裏側・クソゲーの異世界で俺、どうしたらいいんですか?

けいき

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アツはナツい!

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「あーつーいーーっ!」

 夏とかマジむーりー! っとばかりにぐでぇ~んと部屋のソファーで伸びているルカだったが部屋のドアをノックされたことに気づかなかった。

「入りますよ? ……って、ルカっ!? 具合でも悪いのですかっ!?」
「あれぇ~? グレン兄さん……。ノック無しで入ったらダメでしょ~? もぉ~……」

 如何せん暑すぎて話し方も体と同じく、ぐでぇ~んとやる気が一切感じられない。確かに今の季節は夏。しかも本日は夏真っ盛りの猛暑日である。ニュースでよく聞く熱波到来っ! て感じなのです。しかも現在窓開けても風なんか一切感じられない完全なる無風。暑いことこの上ない。窓開けない方が涼しく感じたりもする。まぁ、実際は暑すぎてどっちが正解なのかわからないだけだけど……。しかも少しでも快適に過ごしたいと思ってシャツのボタンを半分ほど開けたのにグレンによって前を閉じられてしまった。

 この世界の常識は男であれ女であれ無闇に肌を見せるのははしたない!

 ……なのである。男だらけの騎士団の鍛練後なら上半身裸が許されるくらいだろうか……。つまりは現代だったら夏の街中で時折遭遇するへそ出し短パンなんて風紀を乱すと言う理由で逮捕案件らしいのだ。逮捕かぁ~と思ったけども、兄いわくこの世界には風俗店。えーっと娼館があるみたいなんだけどその人たちの格好よりも現代ファッションはヤバイらしい……。分かりやすく言えばヘソが見える=裸同然ってことなんだろう。女性が夏でも肘まで袖のあるキッチリしたドレスを着ている時点で女性は腕や足をさらけ出すこと自体がはしたないのである。もし自分が女の子でギャルだったらこの世界にきて発狂してるのではなかろうか……。足見せと言えば自分は年齢のわりにかなり幼く見えるお陰で家の中ならば膝丈のハーフパンツをパパ達に許されているくらいの風紀の厳しさ……。ハーフパンツは実は10歳くらいまでが許されるそうだ……ってあれ? 今現在着ている服を含めてグレン兄さんのお下がりの服ってほぼほぼハーフパンツじゃなかったっけ? これらって、実際はグレン兄さんが何歳の時の服だったの?

 ──俺は怖くて誰にも聞けません……。

 因みに女性は扇子を持ち歩いているが涼むためではなく口元を見せないためである。漫画やラノベなどでよくある笑顔での対話をしてるのに扇子で隠れた口元は嘲笑ってるとか……。目隠しと言うかベールと言うか……。とにかく相手に悟られない為の盾みたいなものかなぁ……とは思ったけど、リアルでやっているのを見ると女って怖いわぁ~としか思えない。影ながらドン引いたのは自分の記憶にも新しい……。
 え? 誰を見たか? 春に中庭でお茶会していたママ達ご婦人方ですけど? 実は俺の部屋からママ達からは見えないっぽいんだけど、全体というか様子が見える場所があるんだよね……。はっきり言えばそんなのを見たくないから部屋を変えて欲しいとお願いに行ったのに、それをパパに言ったら却下されるわ、逆にパパやヨハンがお茶会が開かれると時々見に来るようになるわ……。あれって何かを把握するためだったのかなぁ~……。何にせよどうなったのか何て知りたくないからどうなったのかとか聞かないけどね。
 どうやらこの世界の女性は貴族と呼ばれる上流階級には腹黒というか腹になにかを飼っている人しかいなさそうだと思ったのは仕方ない。出来ることなら今でも部屋を変えてほしい。……あ、そんなことを思い出したら少し涼しく感じてきたかも……。

「それで、グレン兄さん。どーしたのぉー?」
「はぁ~……。ルカ、私も皆もルカと同じように暑いんですよ? シャキッとしなさい! シャキッと!」
「むーりー! あーつーいーーっ! 兄さん、あーつーいーっ!」

 ソファーで手をブンブン振っていたが体力の無駄だと思いやめた。それに動けば動くほど暑く感じるのだ。

「日本と比べて湿気がないだけマシとは言えつらい……。クーラーが恋しい……。クーラーが欲し…………」

 俺は咄嗟にグレン兄さんをジーっと見つめた。確かにヨハンに頼めば扇風機のような心地良い風は出してくれるだろう。でもそれを遠隔で維持できないのだから一瞬だけ涼しくても暑さが厳しくなるだけだ。ヨハンが部屋を出ていってしまえば風は消えてしまう。それに比べてどうだろう? 兄さんは氷が出せる。つまりは氷が溶けるまではその場に鎮座していると言うことだ。ならば水の処理をどうにかすれば──。

「グレン兄さん……。兄はどこっ?」
「え? あぁ、ヤトでしたら部屋で仕事をしてるはずですよ?」

 その瞬間、俺はグレン兄さんの両腕をガシッと掴んで「僕が帰ってくるまでこの部屋で待ってて! 絶対だからね!」と言って俺は飛び出した。兄の部屋までダッシュダッシュ! ヨハンに出会ったら一発アウトで怒られるけれど、誰にも会わなかったんだからセーフだよね!


   ◆


「は? 珪藻土の厚めで大きめな板を作れ?」

 部屋で書類の山に埋もれていた兄を無理に連れて来ると俺は兄に頼みごとをした。兄は首をかしげながらも一メートル四方の板を作ってくれたので俺はホクホクしながら見つめた。とりあえずここら辺って言ったから書類の山になっている机の側に作って貰うと椅子に座って机の引き出し等々の動線やらなにやらの邪魔にならない場所に微調整をして置いた。

「……は? 今度はその板の上にはみ出さない程度の氷の柱を作れと? しかも大きめ?」

 グレン兄さんはわけがわからないと言った顔をしていたが魔法で作ってくれた。そしてまた兄に厚い珪藻土で氷を包んでくれと頼むと兄は「あー、成程……」と呟いて作ってくれた。

「ルー? ちゃんと仕事しろよ?」
「はーい! 2人ともありがと~! 大好き~!」

 と俺から頬っぺたにチューした。え? もちろんお礼のチューですよ? そして兄はグレン兄さんを逃がさないと言う感じで捕まえると「俺の部屋にも同じものを宜しく」と笑顔で言いながら出ていった。ふっ……。溶けても吸水放出する珪藻土が何とかしてくれるはず……。まぁ、溢れたとしてもドライでなんとかなるさ、うんうん。現代知識チートって役に立つわぁ~……。んでもって、グレン兄さんが氷出せるのがマジ神だわぁ~……。

 よかった、アニメ映画のサマーウ○ーズのとあるシーンをふと思い出して……。

 それから兄とグレン兄さんは自分達の部屋に作って大量にあったお仕事を終わらせたらしいのだが、何故だか俺たち三人は現在サロンの中心で正座をさせられていた。

「何故怒られているかわかっているね?」

 すみません、全くわからないです。そもそも何でみんな、怒ってらっしゃるんですか? ……あ! もしかしてものスッゴク暑いから? うわぁ~……、でも八つ当たりはんたーい! ……と、まぁ~、これが俺の心からの言葉ですよ、パパ! だって休憩するのに来たら正座させられたんだもの……。でも、首は傾げない。だってパパだけじゃなく、ママにヨハン達全員が鬼のような形相だったんだもの……。

「3人とも酷いわっ!? ママだって暑いのよっ!? 出来ることなら裸で過ごしたいくらい暑いのよっ!?」
「ママ、女の人が昼間から裸とか思ったとしてもダメだと思う」
「しないわよ! したいのを我慢しているってお話よ!」

 ……あ、そうなんだ? ママを見るモニカの顔がママを見てる顔が般若だったからそれに近いことをしてるのかと思ったよ……。ところでなんで怒られてるんだろう?

「……で? あの柱はどういう経緯で出来たのかな?」
「柱? 柱ってなぁに?」

 我慢できずに首を傾げると兄とグレン兄さんに頭を元の位置に戻された。

「ルー、どうやら察するに机の側に作ったやつの話らしい……」
「ん? あぁ、あれかぁ~……。そうそう、アレさぁ? 左右に作ってもらえばよかったなぁ~……」

 と呟くとパパにパァ~ンと頭を叩かれた。まぁ、全く痛くなかったけども……。あぁ、成程。パパは「なんでそんな快適なものを教えないんだ!」と言いたいのかな? おや? そうするとなんでグレン兄さん達は作らなかったんだろう? 俺よりも問題回避能力が上なのに──。

「……父上の方から回ってくる書類が凄すぎて、今日中には終わらないかもしれないことに気が向いていました」
「パパさんから流れてくる書類が尋常じゃなかった……」
「なんかアホらしいことばっかり書いてあったから全部却下にしちゃったけど良いよね?」

 各々が言えば相手はヒートアップしたらしく余計に怒られた。だって仕方ないじゃないか! 目の前に夜寝るまでに終わるのかさえも不明な書簡やら紙の山が机の上どころではなく下にもあったんだから!


   ◆


 そして次の日の朝から毎日、グレン兄さん達はサロンや食堂と言ったよく使う部屋を中心に暑さが和らぐその日まで氷柱珪藻土クーラーもどきを作っていた。
 2日くらい経ってグレン兄さん達が「面倒くさい!」と暑さもあるせいか発狂して考えた結果、簡略化することにしたらしい。使用する氷も氷で兄がグレン兄さんにレクチャーして作ることに成功したらしいドライアイス擬き。気体があまり出ないからどちらかと言えば保冷剤擬きなのかもしれないが、それが完成した次の日に兄が底が分厚い珪藻土の箱を作り、その中にグレン兄さんが保冷剤みたいなドライアイスみたいな水のでない氷を入れて兄が蓋をする。
 しかしパパが欲を出して寝室にも……と言ったら2人にギロリと睨まれていたのは仕方ないと思うの……。ムンムンとした酷い湿気がない分、昼も夜も日本よりはこの世界の方が快適なんだよね……。夜も風があれば心地良いとすら思えるくらいには──。

 欲も程々にって感じ? あー、それにしたって早く夏、終われ~っ!


   ◆  (おまけ)


「グレン兄さ~ん♪ お膝抱っこして~っ!」

 ドライアイス擬きの多用で部屋はすっかり涼しくなったので肌と肌が触れあっても全く不快ではなくなった。実は氷を出せるのがグレン兄さんのみなので負担をかけることになってしまった元凶としては労いも含めて毎夜グレン兄さんの部屋に押し掛けている。
 
「今日も来たんですか? ヤトは?」
「兄? 兄なら部屋で本でも読んでるんじゃないかなぁ~……」

 あれ? もしかして毎日来るから変に思われたのかなぁ……。そんなことを思っていたら案の定、こっちばかり来ていていいのかと聞かれてしまった。

「うん、良いの。毎日グレン兄さんに氷出してもらってるから僕が疲れてる兄さんを癒すの~!」
「ふふ、そうなんですね……」

 ただしグレンはなにも言わないのでルカがお膝抱っこをねだり、そして膝に乗せて会話をすることが果たして彼にとって癒しなのかは不明である。


ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー



 個人的にルカは膝の上で毎日悪戯されてればいいと思う。




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