、炎が彼女の通り道を示している。
速度は完全に互角だった。ソフィアの目には映らないが拮抗していることだけは分かる。
だがそれも一瞬だけだ。
「うーん。私に近付いたと思ったけど、少しの間だけね」
獣人がアメリアの腹を手で貫いていた。
「そろそろ行きましょうか」
ソフィアがそう言うと、腰を上げる。その時だ。森中に獣の咆哮が轟いた。
「なんだ!?」
その咆哮はソフィアたちだけではなく、森に住む動物たちをも恐怖させた。まるでこの世の終わりだ。
ソフィアは「どうする?」とみんなに問いかけた。咆哮の主に会いに行くのか、行かないのか、だ。
「私は行ってみたい」
エレナが真っ先に声を上げた。
「ナタリーとレーナもそれでいい?」
エレナが確認をとると二人とも頷いている。
「わかったわ、なら行きましょう」
ソフィアたちは森の奥深くへと歩みを進めた。
しばらく歩いていると、黒い影が見えた。それは大きくて白い牙を持つ、狼のような獣だ。その体毛は白銀で、その目は紅い眼光を放っている。
「こんな化物一体どこに隠れてたの?」
獣と対峙している少女が言った。彼女はアメリア。ソフィアがクラスで一番興味を持っている生徒だ。彼女の後ろには傷を負った生徒が数人倒れている。彼女の班メンバーだろうか。
ソフィアは駆けた。彼女の班メンバーを助ける為だ。ソフィアは倒れた生徒の元へ駆け寄ると、二人の生徒を両脇に抱えながら帰って来た。
「大丈夫?」
ソフィアは二人の顔を、ぺちぺちと叩きながらそう問いかける。二人は意識はあるようで、小さく頷いた。その様子を見たソフィアは少し安心し、獣の方を向くと、アメリアたちが戦闘していた。しかし状況は芳しくなさそうだ。
「くっ……」
アメリアが苦戦しているのがわかる。その牙は鋭く尖っており、まともに食らえば致命傷になるだろう。そして何よりその俊敏性だ。まるで瞬間移動をしているかのように素早い動きで翻弄してくるのだ。
ソフィアは「今助けに行くわ」と言って走り出そうとした。しかしアメリア本人からは「大丈夫です」と返ってきた。
「あなた達が来ても足でまといにしかなりません」
アメリアはそう言い切る。
「だからそこで見ててください。それに私一人で十分です」
アメリアはそう続けた。しかしソフィアはその言葉を無視するようにして走り出そうとする。
その瞬間、ソフィアは後ろを振り返った。
「三人は負傷者の手当と、流れ弾から守ってちょうだい」
エレナ達は驚きながらも了承した。ソフィアはアメリアの所まで走って行くと、その横に並ぶ。そして獣を睨みつけた。
「私、大丈夫って言いましたよね」
「今はそんなこと言ってる場合じゃ無いでしょ。殺されちゃうかもしれないのよ」
ソフィアとアメリアはにらみ合うようにして言葉を交わす。アメリアが呆れ混じりのため息を吐くと、その獣の方を見つめた。
「わかりました。でもピンチになっても自分で何とかしてくださいね」
「もちろん」
そんな会話が終わると、ソフィアは両手に魔力を込める。アメリアは魔力を内側に込めていた。
その行動はソフィアでさえも知識として無いものだった。
「それは……」
ソフィアが問いかけると、アメリアは答える。
「これは私の奥の手です」
それは魔法と対になる力。スキルと呼ばれるものだ。魔力に依存する魔法とは異なり、スキルはその人自身の存在や魂が具現化した力だ。魔力の影響を受けず、持ち主の内なる力を源として発現するスキルは、まさにその者だけの固有の能力であり、世界に二つと同じものは存在しない。
「行くわよ」
ソフィアがそう呟くと同時に二人は駆け出した。アメリアは獣に向かって一直線に突き進む。そして獣がその鋭い牙で噛み付こうとする瞬間を狙い、その攻撃を避けると、そのまま拳を打ち込んだ。
アメリアの拳を頬に受け、狼はよろける。その攻撃は強化を使ったソフィアのそれと遜色ない。
しかしアメリアは即座に追撃をかける。今度は狼の横腹に回し蹴りを食らわせると、その巨体が吹き飛んだ。
ソフィアはその様子を見て「すごい……」と呟く。本当にソフィアの助けは要らなかったのかもしれない。
「これで最後!」
アメリアはそう言うと最後の力を振り絞ってスキルを発動させた。
