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前編
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「君との婚約は破棄する」
告げられたのはある平凡な昼下がり。
「えっ……」
「僕はもう君とはやっていけない、そう思うようになった。だからすべておしまいにしたいんだ」
金髪碧眼の婚約者ブルトネットは淡々と己の心を言い表す。
「そんな、急すぎるわ」
もう婚約しているし、結婚に向けての手続きだって進めている。それを今になってやめるだなんて。そんなことになったら周囲の人たちに迷惑が掛かってしまう。
何か大きな問題が発生したというのならともかく。
「でも決めたことは決めたことなんだ」
「そうかもしれないけれど、でもっ……」
「何だ、しつこいな」
「そんな言い方しないで……」
「けど事実だろ? 君がしつこいのは」
喋っている間に段々不機嫌になってくるブルトネット。
眉間にしわが寄っている。
「そういうところも含めて、もう君とやっていくのは嫌なんだ」
「……そう」
「気が合わないっていうか?」
「そうね、分かった。じゃあそうしましょう……」
こうして私たちは別々の道を歩むことを選んだのだった。
それからは色々しなくてはならないことがあって忙しかった。たくさんの人に謝ったし、迷惑をかけているという罪悪感に苦しんだ時期もあった。ただ、周囲の人たちは事情を知ると比較的優しく私に接してくれたので、その点は非常にありがたかったし凄く救われた。
また、両親も、落ち込み気味だった私に励ましの言葉をかけてくれて――それも救いとなっていた。
そして、その婚約破棄事件から一年。
国から命ぜられて参加した能力検査において『国防能力』と呼ばれる能力を宿していることが判明する。
告げられたのはある平凡な昼下がり。
「えっ……」
「僕はもう君とはやっていけない、そう思うようになった。だからすべておしまいにしたいんだ」
金髪碧眼の婚約者ブルトネットは淡々と己の心を言い表す。
「そんな、急すぎるわ」
もう婚約しているし、結婚に向けての手続きだって進めている。それを今になってやめるだなんて。そんなことになったら周囲の人たちに迷惑が掛かってしまう。
何か大きな問題が発生したというのならともかく。
「でも決めたことは決めたことなんだ」
「そうかもしれないけれど、でもっ……」
「何だ、しつこいな」
「そんな言い方しないで……」
「けど事実だろ? 君がしつこいのは」
喋っている間に段々不機嫌になってくるブルトネット。
眉間にしわが寄っている。
「そういうところも含めて、もう君とやっていくのは嫌なんだ」
「……そう」
「気が合わないっていうか?」
「そうね、分かった。じゃあそうしましょう……」
こうして私たちは別々の道を歩むことを選んだのだった。
それからは色々しなくてはならないことがあって忙しかった。たくさんの人に謝ったし、迷惑をかけているという罪悪感に苦しんだ時期もあった。ただ、周囲の人たちは事情を知ると比較的優しく私に接してくれたので、その点は非常にありがたかったし凄く救われた。
また、両親も、落ち込み気味だった私に励ましの言葉をかけてくれて――それも救いとなっていた。
そして、その婚約破棄事件から一年。
国から命ぜられて参加した能力検査において『国防能力』と呼ばれる能力を宿していることが判明する。
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