Voice

椎奈風音

文字の大きさ
上 下
18 / 21
衝撃

第三話

しおりを挟む
「それで、こっちが後輩のつばさ
 タカが後ろにいた華奢な少年の手を引き、自分の隣に並ばせた。
 俺は自分から注目が逸れたことにほっとし、改めて少年を見た。

(綺麗な子だな)
 男にそんなことを言うのは変かもしれないが、彼の繊細な美貌は神が丹念に作った最高傑作みたいだ。
 艶やかな黒髪に、深い漆黒の瞳。
 瞬きする度に揺れる睫毛は、影が出来るほど長い。
 煌めくような金髪を持つタカと並ぶと、全く正反対だが、驚くほどに違和感がない。 

「で、コイツが今回俺の相手役だ」
「そっか、モデルだったのか」
 それなら群を抜くほどの美貌も理解できる。

 前作のCMはタカ一人だったが、今回は相手役がいるみたいだ。
 それにしても制作側も、タカの存在感に潰されない逸材をよく見つけてきたと思う。
 並みの相手じゃ、引き立て役にもならないからな。

「あの……、俺モデルじゃないですけど」
 勝手に自己解決していた俺は、翼君の控えめな声で我に返った。
「……モデルじゃない?」
 じゃあ、タレントということだろうか。
 それもありそうな気がする。
 テレビじゃ見たことないけど、俺が知らないだけなのかもしれないし。

「奏君。翼は一般人だよ。俺の学校の後輩」
「ええっ!?」
 驚いてデカイ声を上げた俺に、タカは笑いを噛み殺している。
(一般人って……。ありえないだろ)
 俺は呆然として、二人を見た。
しおりを挟む

処理中です...