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後編

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「いやだから女は一人の男に尽くせよ」
「馬鹿じゃないの! 何てこと言い出すのよ! 貴方、女というものを何だと思っているの。おもちゃか何か?」

 遠慮しないからこそ。

「ああ、そんなものだろ」
「サイッテー!!」

 腹も立つ、というものだ。

「もういいわ、私、ガオスとの婚約は破棄するわ!」

 一時の感情に流されて、とかではない。

「お、おい、待てよ」

 いざ切り捨てられる時になって慌て始めるガオス。

「何よ今さら」

 気づくのが遅過ぎる。

「だからアレは遊びだって」
「そうは思えない! それに、遊びとかでそういうことするのも耐えられない! だからもうおしまいにしましょう」
「何でだよ!」
「何で? もう言ったじゃない、数秒前に」

 何を、今になって慌てているの? ――私からすればそんな気持ちだ。

「待ってくれよ!」
「知らないわ、貴方の気持ちなんて。私はもう貴方とは縁を切るから」
「いや待ってくれよ! 気まずいって!」
「貴方の行いのせいでしょう? じゃ、これで。さようなら」

 こうして婚約は破棄となった。

 だがその後ガオスはなぜかやたらとストーカーまがいの行為をしてくるようになって、困っていたのだが、ある時刃物を持った彼が家に押し入ろうとしてきたところを私の父が捕らえて――それによってガオスは地区の警備隊に拘束された。

 彼は犯罪者となったのだ。

 これから先、彼は、労働させられながら生きてゆくこととなるのだ。

 ……ま、自業自得だけれど。

 そして私はというと。
 ガオスとの件の数年後には気の合う異性と巡り会えて、やがて結婚することができた。

 愛しい人とののんびり穏やかな生活――そういうのも案外悪くはないのかもしれない。

 小さな幸せがたくさん積み重なった先にこそ、本当の幸せというものはあるのではないだろうか。

 そんなことを思いながら、今、夫と共に生活している。


◆終わり◆
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