24 / 117
大都市を目指して
新たな景色
しおりを挟む
ノエラも加わって二人になったため、【闇の加護】ではなく【闇の感知】を使って魔物を避けながら進む作戦にする。ツリーハウスを拠点に魔物を狩り続けたおかげか、進み始めの気配はかなり少なかった。
そうしてツリーハウスから北に向かって安全に進むこと数時間ほどか、徐々に景色が変わってきて遠くから川の流れる音が聞こえてきた。微かだが確実に水のせせらぎの音だ。
「川に近付いてきたみたいだな」
「そうみたいですね。シビルさんは確かこの先にデリサイ水郷があると言っていたと思います」
「足場が悪くなるかもしれないな。滑らないように気を付けて進もう」
しばらく高木が多い森の中を進み、枝を避けながら草花で隠れた段差に注意していると、ほんの少しずつだけ景色がまた変わってくる。ノエラのいた村からシビルのツリーハウスまでの変化も相当なものだったが、ここからもまた大きな変化がやってくる予感だ。
それはさらに大きくなってくる水音からも明らかで、俺たちはついに川を発見することになる。川と言っても本流から分岐した小川ではあるのだが、そうなってくると水が豊富にあるおかげか巨大な木も多くなってくる。
人間三人分ほどの大きさの幹も現れ始め、やはりここは元の世界とは違うのだと実感させられた。
「でっかい木だな。見上げても天辺がまるで見えないよ」
「大きな木もそうですけど、ここに花も咲いてますよ」
「おお、本当だ。オレンジ色の花か。こっちにはピンクの花もあるぞ」
そうやって自然の産物を楽しんでいると、唐突に魔物の悪意が近づいた。俺はノエラに静かに声をかけて隠れる。大きな木の幹に身を潜めて魔物が過ぎ去るのを待つ。むむ、かなり近い。なのに姿が見えないのはおかしいな……。そう思っていると突如真上に悪意が蠢く。
「サム様、上です!」
アンヘルもそれを教えてくれるが、魔物はもう俺たちを視認しており襲いかからんとしていた。こいつは鳥型の魔物、イボンだ。食用肉にもなる相手だが、俺の奇跡とは若干相性が悪いな。飛び回られるとなかなか面倒だから広範囲の奇跡で無理やり巻き込むか。
そうして作戦を考えていると、ノエラがおもむろに精霊魔法の詠唱を始める。
『流れる風。惑い、空舞う陰りに地の安息を』
ノエラが祈るように組んだ手が薄緑色に光り、真上を飛んでいたイボンも同じく光に包まれて、飛行を維持できずに地面に墜落した。俺はそれに追撃を仕掛ける。
【黒き排除】
そうするとイボンは新鮮な食肉へと早変わりする。俺はそれを【闇の領域】に入れて、ノエラを労う意味を込めて彼女にほほ笑んだ。ノエラはそれに小さく応えてくれる。
「助かったよノエラ。もうそんなに精霊魔法を使えるんだな!」
「師匠が良かったものですから」
「いや、これはノエラの実力だって。これは俺も楽ができそうだな」
「はい。サムさんをできるだけ煩わせないように頑張ります」
「煩わしいなんてことは絶対にないからどんどん頼ってくれていいんだけどな。とはいえこれからもよろしく頼むよ」
「こちらこそ、引き続きよろしくお願いします」
そこからさらに奥に行くと、本流と思われる川が目前に現れた。渡るのに手間取るかもとは思っていたのだが、実際は特に問題もなく渡れそうだ。
その川は窪みに沿って流れており、さらに人が渡れるように丸太の橋が架かっている。きっと誰かがここを通るために架けたのだろうが、俺たちもその恩恵にあずかることができた。
丸太の橋ということもあって滑ったり転がったりしないか心配だったが無事に二人とも渡り切れて安心した。ちなみにアンヘルは空を飛べるから足場の問題は関係がない。空飛べるって羨ましいな。
そうしてツリーハウスから北に向かって安全に進むこと数時間ほどか、徐々に景色が変わってきて遠くから川の流れる音が聞こえてきた。微かだが確実に水のせせらぎの音だ。
「川に近付いてきたみたいだな」
「そうみたいですね。シビルさんは確かこの先にデリサイ水郷があると言っていたと思います」
「足場が悪くなるかもしれないな。滑らないように気を付けて進もう」
しばらく高木が多い森の中を進み、枝を避けながら草花で隠れた段差に注意していると、ほんの少しずつだけ景色がまた変わってくる。ノエラのいた村からシビルのツリーハウスまでの変化も相当なものだったが、ここからもまた大きな変化がやってくる予感だ。
それはさらに大きくなってくる水音からも明らかで、俺たちはついに川を発見することになる。川と言っても本流から分岐した小川ではあるのだが、そうなってくると水が豊富にあるおかげか巨大な木も多くなってくる。
人間三人分ほどの大きさの幹も現れ始め、やはりここは元の世界とは違うのだと実感させられた。
「でっかい木だな。見上げても天辺がまるで見えないよ」
「大きな木もそうですけど、ここに花も咲いてますよ」
「おお、本当だ。オレンジ色の花か。こっちにはピンクの花もあるぞ」
そうやって自然の産物を楽しんでいると、唐突に魔物の悪意が近づいた。俺はノエラに静かに声をかけて隠れる。大きな木の幹に身を潜めて魔物が過ぎ去るのを待つ。むむ、かなり近い。なのに姿が見えないのはおかしいな……。そう思っていると突如真上に悪意が蠢く。
「サム様、上です!」
アンヘルもそれを教えてくれるが、魔物はもう俺たちを視認しており襲いかからんとしていた。こいつは鳥型の魔物、イボンだ。食用肉にもなる相手だが、俺の奇跡とは若干相性が悪いな。飛び回られるとなかなか面倒だから広範囲の奇跡で無理やり巻き込むか。
そうして作戦を考えていると、ノエラがおもむろに精霊魔法の詠唱を始める。
『流れる風。惑い、空舞う陰りに地の安息を』
ノエラが祈るように組んだ手が薄緑色に光り、真上を飛んでいたイボンも同じく光に包まれて、飛行を維持できずに地面に墜落した。俺はそれに追撃を仕掛ける。
【黒き排除】
そうするとイボンは新鮮な食肉へと早変わりする。俺はそれを【闇の領域】に入れて、ノエラを労う意味を込めて彼女にほほ笑んだ。ノエラはそれに小さく応えてくれる。
「助かったよノエラ。もうそんなに精霊魔法を使えるんだな!」
「師匠が良かったものですから」
「いや、これはノエラの実力だって。これは俺も楽ができそうだな」
「はい。サムさんをできるだけ煩わせないように頑張ります」
「煩わしいなんてことは絶対にないからどんどん頼ってくれていいんだけどな。とはいえこれからもよろしく頼むよ」
「こちらこそ、引き続きよろしくお願いします」
そこからさらに奥に行くと、本流と思われる川が目前に現れた。渡るのに手間取るかもとは思っていたのだが、実際は特に問題もなく渡れそうだ。
その川は窪みに沿って流れており、さらに人が渡れるように丸太の橋が架かっている。きっと誰かがここを通るために架けたのだろうが、俺たちもその恩恵にあずかることができた。
丸太の橋ということもあって滑ったり転がったりしないか心配だったが無事に二人とも渡り切れて安心した。ちなみにアンヘルは空を飛べるから足場の問題は関係がない。空飛べるって羨ましいな。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
チート魅了スキルで始まる、美少女たちとの異世界ハーレム生活
仙道
ファンタジー
ごく普通の会社員だった佐々木健太は、異世界へ転移してして、あらゆる女性を無条件に魅了するチート能力を手にする。
彼はこの能力で、女騎士セシリア、ギルド受付嬢リリア、幼女ルナ、踊り子エリスといった魅力的な女性たちと出会い、絆を深めていく。
異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~
於田縫紀
ファンタジー
図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。
その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる