邪神に仕える大司教、善行を繰り返す

逸れの二時

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自然の瓦解

居場所

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 ここからでもダロイの街はよく見えて、統治塔の垂れ幕がたなびいているのもよく観察すればちゃんと見える。街の左側からは排水用の川が外に向けて流れていて、大きいながらも大都市ダロイは自然と共生しているのどかな街だということが伝わってくる。

 そこから右横に目線をズラすと、鬱蒼と広がるマングココラムの森がどこまでも続いている。このババアのいる森は、俺たちの後ろ方向にも広がっているのが確認できて、迂闊に森に入ってあっさりと迷う人が続出するという話がこれで納得できた。

 その森の辺りからずっと反対側の方を見渡すと、山々が連なっている景色が一望できる。紋章に聞くとこれはブルブドゥキン山脈と言うそうで、その一部には火山が含まれているらしい。

 ダロイ周辺の景色は大体こんな感じで、それを上から眺めることができたのは貴重な体験だった。それから俺たちは高台から下りて街の方に向かった。食用肉はたくさん手に入ったが、末恐ろしい情報もまた手に入ってしまったな。

 マサマンディオスは人間はやわではないと宥めてくれたが、正直俺は焦ってしまう。早くマサマンディオスの名前を広めて、月の暴走を何とかしたい。せっかく居場所ができてきた世界なんだ。月の暴走なんかでこの世界を壊されたくないからな! 

 それから特に魔物と遭遇することもなく街に戻り、目一杯の食用肉の配達をやった。俺は邪光ランタンも鞄に仕舞い、鞄の中で【闇の領域(ブラックホール)】を行使しつつ手を突っ込み、領域内から肉を取り出すという芸当をやってみたら案外うまくいき、超絶大容量の不思議な鞄が生まれた。

 気分はまさに手品師。仕込んでおけばハトはおろか、生きた魔物だって出せるんだぞ。危ないからやらないけど。大量の肉を次々に出す俺に見張り番の女の人は口をあんぐりあけて驚いていたけど、それがむしろ気分が良かった。

 仕事の期限は明日までだが、他の仕事もやってみたくなったので、俺たちは一旦その仕事を完了したことにしてもらい、四力統治塔に報告と細かい手続きをしに行った。それで得た貢献度は七。これは俺たちが受けた低難易度の仕事にしては大きな貢献度だそうだ。

 あれだけの肉を一日かつそれなりの短時間で用意したことが功を奏したようだ。金貨の方はギトナ金貨一枚とサイラリム金貨二枚の計一万二千円だった。満足だ。

 そんなことをしていたらもう夕方。俺たちは宿に戻って食事を取り、今日一日を終えた。宿のおじさんのバロンに四力統治塔で仕事を請け負ってこなしてきたと報告すると、彼は自分のことのように喜んでくれた。

 宿の利用者は以前よりは少なくなってしまったようだが、激減と言うほどでもなく、意外とあれから新規の利用者もいるそうだ。どんな噂になっているか知らないが、読み通り苦しい話だけではないようだ。

 給仕さんたちも普通に接してくれるし、宿の中はちゃんと落ち着ける空間で一安心だ。いつものように宿の浴室で体を綺麗にしてから、購入したシンプルな服に着替える。結局外に出るときは司祭衣のままになりそうだ。

 その方が四力統治塔での仕事の請負いもスムーズだろうし、何だかんだで神官と言うのは俺のアイデンティティになりつつある。

 一般人に戻りたいなんて思ったが、邪神の神官であることが一定数の人にバレた以上はもう一般人には戻れないだろうな。でももういいや。俺はこの世界では神官様だ。その名に恥じないように生活するつもりだしな。

 俺はそういう風に決意を新たにし、ベッドに横になるとすぐに深い眠りに落ちていった。
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