邪神に仕える大司教、善行を繰り返す

逸れの二時

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活動の地

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 一階は受付エリアとなっているようで、ホテルのロビーのような大きなカウンターに何人かの役員が詰めているような感じだ。セレーヌがそこに躊躇なく進んでいくので、俺とノエラもそれに付いていくと、向こうの方から声をかけられる。

「これはこれは、カウォンガワ神殿のセレーヌ・ミアネステ司教様。本日はいかがなされましたか?」

「どうもこんにちは。今日は旅のフォースの方のご紹介に参りました。少し事情が複雑なので、できれば副長をお呼びいただきたいのですが、よろしいですか?」

「そうですか。分かりました。そういうことでしたらすぐにお呼び致しますので、少々お待ちください」

「よろしくお願いします」

 セレーヌとの会話を終えて、受付の男の人は魔法陣で上の階へと転移していった。魔法陣にはあまり馴染みがないので俺は驚いてしまったが、セレーヌの反応を見る限りここではごく当たり前のことのようだ。

 よく周りを見れば、塔なのに階段がない。一瞬で上に行けるのは便利そうだ。

 そうしてしばらく待っていると、身なりの良い壮年の男が魔法陣からやってきた。黒地に金の刺繍をした上等な服が似合っており、落ち着いた雰囲気の白髪交じりの人だ。

 しっかりとセットされた髪がパリッとした印象を与えていて、この人は仕事ができそうな人だなと思ってしまう。副長と呼ばれるこの人は、まずはセレーヌさんに挨拶をしてから俺たちを魔法陣へと促して、転移先のシックな内装の個室に案内してくれる。

 そのおかげでと言ってはなんだが、塔のどのあたりにいるのかわからなくなり、俺はちょっと不安になっている。しかし副長さんはそんな不安など恐らく気付いていない様子で、俺たちを長椅子に座らせて本題に入った。

「セレーヌ様、旅のフォースの方を紹介してくださるそうですね。こちらの神官の方と精霊使いの方ですか?」

「はい。神官の方がサム様、精霊使いの方がノエラ様です」

「サムです。よろしく」

「私はノエラです。どうぞよろしくお願いします」

「これはどうも。私は四力統治塔副長のベゼス・ストレイブと申します。以後お見知りおきを。こうしてセレーヌ様が直々にご紹介くださるということは、私に何か話したいことがおありということですね?」

「はい。こちらのサム様は、実は邪神マサマンディオス様を信仰なさっています」

「な、何ですと!? それは本当なのですか?」

「ああ。俺はマサマンディオスを信仰してる。でも悪意等はないから安心してくれ」

「そ、そうなのですか……」

「サム様、わたくしに話してくださったように、ベゼス様にも詳しくお話になった方がよろしいかと」

「そうか。じゃあ説明するが――」

 俺はマサマンディオスについての諸々を説明した。説明しても最初と反応は変わらずで納得いっていないようだが、無理やり理解してもらうしかない。

「ということなんで、俺は光の神に仕える神官と変わりないと思って接してもらえるとありがたいな」

「わ、分かりました。まだまだ消化しきれていない部分もございますが、話を進めましょう」

「あともう一つ。サム様の神力は、わたくしたちの神殿の大司教様を凌ぐほどのものです。神力での重病の治療をこの目で拝見しましたので確かですわ」

「そ、そんなことが……! ですがセレーヌ様が仰るのならば真実ということですね……。是非とも私もお力を拝見してみたいところですが、それも今は置いておくとしましょう」

「それではサム様とノエラ様の登録をお願いできますか?」

「ええ。セレーヌ様が仰るのならば危険はないと判断して登録させていただきます」

 うお、セレーヌへの信頼感が凄い。これはきっとセレーヌの人格故の信頼度だろうし、俺は何としてでも彼女への信頼を潰さないように努めないといけないな。

 そうしてセレーヌのおかげで楽に話が通り、俺とノエラは四力統治塔にフォースとして名前が登録された。登録と同時に俺は白、ノエラは紫のメダルを手渡され、それを提示すればここで仕事を請け負えるそうだ。

 手渡された後にそこにそれぞれの四力を込めるよう言われたので試してみると、メダルがそれ自身と同じ色に発光する。

 受付の人の話では、メダルは特殊な素材が用いられているそうで、一度四力を流すとその人の四力を記憶して、再度同じ力を流すと発光、そうでない力を流すと内部から壊れるようになっているらしい。これがメダルの本当の持ち主かどうかの認証の役割を果たしているみたいだ。

 ここで仕事をこなして統治塔への貢献度なるものを上げれば、街の貴族として名を挙げることも可能で、貴族になると色々と特権があるらしい。税金はその功績に応じて少しだけ増えるが、買い物の割引や土地の購入権、はたまた領地の統治権なんかも与えられたりするそうだ。

 この世界では四力が非常に重要だから、力さえあれば貴族にもなれるってことのようだ。ただ元の世界でのイメージとは違って、貴族はゆったりと暮らせるわけはないらしい。

 貴族の位を維持するには、一定以上の貢献度を維持しないといけないし、名指しで仕事を振られたらよっぽどのことがないと断ることはできないらしい。このように貴族には貴族で独特なしがらみはあるようだが、それは追々考えることにしよう。今は名前を広めないとマズイことになるからな。
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