青、渋滞。白、崩れさる。

茶茶

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ホテルと男

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次の日。

俺たちは大きなホテルを見上げていた。

横にも縦にも伸び、その姿はさながらお城のようだった。

庭の中央には噴水があり、ライトアップされていた。光の粒子が滑らかな水を照らし、煉瓦でつくられた花壇には、様々な花が咲き誇っている。丁寧に育て上げられたことが目に見えて分かった。

ドアには立派なドアマンが二人立っている。背筋をぴんとのび、真っ赤な制服が良く似合っていた。だけどその姿はどこかしら胡散臭く感じさせた。

客は皆車から降り、スーツやワンピースを着て優雅に歩いていた。

徒歩で、しかもドレスコードなんぞ一つも守ってない俺たちをドアマンも、その他の客も従業員も不審な目で見ていた。
涼介はというと、いつも通り、チュッパチャップスをなめながら鼻歌を歌っている。そんな涼介を見ていると、ひとり緊張しているのが馬鹿らしくなった。

受付で名前と号室を伝えると、カードキーを渡してくれた。背中に纏わりつくみんなの目線を気にしながらも、エレベーターに乗った。

エレベーターのドアを閉めようとすると、背ばかりが高くてやせぎすの男と若くて豊満な女性が乗ってきた。

強い匂いの香水が鼻をかすめ、むせてしまいそうだった。ふたりは、俺たちを舐るように見た後、目をわせ、意味ありげに粘っこく笑った。

おれは、不愉快に思いながらもなるべく二人を見ないように壁をじっと見つめていた。後ろから、小さく、がりっと飴をかみしめる音が聞えた。

目的の階にエレベーターがついた。逃げるように俺は降りる。ドアが閉まるまで、背中のべたりとした視線はなかなか拭えなかった。

部屋番号を見ながら廊下をあるく。

ふわふわの赤いじゅうたんは慣れなくてすごく歩きにくかった。

暖かいオレンジのランプがほのかに闇を照らしている。

いちさんぜろごーと心の中でくりかえし呟く。

長い廊下を三分ほど歩いたところにそれはあった。

俺はドアに耳をつけて少しでも音を拾おうとした。しかし、防音がしっかりされているのか、何一つ聞こえない。ただ、俺の心臓がうるさく鳴り響いているのがわかる。

俺がふうっと息をついて、覚悟を決め、ドアノブに手を伸ばそうとしたその瞬間、涼介がなんの躊躇もなくドアノブをがちゃりとひねった。

 ドアは開ているのに涼介はドアの前からから歩こうとせず、ただ、目の前の風景をぼぉっと見ていた。目の前の状況を理解するように。

俺は、涼介の背中で何も見えない。ただ、はぁはぁという息遣いとベッドが軋む音が耳に飛び込む。

その時、再び涼介が飴を噛み砕く音が聞こえた。

「いらっしゃい。中に入って」低い、男の声。

涼介はやっとのことで中まで入った。

清潔で豪奢な広い部屋にネオン街を一望できる景色、そして広いベッドの上であけっぴろげにセックスをする男二人。

ベッドの周りにはいろんなおもちゃが散らばっていた。

その横で二人の情事を見て楽しむ五十代半ばの男が椅子に座っていた。
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