6 / 11
頭が怖い
しおりを挟む
「一汁一菜」
そうは言うものの、一人暮らしを始めてからは、味噌汁は作らない。
代わりに麦茶を飲んでご飯を食べる。私にとっては、麦茶は一年中欠かせない。寝付きが悪い私はあまりカフェイン摂取が出来ないのだ。
他に何人か人間がいるなら味噌汁を作るだろうが、一人暮らしだと面倒だ。今の私は、外食以外では味噌汁を飲まない。
「頭、かゆいなぁ」
私は子供の頃、苦手な味噌汁があった。今は亡き母の手料理はたいていは好きだったが、あの二つだけは我慢ならぬものだった。
鮭のアラの味噌汁、そしてタチの味噌汁だ。
鮭のアラ、それも特に頭。目が怖い。そうでなくても、私は魚の頭が怖いのだ。だから、いまだに魚をさばけない。
タチとは、スケソウダラの白子だが、これが実に脳味噌に酷似したおぞましい姿形をしている。私は、これらの味噌汁の具を食べられずに残していた。
「なんて贅沢な」
そう非難されるのは百も承知。私は魚卵と白子が大嫌いなのだ。匂いを嗅ぐだけでも耐えられない。
社会人になってから、ある清掃会社に就職した私は、ある大学の医学部の解剖室の掃除の仕事をした事があるが、一緒に作業していた別の会社の人が気分を悪くして早退した。そのものズバリ、脳味噌の標本があったのだ。もう、あの会社には戻りたくない。もちろん、クビになった理由は他にあるけどね。
「全く、絵に描いたようなブラック企業だったよ。社長は新人さんと不倫していたし、課長らのパワハラモラハラもヒドかったし」
それはさておき、とにかく私は魚の頭が怖い。脳味噌みたいなタチも怖い。そういえば、今の私は頭皮がボコボコしている。近所の美容室でシャンプーしてもらい、自分の頭皮がどのようになっているのか訊いてみたけど、特に問題はないらしい。だけど、どうもボコボコが気になる。
昨日見た夢では、私は髪の毛が全部抜けて、頭皮が脳味噌の表面みたいにねじれていて気持ち悪かった。起きたのは、午前三時。中途半端な時間に起き、トイレに行き、再び布団に潜り込む。なかなか寝付けず悶々とし、六時過ぎ。
私は適当に昨日の残り物をおかずにしてご飯を食べ、仕事場に行った。今の職場の空気は悪くない。
「柴田さん、お昼食べに行こ」
「はーい」
昼休み、私は牛丼屋で牛丼を注文する。今の私はここで味噌汁を飲む。大丈夫、目玉も脳味噌も入っていない。私は牛丼を平らげ、ワカメの味噌汁を飲み干して店を出た。
札幌もだんだんと暖かくなっていく。花見シーズンはまだまだ先だが、今年も円山公園をぶらつこう。ジンギスカンの匂いを嗅ぎながら。
そうは言うものの、一人暮らしを始めてからは、味噌汁は作らない。
代わりに麦茶を飲んでご飯を食べる。私にとっては、麦茶は一年中欠かせない。寝付きが悪い私はあまりカフェイン摂取が出来ないのだ。
他に何人か人間がいるなら味噌汁を作るだろうが、一人暮らしだと面倒だ。今の私は、外食以外では味噌汁を飲まない。
「頭、かゆいなぁ」
私は子供の頃、苦手な味噌汁があった。今は亡き母の手料理はたいていは好きだったが、あの二つだけは我慢ならぬものだった。
鮭のアラの味噌汁、そしてタチの味噌汁だ。
鮭のアラ、それも特に頭。目が怖い。そうでなくても、私は魚の頭が怖いのだ。だから、いまだに魚をさばけない。
タチとは、スケソウダラの白子だが、これが実に脳味噌に酷似したおぞましい姿形をしている。私は、これらの味噌汁の具を食べられずに残していた。
「なんて贅沢な」
そう非難されるのは百も承知。私は魚卵と白子が大嫌いなのだ。匂いを嗅ぐだけでも耐えられない。
社会人になってから、ある清掃会社に就職した私は、ある大学の医学部の解剖室の掃除の仕事をした事があるが、一緒に作業していた別の会社の人が気分を悪くして早退した。そのものズバリ、脳味噌の標本があったのだ。もう、あの会社には戻りたくない。もちろん、クビになった理由は他にあるけどね。
「全く、絵に描いたようなブラック企業だったよ。社長は新人さんと不倫していたし、課長らのパワハラモラハラもヒドかったし」
それはさておき、とにかく私は魚の頭が怖い。脳味噌みたいなタチも怖い。そういえば、今の私は頭皮がボコボコしている。近所の美容室でシャンプーしてもらい、自分の頭皮がどのようになっているのか訊いてみたけど、特に問題はないらしい。だけど、どうもボコボコが気になる。
昨日見た夢では、私は髪の毛が全部抜けて、頭皮が脳味噌の表面みたいにねじれていて気持ち悪かった。起きたのは、午前三時。中途半端な時間に起き、トイレに行き、再び布団に潜り込む。なかなか寝付けず悶々とし、六時過ぎ。
私は適当に昨日の残り物をおかずにしてご飯を食べ、仕事場に行った。今の職場の空気は悪くない。
「柴田さん、お昼食べに行こ」
「はーい」
昼休み、私は牛丼屋で牛丼を注文する。今の私はここで味噌汁を飲む。大丈夫、目玉も脳味噌も入っていない。私は牛丼を平らげ、ワカメの味噌汁を飲み干して店を出た。
札幌もだんだんと暖かくなっていく。花見シーズンはまだまだ先だが、今年も円山公園をぶらつこう。ジンギスカンの匂いを嗅ぎながら。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
還暦の性 若い彼との恋愛模様
MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。
そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。
その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。
全7話
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる