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買い物デート
防具屋
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さっきの話にあった通り、甲殻を売る手筈を整えてもらっているので防具屋に一直線に向かう。もうすぐお昼頃なので早足で急ぐと、店員が言っていた『スティル防具店』に着いた。
武器屋とは違ってここには工房らしきものがない。それを見るに、恐らく他の場所で作った防具をここに運び込んで売っているのだろう。
店に入ると幾つもの人形が置かれており、それに防具を着せてある。衣服のようにセットにして売られている防具も多数見受けられ、意外と儲かりそうな商売だなと思った。
ここも武器屋同様色々見て回りたい衝動に駆られるが、あんまりウロウロしていると昼食を食べ損ねそうなので空いているカウンターへと向かった。
対応してくれたのはカールのかかった髪の男の人。色黒で見るからに鍛えていそうな体つきの人だ。他に従業員がいなさそうなので、もしかしたらこの人が店主かもしれない。
「雑貨店から話を聞いてるかな? ブブヨグランガムの甲殻を売りたいんだけど大丈夫そうか?」
「ああ、話は聞いてるよ。早速品を見せてくれ」
このあたりの店には珍しく敬語を使ってこない。やっぱり偉い人なのかな? でも俺はそんなの気にしないし、むしろお互い敬語で話さない方が普通な感じがするな。
何となく親近感を感じつつ、俺は持ってきた甲殻を見せる。するとその店主はさぞ驚いたように俺に質問を浴びせた。
「一体どんな倒し方をしたんだ? ブブヨグランガムは甲殻が堅すぎるからハンマーみたいな打撃武器でかち割るか、雷の精霊魔法なんかで消し炭にするもんだが」
「奇跡で倒したんだ。そうすると死体は割と綺麗なままだぞ」
「なるほど、奇跡か。だが奇跡だけで倒すのは大変だったんじゃないか?」
「え? 別にそんなことないぞ。一撃だったしな」
「一撃!? 奇跡でか?」
「ああ。それがどうかしたのか?」
「あ、いや、そうか。すまん、何でもないんだ」
どうしたんだ? どう見ても何でもなくなさそうだが。眉間にシワを寄せて目を下方向にきょろきょろと泳がせてるし、何ならそれに伴ってグルグルと頭を回転させているようにも見える。
俺がそんな急に来た不思議な反応に戸惑っていると、アンヘルと、そしてノエラが両サイドから耳打ちしてきた。悪魔と美人の挟み撃ちだ。何か試されてる気分になってくるな。
「サム様の神力が規格外過ぎるだけで、本来は一撃で済んだりしないのですよ?」
「サムさん、あんまり目立つことは言わないほうが……」
「あっはい」
俺は微妙な感じでお叱りを受け、人前なので一切反論せずに従っておく。店主もどうにか自分の中で納得したのか、驚きをかみ殺して普通の対応に戻した。
「この大きさと保存状態なら……そうだな、ギトナ金貨七枚ってところだろう」
「そうか。ちなみにどんなものに使えそうだ?」
「俺が考える限りでは、盾かグローブだな。だがグローブの方は加工が難しそうだから十中八九盾になるだろう」
「なるほどな。活用法もわかったし、ギトナ金貨七枚で売らせてもらうよ」
「了解。用意するから待っててくれ」
店主は一旦奥の従業員スペースらしきところに行ってから戻ってきた。
「ほら。ギトナ金貨七枚だ」
俺は受け取った金貨七枚を腰巾着に突っ込む。それを確認した店主は商売人らしく売り込みをしてきた。
「防具は買ってくれないのか? 魔物を狩るときに防具がないと危険だぞ? 中距離遠距離主体でも命を守るものはあって損ないだろう」
「ああ、それは確かにな。……だけど遠慮しておくよ」
「そうか。そのあたりは人それぞれだ。だが後悔するなよ」
「ああ」
さすが商売人だな。その口ぶりをされると防御力が気になってくる。だが俺は何か買わされそうになる前に店を出て、ノエラに声をかけた。
「そろそろお昼だ。昼食はどうする? どこかの店に入るか?」
「宿屋では料金を払えば食事ができるところが大半ですから、まずは宿に戻りませんか?」
「そうなのか。俺のせいで客を逃がしちゃったし売り上げに貢献しといたほうがいいかもな」
「はい。今日はそうするとして……明日以降は調理器具と材料を買って保存してもらえれば喜んで私が作りますよ? その方が将来的には安上がりなので私の借金も返しやすいですし、何よりサムさんの助けになるので……」
「おお、俺が【闇の領域】を使えばいつでもノエラが料理できて、俺は作りたての手料理を食べられるのか。最高だな!」
「喜んでもらえそうでよかったです。お昼を食べたら調理器具と食材を買いに行きましょう」
「そうしよう。是非そうしよう!」
毎日愛妻手料理もどきを食べられるのか。幸せすぎて禿げそうだな。
武器屋とは違ってここには工房らしきものがない。それを見るに、恐らく他の場所で作った防具をここに運び込んで売っているのだろう。
店に入ると幾つもの人形が置かれており、それに防具を着せてある。衣服のようにセットにして売られている防具も多数見受けられ、意外と儲かりそうな商売だなと思った。
ここも武器屋同様色々見て回りたい衝動に駆られるが、あんまりウロウロしていると昼食を食べ損ねそうなので空いているカウンターへと向かった。
対応してくれたのはカールのかかった髪の男の人。色黒で見るからに鍛えていそうな体つきの人だ。他に従業員がいなさそうなので、もしかしたらこの人が店主かもしれない。
「雑貨店から話を聞いてるかな? ブブヨグランガムの甲殻を売りたいんだけど大丈夫そうか?」
「ああ、話は聞いてるよ。早速品を見せてくれ」
このあたりの店には珍しく敬語を使ってこない。やっぱり偉い人なのかな? でも俺はそんなの気にしないし、むしろお互い敬語で話さない方が普通な感じがするな。
何となく親近感を感じつつ、俺は持ってきた甲殻を見せる。するとその店主はさぞ驚いたように俺に質問を浴びせた。
「一体どんな倒し方をしたんだ? ブブヨグランガムは甲殻が堅すぎるからハンマーみたいな打撃武器でかち割るか、雷の精霊魔法なんかで消し炭にするもんだが」
「奇跡で倒したんだ。そうすると死体は割と綺麗なままだぞ」
「なるほど、奇跡か。だが奇跡だけで倒すのは大変だったんじゃないか?」
「え? 別にそんなことないぞ。一撃だったしな」
「一撃!? 奇跡でか?」
「ああ。それがどうかしたのか?」
「あ、いや、そうか。すまん、何でもないんだ」
どうしたんだ? どう見ても何でもなくなさそうだが。眉間にシワを寄せて目を下方向にきょろきょろと泳がせてるし、何ならそれに伴ってグルグルと頭を回転させているようにも見える。
俺がそんな急に来た不思議な反応に戸惑っていると、アンヘルと、そしてノエラが両サイドから耳打ちしてきた。悪魔と美人の挟み撃ちだ。何か試されてる気分になってくるな。
「サム様の神力が規格外過ぎるだけで、本来は一撃で済んだりしないのですよ?」
「サムさん、あんまり目立つことは言わないほうが……」
「あっはい」
俺は微妙な感じでお叱りを受け、人前なので一切反論せずに従っておく。店主もどうにか自分の中で納得したのか、驚きをかみ殺して普通の対応に戻した。
「この大きさと保存状態なら……そうだな、ギトナ金貨七枚ってところだろう」
「そうか。ちなみにどんなものに使えそうだ?」
「俺が考える限りでは、盾かグローブだな。だがグローブの方は加工が難しそうだから十中八九盾になるだろう」
「なるほどな。活用法もわかったし、ギトナ金貨七枚で売らせてもらうよ」
「了解。用意するから待っててくれ」
店主は一旦奥の従業員スペースらしきところに行ってから戻ってきた。
「ほら。ギトナ金貨七枚だ」
俺は受け取った金貨七枚を腰巾着に突っ込む。それを確認した店主は商売人らしく売り込みをしてきた。
「防具は買ってくれないのか? 魔物を狩るときに防具がないと危険だぞ? 中距離遠距離主体でも命を守るものはあって損ないだろう」
「ああ、それは確かにな。……だけど遠慮しておくよ」
「そうか。そのあたりは人それぞれだ。だが後悔するなよ」
「ああ」
さすが商売人だな。その口ぶりをされると防御力が気になってくる。だが俺は何か買わされそうになる前に店を出て、ノエラに声をかけた。
「そろそろお昼だ。昼食はどうする? どこかの店に入るか?」
「宿屋では料金を払えば食事ができるところが大半ですから、まずは宿に戻りませんか?」
「そうなのか。俺のせいで客を逃がしちゃったし売り上げに貢献しといたほうがいいかもな」
「はい。今日はそうするとして……明日以降は調理器具と材料を買って保存してもらえれば喜んで私が作りますよ? その方が将来的には安上がりなので私の借金も返しやすいですし、何よりサムさんの助けになるので……」
「おお、俺が【闇の領域】を使えばいつでもノエラが料理できて、俺は作りたての手料理を食べられるのか。最高だな!」
「喜んでもらえそうでよかったです。お昼を食べたら調理器具と食材を買いに行きましょう」
「そうしよう。是非そうしよう!」
毎日愛妻手料理もどきを食べられるのか。幸せすぎて禿げそうだな。
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