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5.外伝
外伝① ロジャーの結婚07
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一晩王宮に泊まらせてもらったレティシアはその日の午後自宅に帰って来た。王室の車に乗せられて戻った娘に母親も妹も大騒ぎだった。
「ちょっと、レティ姉さま、王宮に泊まって来たってことは……もしかして……そう、そういうことなの!?」
「そういうことってどういう意味? サリー姉さま。私にも分かるように教えてよ」
「色々噂はあるけどロジャー殿下いい方じゃないの。これで結婚は確実ね」
好き勝手なことをわめく彼女たちをレティシアは真っ赤になってたしなめた。
「あなたたち何勘違いしてるのよ!? 具合が悪くなって一晩休ませてもらっただけよ。腐るほどある部屋の一つを貸してくださったの。下品な想像しないでちょうだい。お母様もちゃんと訂正してよ」
「でも近い将来そうなることは確実なんだから当たらずといえども遠からずよ。よかったわね、レティシア。我が家も安泰だわ」
きゃあきゃあ騒ぐ家族を残して、レティシアは自室にひっこんだ。自分の家だというのに自室しか居場所がないのが本当に嫌だ。母娘で盛り上がっている話題も自分だけ置いてけぼりだったことが今までにもあった。そんな時は決まって「お高く止まって」というような避難がましい目を向けられるので閉口した。むしろロジャーやリリーと一緒にいる時の方が取り繕わないでいられる。本当の家族になれるわけでもないのに、とレティシアは一人苦笑するのだった。
(さっき何かを言いかけたように思ったけど……一体何を言おうとしてたのかしら?)
レティシアの前ではいつも自信満々な態度を崩さないロジャーがこの時ばかりは少しだけためらうそぶりを見せたのが意外だった。また後で聞いてみよう、どうせ数日後にまた王宮へ行く用事がある。少し先になるがちょっとしたパーティーに二人で出ることが決まったのだ。実質婚約披露パーティーみたいなものである。本当の婚約でないのでこのようなイベントは避けたかったが、どう頑張っても全ては防げなかった。レティシアは、貴族令嬢ながら社交界に顔を出すことは殆どなかったので、その前に一度準備をしておこうという話になったのだ。
数日後、王宮に再びやってきたレティシアはロジャーに先日のお礼を改めて言った。
「いいんだよ、あれくらい。それより元気になってよかった」
ロジャーはいつもの調子で言った。確かにあれくらい彼にとってはどうということはないのだろう。しかし、国内に無数にいるロジャーの崇拝者たちに知られたら一気に嫉妬の的になることは必至だった。
「パーティーなんて無数にあるからいちいち気にしてはいられないけど、今回は初めてだし、有力貴族が多数参加する大事な会だから、少し準備した方がいいと思って。立ち居振る舞いについては心配してないけど、レティは自分に自信がないだろう? 俺の隣に立つ者がそれでは困るので、魔法をかけてやる」
パーティーの準備と聞いたから貴族の顔と名前と略歴を覚える勉強でもさせられるのかと思ったレティシアは、驚いた声を上げた。
「自分に自信がないって、そんなの誰から聞いたのよ? 確かにあなたと一緒に並んだら私なんて霞んでしまうけど、それを言ったらどんな大女優でもあなたの隣は無理だわ」
それを聞いたロジャーは愉快そうにクスクスと笑った。
「そこまで褒めてくれなくてもいいよ。俺のすごさは俺が一番よく知ってるし。あんたを観察していれば常に劣等感を抱いているのは簡単に分かる。こっちは常に人間を観察して敵か味方か判断してるんだ。皇太子をなめんな」
ロジャーの自信過剰さには呆れたが、確かにレティシアは劣等感の塊だった。同年代の少女と比べても地味で平凡な容姿だし、妹たちのように要領よくもない。家柄はいいが財産はなく、肩書と中身が伴っていないと常々思ってきた。ロジャーの自信を少し分けてもらいたいくらいだ。
「……でもこの性格は一朝一夕で作られたものじゃないのよ。いくら急ごしらえとはいえ、華やかなレディにはなれないわ。私は私だもの」
「なあに。だから魔法をかけてやると言ってるんだ。黙って着いてきて」
そしてロジャーと共に車で向かった先はドレスショップだった。それも皇族や高位貴族御用達の有名店だ。家柄はいいが貧乏貴族のレティシアは見栄を張ってもなかなか行ける場所ではなかった。お見合いの時に着けたアクセサリーすら親戚からの借り物だったのだから。
「ちょっと……無理よ。私がドレスに負けてしまうわ」
「何言ってんだよ。オーダーメイドドレスは初めてじゃないだろ? 何を怖気ついている?」
