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交換日記
しおりを挟む兄、兄~っ! おーきーてーっ! 起きてってばぁ~っ!
もぉ! 俺、学校に遅刻しちゃうでしょーっ!?
「ん…………るー? ちこ、く……? あー、朝か……」
朝、目が覚めるとやるべき事は愛しの弟である瑠架がくれた掛布団を名残惜しいがユウ・ゲンに預けること……。そして魔法で作ったベッド周りの壁を取り払う前にユウ・ゲンから複写しておいたパンを取り出して早めの食事をすること……。そして瑠架。いや、ルカが作ってくれた俺好みのブラックコーヒーを飲みながら、ルカと再会したあの日から毎日続くバインダーノートによる交換日記と言う手紙を読むのが日課だ。
「ルー、おはよ……」
ー・ー・ー・ー・(兄と俺の交換日記!)・ー・ー・ー・ー
兄~っ! あのね? 聞いて聞いて! 保存料理、増えたんだよ!
新作メニュー
・クリームシチュー(チキン、鮭、トマトの3種)
・グラタン(キノコ、カボチャの2種)
・グラタンパン(チキン、キノコの2種)
・トマトカップのグラタン
・クリームコロッケ(鮭、カボチャの2種)
自信作なんだから絶対に食べてね! 次は味噌汁も作るね!
米とスパイスがあれば絶対にカレー作るのに……。
でもいつかは作る!
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
なるほどシチューにグラタンか……。これまた美味しそうなものを作ったなぁ……と感心すると同時にこの世界の料理は絶対に食べられないなと確信をしてしまうのは仕方ないことだと思う。
フ・クシャ。全部頼めるか?
【わかったナリ♪】
今日の昼にでも食べようかな……。ルカはきっと味の感想を欲しがるだろうし……なんて思いつつも頭の中では別のことを思っていた。
ルカは俺の手荷物を見てないんだろうな……。きっと……。
まぁ、俺の手荷物を勝手に見るとは思わないけども、見たら見たでランドルフ伯が俺に相談してくるくらいにはキッチンに引き込もって、隠れて恐ろしいくらい料理してるのだろうし……。
あの日、俺が言わなかった手荷物に少量の発芽玄米。そして少量の色んな銘柄の米。これに関してはお客がプレゼントしてくれたものだった。そして仲間内でキャンプ行く予定だったからカレー用に買い集めた某メーカーのスパイス各種。ココナッツミルク、米油、小玉スイカ、サラダ用のパスタ等など色々ある。
重たい酒類は移動するときにコンビニなどで買う予定だったから手元には無いが、実はキャンプするのに必需品の蚊取り線香もあったりする。臭いや煙がどうであれ、蚊取り線香が一番効く気がするんだ。
さっきも言ったが米に関しては客からプレゼントとしてもらったのだ。最近流行りなのか2合分に小分けされた銘柄米の詰め合わせ。それ以外は友人達とキャンプに泊まりで行くための食材だった。スパイスに関してはカレールーではなく本格的なカレーを作るため。だから手元にいろんなサイズの紙皿があり、青空の下で焼き肉するから火に強い竹の割り箸、プラスチックのスプーンとフォーク、ジップの密閉袋だって実はある。その他にも便利そうなものは買った。
……まぁ、結局ルカを殺したアイツに俺も殺されてキャンプには行けなかったけどな。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
兄~っ! 会いたいよぉ~っ!
兄に頭を撫で撫でして欲しいよぉ……。
ギュッてして欲しいよぉ~っ!
えぇーん、兄とまた一緒に暮らしたいよぉ……。
パパもママもグレン兄さんも、ヨハンたち家の人みんな大好きだけど兄がいないのやだよぉ~っ!
兄が王子を辞めたら一緒にランドルフ領に行こうね!
兄~っ! 大好きだからねっ!
