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第1章・『姫君を狙う者』:ウィーテネ編

#22. 日本のワイバーン?

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 どうしてこうなったのか……。
 仕事を頑張った褒美として総理が日本へ帰るまでのほんの少しの間ヘリでの休息がもらえた。
 パイロットとして来た先輩に代わってもらいヘリでの留守番を任されたのだ。

 気持ち良く眠って居たら何故か音声アナウンスが流れ勝手に入口が開かれ、そこにはこの国のお姫様が立っていた。
 どうしてこんな所にわざわざお姫様連れて来たのか……。

わたくしべっ、別にワイバーンになんて興味ありませんわっ!!』
「姫様お願いしますよ!!1人じゃ怖くてボクが入れ無いんですよ!」
『貴様は従者として姫様の行動通りに従え!!』

『そんな事言われましても私……』
 入口の前でよく分からない会話を繰り広げている3人。

『姫様、確か彼は翻訳指輪を所持しておりません』
「そうなんですか?ちょっと待ってて下さい!ボクのを貸しますから」

 姫様と話をしているのは潰れた兜を被っており顔は分からないけど声からして誰だか分かった。
 どうして姫様と一緒に居るのか?新米兵士として見回りをするって言ったのに……。

 わざわざそこまでする必要があるのか分かりませんが、私の目の前で片膝を付き左手の薬指に自分が付けていた指輪をはめ込む。
 少し……いえ、かなり照れますね……。

「このワイバーンって生き物じゃ無いですよね?どうやって飛んでるんですか?中に入って大丈夫なんですか?え……っと、いち、に……ぃ、……さん。大人3人で」
 まるで飲食店にでも入るかの様にわざとらしく人数を数える。

「…………3名様ですね?かしこまりましたぁ~!それでは空の旅にご案内致しまぁす!因みに~?こちら、生物ではござぁません!?安心してお乗り下さいませぇ!」
 ここで姫様の機嫌を損ね今後日本、世界との良好な関係を築けなくなるかもしれないと考え恥を捨てるも、これではアトラクションだ。

「姫様!!何て言ってるか分かんないですけど、乗って良いみたいですって!!」
『分かんないのに断言するな!どこから来るんだその自信は……』

『しっ、仕方ありませんわね!そこまでお願いされたら乗ってあげない事も無くってよ!』
「ねぇ?姫様そこをお願いしますよぉ~」
『いや!姫様の言葉は全然理解できて無いのか!?』
 軽い漫才を見せられ3人が仲良しである事を見せつけられる。
 『話して無いでさっさと乗れよ後ろがつっかえてんだろ?』なぁ~んて従業員だったら思うのだろうか?

 言葉では通じないと判断したのか姫様は自ら進んでヘリの中へ歩いて入る。
『ここが異世界ですわね?』
 違いますが……。

「わっ!!姫様やっさしぃ!!」
『べっ、別にこれ位普通ですわよ!!』
 そしてその褒め言葉に満更でも無い姫様。
 聞いていた姫様の噂と違いたった1日でとても仲良くなっている。

「わぁ~~!!広い!!凄ぉ~い!!中綺麗!!靴って脱いだ方が良いですか!?それとも服って脱いだ方が良いですか!?」
『綺麗なのは中身だけで無く外見もですよ!!室内では靴を脱いで下さいね?服も脱いでくれたら嬉しいです!』
「ふふっ、とおぉっても元気な男の子だっ!ウチのHeriがつい反応しちゃったね!?うんっ、靴は脱い欲しいかな?でも!服は脱がなくても結構だぁ!」

 機会を通しての音声は翻訳指輪を付けていても翻訳されない。
 二度手間になってしまうけど繰り返し言い自分が靴を脱いで先に上がって見せる。

「うっわこのすっごい椅子ふっかふかですよ!姫様も座ってみて下さいよ!!」
『はしたないわね。少し静かにして下さる?………………早くどきなさいよ!』
 と言いつつも室内のソファが気になる様でどくのを待って居る。

