Voice

椎奈風音

文字の大きさ
7 / 21
旋律

第二話

しおりを挟む
「藤堂?」
 意外な人物に、俺は目を見開く。
 授業が終わってかなり時間が経つのに、まだ帰ってなかったのか。

「緋月、その曲……?」
「え?」
 あまりにも藤堂の声が小さすぎて聞き取れず、思わず聞き返した。

「その曲、『ヴォイス』だろ?」
「……っ!」
 俺は思わず、息を呑んだ。

『ヴォイス』は同じ名前の香水のCMに使われている曲だ。
 全国から一般公募した数百という曲の中から選ばれ、作曲者の名前が『ソウ』ということ以外は公表されていない。
『ソウ』はCMのヒットで一躍『時の人』となったが、年齢も性別も非公開な謎の人物だ。

「緋月、どうして、その曲が弾けるんだ?楽譜は公表してないだろ?」
 確かに藤堂の言う通り、楽譜は世の中に出回ってはいない。
 内心、なんでこんなに詳しいんだ?と思いつつも簡潔に答える。

「暗譜したから」
「暗譜?」
 あまり聞き慣れない言葉だったのか、藤堂は首を傾げた。

「うち音楽一家だから、昔から色々叩きこまれてきたんだよね。だから一回聞いた曲は大抵弾けるよ」
「凄いな」
「凄い?」
 俺にとって出来て当たり前のことだったので、そう言われてもピンとこない。

「だって緋月が努力したから出来るようになったことだろ?いくら英才教育されたからって、誰もが出来ることじゃないし」
「……っ!」
 そんなことを言われたのは初めてだった。

 親が有名だから、出来て当たり前。
 環境に恵まれているから、出来ない方がおかしいと言われ続けてきた俺に、藤堂の言葉は衝撃だった。

(こんな風に考えてくれる人もいるんだ)
「……ありがとう」
 ちょっと照れてしまい、顔を赤くして俯いた。

「緋月~!お前可愛いね♪」
 そんな俺を見て、藤堂が意地悪な笑みを浮かべる。
「からかわないでよ!」
 明らかに藤堂は、俺の反応を見て楽しんでる。

「…やっと本音を見せたな」
「!!!」

 それはこっちの台詞だ!

 藤堂に対する印象が、変わった瞬間だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

俺の婚約者は小さな王子さま?!

大和 柊霞
BL
「私の婚約者になってくれますか?」 そう言い放ったのはこの国の王子さま?! 同性婚の認められるパミュロン王国で次期国王候補の第1王子アルミスから婚約を求められたのは、公爵家三男のカイルア。公爵家でありながら、長男のように頭脳明晰でもなければ次男のように多才でもないカイルアは自由気ままに生きてかれこれ22年。 今の暮らしは性に合っているし、何不自由ない!人生は穏やかに過ごすべきだ!と思っていたのに、まさか10歳の王子に婚約を申し込まれてしまったのだ。 「年の差12歳なんてありえない!」 初めはそんな事を考えていたカイルアだったがアルミス王子と過ごすうちに少しづつ考えが変わっていき……。 頑張り屋のアルミス王子と、諦め系自由人のカイルアが織り成す救済BL

【8話完結】強制力に負けて死に戻ったら、幼馴染の様子がおかしいのですが、バグですか?

キノア9g
BL
目が覚めたら、大好きだったRPGの世界に転生していた。 知識チートでなんとか死亡フラグを回避した……はずだったのに、あっさり死んで、気づけば一年前に逆戻り。 今度こそ生き残ってみせる。そう思っていたんだけど—— 「お前、ちょっと俺に執着しすぎじゃない……?」 幼馴染が、なんかおかしい。妙に優しいし、距離が近いし、俺の行動にやたら詳しい。 しかも、その笑顔の奥に見える“何か”が、最近ちょっと怖い。 これは、運命を変えようと足掻く俺と、俺だけを見つめ続ける幼馴染の、ちょっと(だいぶ?)危険な異世界BL。 全8話。

【完結】みにくい勇者の子

バナナ男さん
BL
ある田舎町で農夫をしている平凡なおっさんである< ムギ >は、嫁なし!金なし!の寂しい生活を送っていた。 そんなある日、【 光の勇者様 】と呼ばれる英雄が、村の領主様に突然就任する事が決まり、村人達は総出で歓迎の準備をする事に。 初めて会うはずの光の勇者様。 しかし、何故かムギと目が合った瞬間、突然の暴挙に……?     光の勇者様 ✕ 農夫おっさんのムギです。  攻めはヤンデレ、暴走ロケット、意味不明。 受けは不憫受け(?)だと思いますので、ご注意下さい。ノリよくサクッと終わりますm(__)m 頭空っぽにして読んで頂けると嬉しいです。

強面若頭は、懐っこいナースの献身に抗えない ―極道、はじめての恋を処方される―

たら昆布
BL
ウブで堅物な極道若頭×明るいわんこ系看護師

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

黄色い水仙を君に贈る

えんがわ
BL
────────── 「ねぇ、別れよっか……俺たち……。」 「ああ、そうだな」 「っ……ばいばい……」 俺は……ただっ…… 「うわああああああああ!」 君に愛して欲しかっただけなのに……

側妻になった男の僕。

selen
BL
国王と平民による禁断の主従らぶ。。を書くつもりです(⌒▽⌒)よかったらみてね☆☆

処理中です...