確かにオーダーメイドのドレスは前にも作ったことがあるが、こんな高級店ではなかった。ここでドレスを作っている層は日頃から美容に余念がなく、身体をピカピカに磨いている。レティシアのような、若さだけが取り柄の娘には歯が立たないと思えた。
「服ってのは人間を最高に飾り立てるためにあるんだ。どんな時も人間が主、ドレスは従だ。レティに合った、一番似合う色とデザインを決める。そのために来たんだから」
ロジャーは腰が引けているレティシアの手をつかんでずんずんと店の中に入って行った。上品そうな店員はロジャーを見ると丁寧に挨拶をした。会話の様子から初めてという感じではない。今までも女性を連れてここに来たことがあるのだろうか。レティシアはそちらが気になって仕方なかった。
「ロジャー殿下から伺いましたよ。自分に合う色が何色か分からないって。まず鏡の前に立ちましょう」
店員に促されて鏡に映った自分の姿を見たレティシアは思わずため息をついてしまった。肩まで伸びたブルネットの髪を後ろに束ね、質は悪くないが地味なベージュの服を着ている。デザインも無難すぎて別に若者が着なくてもいいと思えるものだ。無難に無難にと考えるうちこのような選択になってしまった。余りにも地味すぎて皇太子妃より目立ってはいけないスパイの方が向いているのでは、と考えてしまった。
「このお店には私みたいな人は来ないでしょう? 皆さん素敵な方たちばかりですもの」
レティシアはつい気後れがしてしまって、サイズを測っている店員に話しかけた。
「最初から素敵な人なんていませんよ。変化が大きい方が私たちとしてもやりがいがあります。誰よりも美しいプリンセスになりますからどうか私たちを信じてください」
それからロジャーも加わってドレスのデザインと色味を決めることになった。
「レティは肌が黄色みがかっているから暖色系が似合うかもな。俺の衣装と対になるのがいいと思う。それだと、この辺の布になるかな」
サンプルの布を手に取って確かめるロジャーを見てレティシアは驚いた。
「なんで私よりファッションのことに詳しいの? 帝王学にそういう勉強も含まれているの?」
ロジャーは一瞬キョトンとしたが、アハハと笑い出した。
「面白いことを言うな! 帝王学もそんな内容だといいんだけど。俺の場合は、自己演出のためにどんな装いがいいか研究しているだけだよ。人は見た目で騙されるからな。逆にナルシスティックになってもいけないし、案外難しいんだ」
ナルシストに見えないロジャーなんてかなり難しい匙加減が要求されるとは思ったが、そこまで綿密に計算していることに驚いた。レティシアは劣等感を理由にしてそのような自分磨きを怠って来たことを密かに恥じた。
「いいか? 魔法はここで終わっていない。むしろこれからが本番だ。ドレスが完成して装う時に最高の自分でいなくてはならない。これから毎日王宮へ出向いて肌を磨くんだ。それだけじゃない。ダンスの確認もしなくちゃならないし、やることがたくさんあるぞ」
レティシアは話を聞いただけでおなか一杯になってしまったが、ロジャーの方はうきうきした様子だった。毎日王宮へ行くなんて大変だ。そうでなくても皇太子妃教育でしごかれているのに。本当の婚約じゃないからと思った自分が甘かった、またしてもロジャーに一本取られてしまった。
**********
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「ちょっと、レティ姉さま、王宮に泊まって来たってことは……もしかして……そう、そういうことなの!?」
「そういうことってどういう意味? サリー姉さま。私にも分かるように教えてよ」
「色々噂はあるけどロジャー殿下いい方じゃないの。これで結婚は確実ね」
好き勝手なことをわめく彼女たちをレティシアは真っ赤になってたしなめた。
「あなたたち何勘違いしてるのよ!? 具合が悪くなって一晩休ませてもらっただけよ。腐るほどある部屋の一つを貸してくださったの。下品な想像しないでちょうだい。お母様もちゃんと訂正してよ」
「でも近い将来そうなることは確実なんだから当たらずといえども遠からずよ。よかったわね、レティシア。我が家も安泰だわ」
きゃあきゃあ騒ぐ家族を残して、レティシアは自室にひっこんだ。自分の家だというのに自室しか居場所がないのが本当に嫌だ。母娘で盛り上がっている話題も自分だけ置いてけぼりだったことが今までにもあった。そんな時は決まって「お高く止まって」というような避難がましい目を向けられるので閉口した。むしろロジャーやリリーと一緒にいる時の方が取り繕わないでいられる。本当の家族になれるわけでもないのに、とレティシアは一人苦笑するのだった。
(さっき何かを言いかけたように思ったけど……一体何を言おうとしてたのかしら?)