「あの~?トイレってあったりします?流石に無いですよね?」
『流石に私の中にはトイレは備えて……あっ、そこの通路の右側の部屋の中です』
「Hey Heri少しの間静かにして?トイレはそこの通路の右の部屋です」
 トイレだったり姫様のご機嫌取りや機械音声、3人?を同時に相手にするのは少し疲れる。大人しくしてくれている副騎士団長さんが非常に有難い。

『これが本当に飛びますの?』
「はい。基本的には自動運転ですので決まったボタンを押すと簡単に飛びます」

『この子は飛ばしてもらえますの?』
「大丈夫ですよ」
 掛け声と共にボタンを押す。

「それでは空の旅に出発致しまぁ~す!張り切ってまいりましょう!」
『…………えっ?これって飛んでますの?』
 窓から見える地面が少し離れた事でここでようやく宙に浮い居る事に気が付く。
 全く揺れないヘリコプターに驚居ている。
 自分が作った訳では無くても日本の技術を褒められるのは嬉しいですね。

「はい、機内は外との防音機能は勿論、エアー断震システムにより部屋が空気によって浮く事で伝わる揺れを軽減しているのです」
『……よく分かりませんが凄いですね……』
『えぇ……』

 異世界では化学があまり進歩していないのか、それとも異世界には無い言葉を使って翻訳され無かったのか2人は少し理解ができて居ない様子。
 私も特段詳しく無く代わりにこのヘリが答えてくれるけど少しめんどくさいので辞めておく。

『おい!変態。あまりこの島からは離れるな!この国は島の周囲を覆う魔断膜により魔力を一切外に通さない。この速さでその壁を通過したら私達はこのワイバーンと壁によって潰されてしまう』
「分かりました。なるべく遠くには行かない様にしますね」
 副騎士団長はこのヘリコプターのあまりの速さにビビったのか遠くには行きたく無いらしい。
 ……なんで私が変態だってバレたのか……。

「どうかしたんですか?ボクだけ言葉通じないの嫌なんですけど……」
 トイレから帰って来ると今更1人だけ翻訳指輪を付かて居ない事に不満を漏らす。
『私達の身体には魔力が流れており、島の外に出れないんだ』
 服騎士団長のイルァは彼の手を取り言葉を翻訳する。
 互いに指輪に触れている事で相手の言葉が翻訳されるらしい。
 少し羨ましいな是非その隣を代わってもらいたいと思うのは心の中だけにしておきましょう。

「そう言えば君ってワイバーンと戦って勝ったんですよね?」
「えっ?あっ、はい!……そう、ですね。このヘリから落ちてワイバーンにぶつかっただけですけどね……」

「それってどの辺かって分かったりするんですか?」
「流石に空に目印は付けられ無いので分からない、ですね」

「そうなんですね……このワイバーンがどう飛んだかなんて覚えて無いですしね……」
「……いえ、飛行ルートが記録されて居ますし実際に通った不自然なルートから算出すれば位置情報は分かります」
 更にドライブレコーダーで記録されたワイバーンが映し出された時間を合わせればワイバーンを発見した位置が完全に判明できる。

『……そんな事してどうするのだ?』
「えっ?行けるギリギリの所まで飛んでみたく無いですか?」
『し、仕方ありませんわね……この兵の言う通りにして下さいます?』

「Hey!ありがとうございます!!」
 姫様も少しでも遠くまで飛びたいのか口角が少し上がっていた。

「……では、少しゆっくり飛びますね」
 と言っても操縦はできないので───。

「Hey Heri少しゆっくり飛んで」
 ヘリコプターは速度を落としホバリング気味に空を飛んだ。

「返事だけはしても良いですよ?」
『りょぉぉぉかいしました!速度を落としますねっ!』
 音声で自動運転ができる為、返事をしてくれないと切り替えてくれているのかこっちとしては分かりにくいのが困る。

 そのまま見えない壁の近くまで行きすっかり日も沈んで来た事で直ぐに引き返した。

 日本人滞在期間も残り1日になった。

 日本人が帰るのが明日の昼と考えると姫様を狙う者が本腰を入れるのは今夜である。
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