クソゲーの異世界で俺、どうしたらいいんですか？

第５章 引っ越した報告してないけど、まぁ～いっか。

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「それにしてもヤト君はあの壁から出てこないねぇ～……」
「兄、どうしたんだろ？」

　俺は首を傾げているとソファーに座ったゼツさんにお膝抱っこされたままと言うのにふと気がついた。
　さすがに重かったら脇に置くだろうと思ってそのまま座っていると彼も気にしないのか俺の頭を撫で始めた。
　うーん、人形扱いはさすがに嫌だなぁ～……。
　でも、ゼツさんがお茶とかお菓子とかなかなか好みのペースで渡してくれるんだよね～……。

　言うなれば超快適っ！

　甘ったる～いクッキーをバリンと口へ放り込むとモグモグしてるうちに手元に茶の入ったカップを差し出される。
　コレを快適。いや、超快適と言わずしてなんと言う！

　そう言えば怨霊を払う呪文ってなんだっけ？
　南無阿弥陀仏だっけ？　たしか阿弥陀菩薩の元にお還り下さい的な？
　え？　ちがう？　異世界だし、まぁ、いっか～……ってダメなの？
　だったら般若心経？　魔訶般若波羅蜜多心経のぎゃーてー辺り？
　え？　知らない？　うん、まぁ、ググれば出てくるんじゃないかな。
　陰陽師の映画とかでメジャーな九文字のアレ？
　えーっと、ちょっと度忘れして思い出せんのよねぇ～……。
　ウンピョウ？　……は、猫科動物だから違うかーー。
　うーん、うーん？　えーっと、マジでなんだっけ？

　そんなことを思っていればいつの間にかテーブルのクッキーはなく、俺は首をかしげてから辺りをキョロキョロ見回していた。

「ルカ、山ほどあったクッキーはお前が無言で食べ続けたからな？　誰も食べてないからな？　絶対に食べてないからな？」

　と、アンドレアさんが言うけど逆に怪しくないかと思うのだけど？
　顔に出ていたのだろう。アンドレアさんが顔を少しヒクッとさせていた。
　おっと、いけない。怒られる前に違うことを考えよ～っと……。

　ちなみに先程の兄のスマホは誰にも見せないようにいつもユウ・ゲンさんに預けてあるのだけど、調理の時に俺が曲を聞きたいとお願いして出してもらってたんだよね。
　兄のスマホには俺が聴きたい～と抱きついてお願いした故の音楽データが膨大なのです。
　男のアイドル五人組とか～……、最初は六色だったのに俺が死ぬまでには四色になってしまった女のアイドル？　とかぁ～……、大所帯の坂の名前がついてる綺麗と言うよりも格好いい系のグループとか、生の肉を体に貼り付けた生肉ドレス着たアメリカの歌手やらその他洋楽いっぱい♪
　あとは和楽器を使ったバンドとか、日本で一番有名な男二人組のロックユニットとかボカロとかその他。とにかくいーーーーっぱい♪

　兄は俺にすっごく優しいんだよ♪　兄、大好き！　本当すき！

　俺のスマホは兄と姉が許可したゲームアプリが鎮座してたの。
　そもそもスマホを持たせるのは家族会議にかけられるほど全員から反対されてたし？
　確かに俺以外はストーカー被害とか結構ひどかったもんなぁ～……。
　だから俺以外はホストとキャバ嬢かって突っ込みありの二個持ちだったよ？
　プライベート（安心安全。誓約書サインの人のみ）と仕事用（どうでもいい人）。
　美形って大変だなぁ～って小さいときから思ってたんだよね。
　俺、たぶん平凡顔だし……。劣性遺伝か……。

　うんうん。悔しくもなんともない。