レティシアの前ではいつも自信満々な態度を崩さないロジャーがこの時ばかりは少しだけためらうそぶりを見せたのが意外だった。また後で聞いてみよう、どうせ数日後にまた王宮へ行く用事がある。少し先になるがちょっとしたパーティーに二人で出ることが決まったのだ。実質婚約披露パーティーみたいなものである。本当の婚約でないのでこのようなイベントは避けたかったが、どう頑張っても全ては防げなかった。レティシアは、貴族令嬢ながら社交界に顔を出すことは殆どなかったので、その前に一度準備をしておこうという話になったのだ。
数日後、王宮に再びやってきたレティシアはロジャーに先日のお礼を改めて言った。
「いいんだよ、あれくらい。それより元気になってよかった」
ロジャーはいつもの調子で言った。確かにあれくらい彼にとってはどうということはないのだろう。しかし、国内に無数にいるロジャーの崇拝者たちに知られたら一気に嫉妬の的になることは必至だった。
「パーティーなんて無数にあるからいちいち気にしてはいられないけど、今回は初めてだし、有力貴族が多数参加する大事な会だから、少し準備した方がいいと思って。立ち居振る舞いについては心配してないけど、レティは自分に自信がないだろう? 俺の隣に立つ者がそれでは困るので、魔法をかけてやる」
パーティーの準備と聞いたから貴族の顔と名前と略歴を覚える勉強でもさせられるのかと思ったレティシアは、驚いた声を上げた。
「自分に自信がないって、そんなの誰から聞いたのよ? 確かにあなたと一緒に並んだら私なんて霞んでしまうけど、それを言ったらどんな大女優でもあなたの隣は無理だわ」
それを聞いたロジャーは愉快そうにクスクスと笑った。
「そこまで褒めてくれなくてもいいよ。俺のすごさは俺が一番よく知ってるし。あんたを観察していれば常に劣等感を抱いているのは簡単に分かる。こっちは常に人間を観察して敵か味方か判断してるんだ。皇太子をなめんな」
ロジャーの自信過剰さには呆れたが、確かにレティシアは劣等感の塊だった。同年代の少女と比べても地味で平凡な容姿だし、妹たちのように要領よくもない。家柄はいいが財産はなく、肩書と中身が伴っていないと常々思ってきた。ロジャーの自信を少し分けてもらいたいくらいだ。
「……でもこの性格は一朝一夕で作られたものじゃないのよ。いくら急ごしらえとはいえ、華やかなレディにはなれないわ。私は私だもの」
「なあに。だから魔法をかけてやると言ってるんだ。黙って着いてきて」
そしてロジャーと共に車で向かった先はドレスショップだった。それも皇族や高位貴族御用達の有名店だ。家柄はいいが貧乏貴族のレティシアは見栄を張ってもなかなか行ける場所ではなかった。お見合いの時に着けたアクセサリーすら親戚からの借り物だったのだから。
「ちょっと……無理よ。私がドレスに負けてしまうわ」
「何言ってんだよ。オーダーメイドドレスは初めてじゃないだろ? 何を怖気ついている?」
確かにオーダーメイドのドレスは前にも作ったことがあるが、こんな高級店ではなかった。ここでドレスを作っている層は日頃から美容に余念がなく、身体をピカピカに磨いている。レティシアのような、若さだけが取り柄の娘には歯が立たないと思えた。
「服ってのは人間を最高に飾り立てるためにあるんだ。どんな時も人間が主、ドレスは従だ。レティに合った、一番似合う色とデザインを決める。そのために来たんだから」
ロジャーは腰が引けているレティシアの手をつかんでずんずんと店の中に入って行った。上品そうな店員はロジャーを見ると丁寧に挨拶をした。会話の様子から初めてという感じではない。今までも女性を連れてここに来たことがあるのだろうか。レティシアはそちらが気になって仕方なかった。
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レティシアはつい気後れがしてしまって、サイズを測っている店員に話しかけた。
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それからロジャーも加わってドレスのデザインと色味を決めることになった。
「レティは肌が黄色みがかっているから暖色系が似合うかもな。俺の衣装と対になるのがいいと思う。それだと、この辺の布になるかな」
サンプルの布を手に取って確かめるロジャーを見てレティシアは驚いた。
「なんで私よりファッションのことに詳しいの? 帝王学にそういう勉強も含まれているの?」
ロジャーは一瞬キョトンとしたが、アハハと笑い出した。
「面白いことを言うな! 帝王学もそんな内容だといいんだけど。俺の場合は、自己演出のためにどんな装いがいいか研究しているだけだよ。人は見た目で騙されるからな。逆にナルシスティックになってもいけないし、案外難しいんだ」
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レティシアは話を聞いただけでおなか一杯になってしまったが、ロジャーの方はうきうきした様子だった。毎日王宮へ行くなんて大変だ。そうでなくても皇太子妃教育でしごかれているのに。本当の婚約じゃないからと思った自分が甘かった、またしてもロジャーに一本取られてしまった。
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