青春を謳歌したい! 〜剣と魔法の学校生活〜

四季

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1.入学許可を手に入れた!

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「やーったぁーっ! 入学許可出たーっ!」

 巻かれていた紙を両手で広げ、歓喜の叫びを響かせたのは、茶髪の少女。

 フレア・フェン・エトシリカ。
 彼女はエトシリカ王国の第二王女であり、病弱な姉の代わりに将来女王となる予定の王女である。

 十六歳のフレアは、半年ほど前に『学校』というものの存在を知り、そこが歳の近い者たちと共に過ごせる場所だということも知った。

 彼女は「私も学校に行きたい!」と言い出すが、一日二日で入学することはできない。そもそも国王からの許可がなければ入学はできないし、実際入学するためにはそこからさらにまた手続きが必要となってくる。そのため、入学が決まるまで、結構な時間がかかるのだ。

 そしてついに。
 フレアが待ち望んでいたその日がやって来た。

「やーった、やーった、やーったぁー!」

 国内でもかなり知名度の高いガーベラ学院へ、入学が決まったのだ。
 その手紙を受け取ったフレアは、自室の中でくるくると回転して踊りながら、喜びの情を全身で露わにする。

「何を騒いでる」

 フレアが回転して動き回っていたその部屋に、一人の青年が現れた。
 彼は、少年から青年へと移りゆく、そんなどちらとも取れないような年代に見える顔つきをしている。小さな瞳は紺色で、目つきは狼のように鋭い。

「あ! リカルド! ちょうどいいところに来たわね!」

 狼のような鋭い目つきながら呆れた顔をしている青年——リカルドに、フレアは素早く近づいていく。入学許可証でもある巻き紙を開いて見せつけながら。

「見て! 入学許可出たの!」
「……出ちまったか」
「何よー。その言い方はー」

 リカルドは、やれやれ、とでも言いたげに片手で頭を掻く。
 それに対しフレアは頬を膨らませた。

「もー。リカルドはすぐそういうこと言うんだから」
「本心だ」
「何それ! もっと良くない!」

 フレアは、数秒口を閉ざした後、両手をそれぞれ腰に当てながら「まぁいいわ」と呟く。

「とにかく! ガーベラ学院への入学は決まったから!」

 純真無垢な目で迷いなく述べるフレアを、リカルドは呆れたような目つきで見ている。付き合いきれない、というような顔だ。しかし、当のフレアは、そんな目で見られていることに気がついていない。

「ガーベラ学院……あんなところに入学するのか? あそこは確か、魔導や剣術なんかを学ぶやつらが入るところだろ」
「いーいーのー。許可が出たのよ、ガーベラ学院なら大丈夫ってことなんでしょ」
「大丈夫かよ……」
「まさか! 大丈夫よ! だってほら、リカルドも一緒だし?」
「マジかよ……」

 リカルドは首を左右に振りながら、額に手を当てる。
 呑気さに頭痛がしてきた、とでも言いたげな動作だ。


 ガーベラ学院に入学することとなったフレアは、その日からすぐに入学準備を開始した。
 入学手続きと寮の手配は既に済んでいる。しかし、入学にあたってすべきことは、それだけではない。必要な資料の用意。最低限必要な持ち物の用意。制服の用意。そういったことも必要なのだ。それも、フレア一人分ではなくリカルドの分もだから、なおさら。


 王国暦一○一四年、四月末。

 フレアとリカルドが、ガーベラ学院へ出発する日が来た。

「いよいよ出発ね!」

 白っぽい麦わら帽子を被り、水色のワンピースを着て、フレアは出掛ける気満々だ。馬車に乗り込む直前だというのに、彼女はいつもと変わらず楽しげに回転している。

「……大丈夫なのか、本当に」

 剣を腰に携えたリカルドは、今日も変わらず呆れ顔。眉間には深いしわが寄っている。

「早速乗りましょ! リカルド!」
「話が早いな……」

 馬車は二人乗り。乗るところは個室のようになっていて、雨も砂埃も防ぐことができる仕様だ。座席は二人掛けのソファのようになっていた。

 荷物は足の前の地面に置く仕組みだが、既に係の者が乗せている。
 そのため、フレアやリカルドが自分の手で荷物を運び込むことは、しなくていい。

「いざ、しゅっぱーつ!」
「不安しかないな」
「何言ってるの? 大丈夫に決まってるじゃない。リカルドがいるんだから」
「う……」

 リカルドは顔を隠すようにフレアから目を逸らした。露骨に目を逸らされたフレアだが、慣れているからか、さほど気にしていない様子。ただ、リカルドが顔面を赤くしていたことは、フレアは知らないままなのだろう。


 数時間でガーベラ学院がある丘へと到着。

 馬車から降りたフレアを迎えたのは、果てしない空と広大な土地、そして煉瓦造りの建物だ。見上げれば澄みきった空があり、見渡せば生命の息吹を感じさせる草原があり。そして、見下ろせばエトシリカ王国の都を真上から目にすることができる。

 一日のほとんどの時間を城の中で暮らしていたフレアは、世界の広さに感嘆の声を漏らす。

 彼女に続いて馬車から降りてきたリカルドは、両手に大きな鞄を持っていた。ただし、彼自身の荷物はほんの一部。その半分以上が、フレアの荷物である。重そうな鞄を軽々と持ち、彼は、はしゃいでいるフレアの背中をじっと見つめる。

「王女! 走り回るな!」

 やがて、リカルドは声を発した。
 新鮮な場所への興奮で正気を失いかけていたフレアは、彼の声かけによって正気を取り戻す。

「あ。そうだった。走ってる場合じゃなかった」
「まったく……しっかりしてくれよ」
「うん! しっかりする! これからは、ね」

 馬車から十メートルほど離れたところにまで進んでいっていたフレアは、軽やかな足取りでリカルドのところまで戻ってきて、彼が持っていた大きな鞄の片方をすっと奪い取る。が、直後、「重っ!」という叫びと共に鞄を地面に落とした。フレアは信じられないような顔をして「こんな重いの持ってたの!?」とリカルドに問いかける。王女の自由奔放過ぎる振る舞いに呆れきっているリカルドは、はぁと溜め息をつきながら「騒がしいのは勘弁してくれ」と述べる。そして、地面に落ちた鞄を片手で持ち上げた。

「今日は、学院長に挨拶しに行くんだろ」
「えぇ!」
「走り回っている場合じゃないだろ」
「確かに! そうね。早く行かなくちゃ」
「はぁ……」

 リカルドはまたしても溜め息をつく。
 彼の暮らしは溜め息に満ちていた。
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