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
「ぐはっ! こいつは毎度毎度……。一日おきに朝から悶えさせる天才か!」
手に持っていた食後のミルクを飲む前で本当に良かったわ……。飲みながら読んでたらきっと噴水芸みたいに噴いてたと思う。そんなことを思いながら死んだときよりも幼い姿をしていたルカを思い浮かべてノートを撫でていた。
うちの家系って男はなんでか成長が著しく遅くてなぁ……。俺も中3くらいまでは身長順だと前の方だったし……。てか、ほぼ先頭だったなぁ……。お蔭で高校生から成人するまでは成長痛が酷いの何のって……。ちなみに女は成熟で愛流は中学入る頃には既に160は越えてた。あれ? なんか思い出したらムカついてきたな……。
ルカ……。俺もお前と一緒にいたい。会いたい──。
前のように毎日抱き締めて暮らしたいよ……。でも、もう遺伝子上は兄弟ではなく、ルカとは関係の無い別のものになったから、一緒に暮らせるようになったらその時はもう我慢も容赦もしないと思うけどそれは許せよ……。
交換日記をユウ・ゲンに預け、食器である紙皿は土に還るタイプのものなのでクリーンを使って綺麗にした後、土魔法で退化させて粉々に粉砕して消した。
ルカ……。俺の可愛いルカ。世界で一番愛してる。
でもゴメン。今は無理なんだ……。国王である父が俺をまだ有用だと思っているみたいだから……。擬態して何とかしないといけないな……。それにまた腹の探りあいをしないといけないかな……。
あの日、ランドルフ伯の邸に行ったことをまだ勘繰られているし……。まぁ、屋敷が近づいたときに馬車の車輪を少しだけ欠けたり歪むように魔法で石をわざと踏ませて点検のために一番近く、なおかつ護衛に子息であるグレンがいたために邸内に入ったことは父の付けた御者が偶然であることは王と宰相に説明をしていたから偶然で片付いた。しばらくは使えないな……。
さて、3月になれば俺は16歳になる。王子とはいえなにもしてこなかったし、貢献してない名ばかりの王子なのだから、そろそろ自由にしてくれないかな。自分の道を定めてもいい頃合いだと思うんだ。
「……ふっ。それにしたって父上である陛下も幼いグレンに不覚にも一目惚れして、更に幼い俺にバレるなんて間抜けなところもあるものだ」
実は幼い頃から3つほど年の離れているにも関わらずグレンを知っていた。もともと愛流と瑠架がクリアするのに躍起になっていたクソみたいな設定のゲームのキャラだから覚えてたし目に留まったのだが、遠目でも異常とも思える狂気染みた目を見てすぐに理解した。
あの好色ジジイは10にも満たない幼い子供を犯して自分の子を孕ませたいのだと……。
だから俺は陛下。その時はまだ王太子だったが生誕パーティーの時に唯一俺に挨拶に来てくれたランドルフ伯と夫人にそれとなく教えてやったのだ。
本当はご子息の人となりを見て私の従者を頼みたかったのだがそれは私も彼にとってもとても危険なようだから諦めることにするよ。誰とは言わぬが到底応援など出来ぬ思いを抱いているようだからね……と──。
その言葉は予想外だったにも関わらず二人は笑顔を崩さずに俺と話をしながら周囲を観察をしていた。まだまだ幼い5歳である子供の戯れ言に耳を傾けてくれた。しかも観察した結果、信じてくれたのは意外だったのを覚えている。それからと言うもの今も昔も変わらず顔を会わせれば俺の心配をしてくれるせいか、こちらの世界では国王よりも彼の方が父親とも思える程には慕っている。そしてあのパーティーで挨拶を終えて別れる時に遠回しに礼を言われたのだ。
殿下、貴重なお話をありがとうございます。私共も殿下のように色々なことを想定して模索せねばなりませんね。何か御座いましたらなんでも申し付けください。力になれることが御座いましたら我々はお手伝いいたします!
と、約束してくれたけど……。あのゲスな陛下の血を引いてるから貴方の息子にしてくれないか──とはさすがに言えないかな……。いや、本心は土下座してでも言いたいけどグレンの件で申し訳なさ過ぎて言えないわ……。俺はそこまで厚顔無恥じゃないと思ってるし……。領民くらいなら許してくれるかなぁ……。
ふと時計を見ればそろそろ侍女のリズが来る時間だ。着替えと身なりを整えて壁を撤去しなければ──。
「クリーン(風呂上がり)」
それにしたって魔法ってやっぱり便利だよなぁ……。クリーン(風呂上がり)で本当に風呂入ったときみたいに体が温まってるし、髪も全てが綺麗になってるし──。
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