皇子と王女は珍道中！

番外編

過去編１ 晴凱

ここは曹帝国。

   

  「晴凱様。皇帝陛下がお呼びでございます。」

  晴凱と呼ばれた人物は、側近に声をかけられ、何やら難しそうな書物から顔を上げた。

  「分かった。」

  名を秦晴凱。

  この物語の世界の、大陸の東に位置する大国の第一皇子である。
  
  国の名は、曹帝国。
  大陸の東の国で、歴史は長くおよそ三千年の歴史を持つ。
  肥沃な土壌を持ち、農業でも有名である。
  かつて三国存在したが長きにわたる戦国時代において三国を征したのは曹帝国である。

  そんな国の第一皇子は、趣味が戦争であるとか、十歳で剣術をマスターしたとかしないとか。
   かなり恐ろしい印象を、会ったことがない人には植え付ける。

  だが実際、彼はただただ周りに無関心で、自分の知識欲には貪欲なただの子供の一面もある。



ーーー

  ここは謁見の間。

 
  「晴凱よ。数日後、隣国のガリヤード王国から友好の証として第二王子が留学にやってくる。皇族の中で一番歳が近いのはお前だ。後のためにお前が相手をするのだ。よいな？」

  「は！」

  晴凱は皇帝の前で跪いて敬礼の形をとった。

  （そうか、王子が来るのか。）

  晴凱は少し興味を持った。
  と、同時にちょっと待てよ？
  と間を置いた。

  （第二王子。第ニ王子だと？ガリヤード王国には二人も王子がいたか？確かあそこは王子が一人と王女が三人だったはずだ。）

  不思議に思った晴凱は、思わず皇帝に質問した。

  「あの。よろしいでしょうか。」

  はっ！と我に返り、晴凱は自分のしたことにマズい。と、思った。
  
  何せ、今の発言は皇帝から許可されたものではない。

  晴凱は、自分の未熟さを恥じた。

  「申してみよ。」

  しかし、皇帝はそれを気にとめることはなかった。

  「はい。ガリヤード王国の事ですが、確かあそこは王子が一人と王女が三人だったのではありませんでしたでしょうか？」

  すると周りにいた側近達もそれに気づいたように、そうだった！とでも言いたげな顔をした。

  「ふむ。儂もそれが気になって彼方の王に聞いてみたが、実は昔、手付きをした侍女の子供だそうで、間違いなくかの王の御子出そうだ。」

  成る程そういうことか。

  「左様でございましたか、ありがとうございます。」
  
  そして、晴凱は納得してその場を去っていった。