裏側・クソゲーの異世界で俺、どうしたらいいんですか?

けいき

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うちの子 2

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 今日はぐっちゃんが帰ってくる日。
 楽しみだなぁ~っ! あと、例の話も聞かないといけないなぁ~……。
 たぶん王への報告を終えたのだろう。そのすぐ後、廊下で声をかけると愛しの息子であるグレンは少しではなくかなり疲れたのか、げんなりしていたが自分の顔を見るとニコッと笑みを見せてくれた。ぐっちゃーーんっ! と、抱き締めたかったがここは人目のある王城の廊下。

「グレン、お帰り。怪我もないようで安心したよ」
「父上、お久しぶりでございます。父上もお元気そうで何よりです」

 と、言うのでちょっと内心イラッとしたのは仕方ない。

「さて、グレン。少し時間があるなら久しぶりにお茶を飲んで話をしないか? もちろんそこの二人も一緒にね……」

 そうして城にある食堂へと移動し、貴族用に用意された個室へと入った。すぐさま紅茶を用意してもらい、配膳係が部屋を出るとゼノ君がそっと鍵をかけた。出来る子だわぁ~……。

「さて、グレン。この前の手紙はなんなのかな? 説明を願おうか」

 グレンは紅茶を飲むとニコリと笑って弟にしたいと切り出した。おや、俺の息子はこんな直球勝負をする子だったかな……。

「グレン、ルカがどんな子なのか説明した方がいいんじゃないか?」

 と、アンドレア君が言うとゼノ君がそっと紙を手渡した。口に出してこんな子ですよと誰が聞いてるかわからない場所での公言は避けたいほどの子なのだろう。受け取ってサッと読むと中々面白そうな子だと思った。

・料理が得意らしいこと。アレンジも出来ること。見たことのない調理法を知っていること。
・調味料。主にスパイスなど詳しい様子を見せる。
・森などの食材になる野草やキノコ、木の実など詳しいこと。
・自分達では抜くことが出来ない変わった剣を所持していて、そこら辺の騎士並みには戦えること。
・言葉づかいも丁寧でそこら辺の令嬢よりも遥かに可愛い。
・常識的な部分は欠如しているが、自分達では思い付かないことを知っていたり、発見するのでかなり有用。

 等々つらつらと書かれていた。……いや、さ? ほぼほぼ料理に関することなのはなんなの? しかも女の子よりも可愛いってどう言うこと? あ、料理できるから? うん、女の子らしいのかも? ──そのルカって子は名前からしても男の子なんだよね?

「えっと、これはなんなのかな?」

 調理法を指差すとグレンがニコッと笑って耳打ちでコソコソと教えてくれた。

「んなっ! 聞いたことないぞ?」
「だからこれなんです」

 グレンは手紙の「有用」を指差した。

「…………わかった。では善は急げ。明日、手続きをしようか。グレンにこれを預けよう。私とサラの書状だ。私達は影からその子の最終判断をすることにする。途中で取り止めにする事もあると言うのは念頭に置くように」
「ありがとうございます、父上!」

 あ、眩しいっ! うちの子天使だわぁ……。ぐっちゃん、可愛い! 可愛すぎる! 思わずギュッと抱き締めて頬くっつけてスリスリした。

「………………ち、ちうえ……」

 それからは少し話をして三人と別れると報告書を手に家へと帰った。これを見たみんなの反応を早く見たい。そんな気持ちを隠して帰ると直ぐにその報告書をサラに見せた。彼女は目を爛々と輝かせていた。

「旦那様。私、料理のアレンジって言うものがとても気になりますわ!」
「ん? あぁ、ゼノ君やアンドレア君。グレンの話だととても美味しかったそうだ。スープにミルクを入れると味がマイルドになるだとか……。後は脂肉を使って新たな物を作り出して茹でた麦を炒めるという調理をしたらしい」
「いためる……ですの?」

 不思議そうにしているサラは少し可愛らしかった。


   ◆


 手筈通りに事は進み、戸籍の登録のために奥の部屋にグレンと背の高い少年がやって来た。

「あの子が『ルカ』君ですのね? 思っていた以上に可愛らしいですわね!」
「うん、そうだね。あぁ、ぐっちゃんがキラキラしてる……。やっぱり春到来かな」

 物陰に隠れて見守っているとグレンが必要事項を記入しているようで、ルカという少年はすまなそうな顔をして見つめていた。うわ、その顔は物凄く可愛いわ……。うん、ぐっちゃんに負けず劣らず違うタイプの王子様。言うなれば末っ子中の末っ子。キングオブ……じゃない。プリンスオブ末っ子。
 サラと小声であの子は他の人とは違うようだと意見が一致し、登録が済んでから登場することに異議はなかった。ルカ君が名前を書けば手続きは終了というところで、彼は急に書類を見て首を横にブンブンと振り始めた。

