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後編

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「選んでくれてありがとうリーナ」
「お礼を言うべきは私の方よ」
「いやいや、そうじゃない。礼を言わなくちゃならないのはこっちだよ」
「いいえこっちよ!」
「そうじゃない、こっちだよ!」

 ちょっぴり言い合いをしたり。
 でもそこには幸福の色だけが存在している。

 ちなみに、かつて私を切り捨てた元婚約者の彼はというと、あの後落石事故に巻き込まれて大怪我を負い当時婚約していた女性から「身体が不自由な人とはやっていけない」と言われて婚約破棄され、それによって情緒不安定になってしまったそうで――ある日病室で暴れすぎてベッドから転落し、打ち所が悪くその場で死亡してしまったそうだ。


 ◆


「リーナ、今日は髪をといてもいい?」
「ええ、いいわよ」

 私とオルクルは夫婦になった今もとても楽しく暮らしている。

 オルクルはいつも私の髪を褒めてくれる。

 好きだと、美しいと、そう言ってくれるのだ。

 彼のそういうところが私は大好きだ。

 一緒に過ごしている、ただそれだけで強い幸福を感じられる――それは多分彼がとても良い人だからだろう。

「さらさらだね」
「ありがとう」
「リーナの髪、本当に好きだよ」
「そう言ってもらえると嬉しいわ」


◆終わり◆
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