更に攻撃力が増し、その体は狼にへと一直線で進んで行く。そしてその手刀が深々と胸に突き刺さった。
だが、手応えが無い。スライムのようなそんな不定形物質に手を埋めたような気持ち悪さだけが残る。
アメリアはそれに勘づいたのか、すぐ手を引こうとしたが、それが絡み付いて離れない。その粘性は少しずつアメリアの体に這い上がっていく。
「この……クッ……うっ……」
振りほどこうとするも、上手くいかない。もがけばもがく程、深く沈み込んで行くのだ。
ソフィアは状況を理解すると、アメリアに絡みついた獣の粘液を剥がす。そしてそれを投げ飛ばした。しかしそれほど有効打にはならなかったようで、すぐに振り出しに戻っている。
「うっ……うぐっ……」
顔付近まで粘液が上がってきてしまった。まるでそれには知性があるのか、徐々にアメリアの口の方へと進んでいく。
そしてそのまま飲み込むように顔にまとわりついた。
全身が完全に飲み込まれてしまう。ソフィアが引き離そうとするも、どこまでが獣でどこまでがアメリアなのか分からない。
「ダメっ!」
ソフィアは思わずそう叫んでいた。
アメリアを完全に飲み込んだそれは、ぐにゃぐにゃと蠢いている。
蠢きながらそれは徐々に小さくなっていた。
その不定物質は人影を型どり始めた。二人分だ。一人とそいつがもう一人の首を掴み持ち上げている。
勿論持ち上げられているのはアメリアだ。持ち上げているのは、狼の耳を持った獣人。先程までの魔物だろう。
「まずい……止めなきゃ」
ソフィアはその姿を認識するとすぐに走りだした。獣人がアメリアの首を絞め始めたからだ。早くしなきゃ命は無いだろう。ソフィアは必死に走った。
「業火」
極大の炎が飛んで行き、獣人の頬に直撃した。
「へぇ私に楯突くやつがまだ居たとはねぇ」
獣人がソフィアの方向へと不気味なぐらい不自然に向き直る。その目には殺意が宿っている。
「ああ、いい事思い付いた。あんた達私に二人で挑みなさい」
獣人はパァっと顔を光らせるとそう提案した。
「いいわよ。その代わり私達が勝ったら大人しく引き下がりなさいよね」
ソフィアはそう答えると、獣人は了承したのか、アメリアから力を抜き、こちらに投げ飛ばしてきた。ソフィアが魔法で威力を弱め、そして強化を使い距離を詰める。
一直線に進むそれは、獣人に片手で容易く止められる。
ソフィアは掴まれた方の手の中で爆発を発動し、自分の手ごと吹き飛ばして逃れた。そしてそのまま空中で一回転し獣人に蹴りを入れる。しかしそれも片手で受け止められる。
「なかなかやるね」
ソフィアはもう一度距離を詰めると、今度は強化を使って連撃を繰り出す。しかしその全てを軽々と防がれてしまう。それどころかカウンターを食らいそうになるも、間一髪で避けることが出来た。
「へぇ~避けれるんだ」
獣人は感心したように呟くと、また攻撃を仕掛けてきた。それをなんとか受け流すと、距離を取る為に後ろに飛び退く。
「でも油断しちゃダメだよ」
一瞬にしてソフィアにまで肉薄してきた彼女はソフィアの脚を掴み、投げ飛ばす。こちらに向かって来ていたアメリアとぶつかる。二人とも重なりながら飛んで行った。
地面に手を付き勢いを殺す。
「あなたは他の人を連れて逃げてください。私が引き付けます」
「何言ってるのよ。私よ一緒に戦うに決まってるじゃない」
ソフィア達は向き直る。また、アメリアが内側に魔力を溜める。
赤い長髪が更に赤くなり、燃え上がる。全ての身体能力が増幅した。
「これが本当の奥の手です。あなたも巻き込んでしまうかもしれない。だからお願いします」
「嫌よ。それに私はあなたに言われた通り自分の身は自分で守るから」
ソフィアが聞かないことを悟ったのかアメリアは了承した。
「分かりました。どうなっても知りませんよ」
アメリアが動く。ソフィアにも捉えきれない速度で走った。唯一、その抉れた様な跡と、炎が彼女の通り道を示している。
速度は完全に互角だった。ソフィアの目には映らないが拮抗していることだけは分かる。
だがそれも一瞬だけだ。
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