 どうやら養子になることを初めて知ったようだ。

「だ、だって! 養子! 養子って!」
「え、変ですか?」
「変でしょっ!? 戸籍作るのって用意された紙に名前とか後見人だか連帯保証人だかを書いて、はい終わりじゃないんですか?」

 あら、あの子とても頭が良さそうですわ? とサラの言葉に俺も頷いた。ちゃんとあの年で色々と考えているのだろう。幼いのにな──。

「ルカさんでよろしいですか? えっとですね、他国ではわかりませんがこの国に関しましては戸籍がない場合、まず王立裁判所で他国で二重戸籍になる可能性を考察しつつ戸籍を作る許可を話し合いの末にOKを出してくれたら作れるので時間がかなりかかりますよ? ですがこの養子縁組ではそのような審議の時間を使わずに戸籍を作ることが可能です」

 まぁ、この場合は義父母にすべての責任がかかるので貴族では滅多にないケースではある。貴族の養子縁組では跡取りがいないために親戚筋から子供を養子にすることはあるが戸籍のない子を養子など早々あることではないのだ。今回はグレンがとても気に入っている子であること。ゼノ君やアンドレア君の率直な感想を考慮して良い子と判断したからにすぎない。まぁ、猫被って我が家にそぐわない場合は速攻処理してしまえば良いだけ……。

「…………いやいや、いやいや、いやいやいやいや!」
「ルカ……?」

 どうにも納得できないのかルカくんはペンを持ったまま渋り始めた。グレンも説得しているが、ルカくんは「そこまで迷惑をかけられない」や「こんなことまでしてもらう謂れはない」だとか言葉巧みに拒否をしていて埒が明かないな……とサラと話して出ていくことにした。

 俺たちがやって来たことにぐっちゃんが少し寂しそうな顔をしていたのだが、これはどうやらルカくんは「不合格」と勘違いさせてしまったかな?

「グレン、待たせたね。こんにちは、君がルカくんかな? 今日から君のお父さんだよ。パパって呼んでね?」
「あら、旦那様がパパなら……。今日から貴方のお母さんよ。ママって呼んでちょうだいね?」

 すでに用意していた台詞を言ってみるとルカくんは顔を真っ青にして慌てふためいていた。成程、やっぱり聞いていなかったんだね。そしてそんなに嫌なのかな、養子が……。それはなかなかのショックを感じるよ。

「…………いやいや、いやいや、いやいやいやいや!」
「ルカ、どうかしました?」
「グレンさん、どうしたもこうしたもないでしょうっ!?」
「あ、それもそうですね。父上、母上も……。パパ、ママ呼びは急すぎてルカがビックリしてますよ?」

 グレンがそう言うとルカくんは驚いた顔をして首を横に振っている。うん、グレン? パパもこの台詞はちょっと違う気がするなぁ……。全く、うちの子は天然なんだから──。でも、近くで見ると本当に可愛いな、この子……。あ、瞳がお花みたいで綺麗だなぁ……。うん、声変わりしてないのかテノール。いや更に高いアルトいや、ボーイソプラノだろうか。とても可愛い声質で見た目ともマッチしていて王の好みドンピシャな気がする。これは貞操も何もかも全てを守ってあげないと……。

「グレンさん! 俺、身寄りないでしょう? だから一人でもちゃんと生きていけるように戸籍を作るわけでしょう? 仕事しないと生きていけないし……。俺、これ以上甘えたらいけないと思うの!」

 なんて事だ。こんな幼い子供にこんな台詞を言わせてしまうなんて……。よし、決めた! この子は絶対に俺の手で、俺の子として幸せにする!

「今日からパパ達が傍にいるからもう安心していいんだよ~っ」

 ギューッと抱き締めると彼は腕のなかでジタバタしていた。そして抵抗するのが疲れたのか大人しくなり、手を離すとサラに目配せをした。彼女も彼女で意図を理解したのか小さく頷いてルカくんの後ろからそっと包むように抱き締めた。

「ここに来るまでに色々あったのね……。でもまだ甘えて良い年頃なのだから無理しなくて良いのですよ?」
「え、あ、あの……」

 今度はジタバタせずにワタワタし始めて、少し大人しくなったときにサラがペンを持ったままの手にそっと添えて「ルカ」とサインをした。うん、よくやった! さすがは俺の奥さんだ。

「え…………あ、ちょっと」

 ルカ君が書類を奪おうとする瞬間、様子を見守っていた役人がサッと書類を先に手に取った。よし、お前! よくやった!  心のなかで褒めるとグレンもクスクス笑ってルカくんの頭を優しく撫でている。

「……ルカさんの手がペンをきちんと持ってましたから大丈夫でしょう。ルカさん、ランドルフ伯爵、ランドルフ伯爵夫人、ご子息のグレン様。おめでとうございます」
「うん、ありがとう」

 さぁ、家に帰ろうかといまだに渋るルカくんをグレンに任せて馬車へとサラをエスコートして歩きだした。




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