邪神に仕える大司教、善行を繰り返す

逸れの二時

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都市の行き来

神官の失墜

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 ちなみに肉は俺の【闇の領域ブラックホール】に入っていた肉を使った。貴族として認められる前の数日の間にそれなりに魔物退治をしていたので、その余りだ。野菜も市場のものだから、材料費は俺たちの負担だが、料理の味が良いから自然と肉と野菜の提供をしてしまうな。

 それから雑談をしながらまったりし、俺らは街に戻ることにした。そのときには俺の奇跡に囚われているバルトサールは目を覚ましていたが、逃げ出してはいなかった。長いこと目を離していたわけだが、逃げようものなら俺にそれが感覚として伝わってくるので、問題はなかった。実際に逃げられていないしね。

 でもさすがにこいつが起きている状態で街に戻るのは無理なので、またノエラには睡眠の魔法を使ってもらい、俺たちは出発の準備を整えた。

「ありがとなババア。今日は助かったぜ」

「俺を保護してもらってありがとうございました。この恩は忘れません」

「バロンといったか。ええんじゃよ。そんなものは忘れてもらって構わん。この孫のような子たちを世話してもらって助かっとるんじゃ。できればこれからも助けてやっとくれ」

「はい。そう致します」

「バロンも最初は俺たちにも敬語だったのになあ」

「お前にはそもそも必要ないし、ノエラさんも分かってくれてるからな」

「ま、いいけど。それじゃ行こうか」

「はい! 行きましょう」

 俺は邪光ランタンから【漆黒の翼ホワイトウィング】を行使した。体が徐々に浮き上がって、爽やかな風に揺られる。この感覚はいつ味わっても最高、なんだけど……残念ながら今は邪魔者がいる。

 俺の【漆黒の翼ホワイトウィング】は他者にかける場合、俺へのある程度の信頼とその神への理解と好意がある人にしか効果がないので、ノエラとバロンはセーフだけど、バルトサールは完全にアウトなのだ。

 だから仕方なく眠ったままのコイツは俺が背負って運ぶことになっていて大変邪魔だ。嫌々ながらも邪魔者を背負ったまま、木にぶつからないくらいまで高く上がって、それから街まで飛んでいく。

 下の景色がかなり早く流れてしまうくらいの速度でどんどん進んで数十分くらいすれば、見慣れたダロイの街に着いて門の外に着地する。そこからわざわざ目立つようにバルトサールを起こしてから引っ立てる。

 すぐに衛兵が集まってきたが、俺にもノエラにも貴族の身分があるからか、思いのほか事はすんなりと進んだ。証拠の置手紙とバロンの証言、宿の従業員の話などを考慮してもらえば、すぐにバルトサールは連行されていった。もちろん顔はきちんと治療されているので、バルトサールがバロンに殴られたなどと言っても相手にならなかった。

 この点は嘘をついてしまって罪悪感がないわけではなかったが、バロンの気持ちを考えたら目を瞑ろうという気になる。そもそも俺も黙認どころかほう助しているのだから無関係じゃないけどね。

 そして嬉しいことに、バルトサールは街でも結構有名なカロヌガンの司教だったらしい。そんなそれなりに偉い神官が衛兵達にしょっ引かれる様は何とも滑稽で、街人の噂の的になっていた。

 バロンもバロンでそこに事の真相を詳らかに説明したもんだから、噂は加速度的に広まって街の人がほとんどその噂を知っている状態になった。何となく、俺が邪神の神官だって知られたときの様子と似てるんだろうなと思わされたが、それはそれだ。

 それでそんな噂が広まれば、当然のことながらカロヌガン神殿の風当たりは悪くなって、懺悔や礼拝や説教を聞きに行く人があっという間に減っていったようだ。

 司教があんなどうしようもない男なのだから、いくら他の司祭でも説法なんてされたくないわな。これでさらにカロヌガンの怒りを買ってしまった気がするが、正直どうにもならないしどうでもいい。また何か仕掛けてくるなら対処すればいいだけだしな。
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