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39.年明けも授業あり!
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年末年始の特別休暇は終わった。
また当たり前のように授業が始まる。
「王国暦三二五年、南の国境付近で爆破事件が起こってネ——」
現在花組は戦争史という授業を受けている最中だ。この戦争史、エトシリカ王国内のことが主な内容ではあるのだが、意外にも難易度が高い。タルタルもそれを分かって一つ一つ丁寧に説明していくのだが、すべての生徒がすんなり理解できるわけではない。
フレアたちの年代の者が育ってくる間に、大きな戦争はなかった。ちょっとしたいさかいはあったけれど、それはとても小規模な出来事で、一般市民の暮らしにまで影響を与えるほどではなく。そのため、今の十代後半の者たちは、戦争というものを知らないのだ。
だからこそ、理解しづらいというというところもある。
戦争というもの一度でも体験していれば、もっと理解しやすかったことだろう——無論、平和であるに越したことはないのだが。
「それを機に険悪になったエトシリカ王国と南の国はネィ、小競り合いを起こすようになっティ——」
王族としてそれなりの教育を受けてきたフレアでさえ、戦争をその身で体験したことはない。歴史上の出来事として習うことはあっても、それは、実際の戦争とはまったくの別物だ。
「ミルフィさん、分かります?」
タルタルが教室の一番前で説明している最中、カステラが小声で尋ねた。
「いーえ。あたし、戦争とかよく知らないのよねぇ」
いかにも退屈そうな顔をしているミルフィは、これまたとても小さな声で、カステラの問いに答えた。
「カステラちゃんはどうなの? 理解できてる?」
「二三割……でしょうか……」
久々の授業が戦争史。
いきなりの重苦しい内容に、皆、表情を暗くしていた。
「でもでも、次の術式は楽しみですよねー」
「それはカステラちゃんだからじゃない?」
「え。そうなんですかーっ」
「カステラちゃんは本当に魔術関連が得意だものねぇ。羨ましいわ」
すぐ後ろのミルフィとカステラが話していることをこっそり聞いていたフレアは、「カステラちゃんは魔術関連が得意」というところに、こっそり共感する。話に参加するためには振り向かなくてはならないので、今すぐに話に入っていくことは難しい。が、フレアは耳だけで参加していた。
別の日、格闘術の時間。
花組生徒は全員外へ出て、タルタルより格闘術について習う。
前回の授業は去年。ということで、復習から始まった。基本的な動作の復習、これまでの授業で習った状況別対応の復習、そしてようやく新しい内容に入っていく。
「ねぇミルフィ。さっき先生がやってた見本、よく分からなかったの。教えてもらえない?」
今日習うのは、相手が刃物を持っている時の対処法。
それも、応用編だ。
最初にタルタルが動きの見本を見せてくれたのだが、フレアにはよく分からなかった。何となくかっこいいことは感じられたが、どうやっても再現ができない。
そこで、フレアはミルフィに教えてもらうことを決めたのだった。
「えぇ、良いわよ」
「ありがとう!」
「可愛いフレアちゃんのためだもの、何でもするわ。さ。じゃあ最初からやって見せるわね?」
ミルフィは華やかな美女で戦いになんて縁がなさそうだ。しかし、実際にはそんなことはなく。それどころか、格闘術が非常に得意。リカルドと模擬戦闘を行っても勝負になるくらい強い。
「まずはね、こっちへ重心を寄せるのよ」
「なるほど……」
気のいいミルフィは嫌な顔をせず教えてくれる。
「それから、相手が突き出そうとする瞬間に」
「ふむふむ」
「……こう! 油断させることが大事よ」
「そっか! 分かった気がするわ!」
タルタルの手本だけではよく分からなかった。けれども、ミルフィの手本は比較的分かりやすくて、フレアは急激にできたような気分になってくる。
「じゃ、やってみて?」
「うん!」
実技科目であっても、ある程度の成績を修めておかなくては、卒業はできない。実技は個人の肉体の問題もあるので、座学よりかは合格ラインが低く設定されている。けれども、何もせずに合格して卒業できるほどガーベラ学院は甘くないのだ。
定められたことを成功させなければ留年になる。
それは、実はよくあることだとか。
王女であっても戦わなくてはならない。貴い者であっても、ある程度戦えるようにならなければ実技科目で落とされる。
「こんな感じ?」
「そうねぇ。雰囲気は問題ないと思うわよ? ただ、この時は右手をもうちょっとこっちに……」
フレアがミルフィに教わりながら、一つずつ動き方を学んでいく。
その時フレアは、タルタルよりミルフィの方が教えるのが上手い気がした。何ならミルフィが先生をすればいいのに、と思ってしまったくらいだ。
今回の魔術実技の授業、その内容は、炎の初級魔法を使って木の枝に火を点けることだった。
魔術の行使には才能が要る。そのため、体術や剣術などと比べると、個人差が大きい。人間であれば誰もが少しくらいは才を持っているものだが、非常に得意な人もいればかなり苦手な人もいる。
よって、この授業では、生徒個人の魔の才を考慮しつつ授業が行われている。
ちなみに、フレアの才能は中程度。
魔術をみるみる成功させられるほどの才能はないけれど、練習すれば徐々には成功に迎えるくらいの能力はある。
「イノア! 今日はペアね。よろしく!」
「あぁ、うん。よろしく」
今日の授業では、二人組を作ることになった。
魔術の才能の程度が近しい者同士で組まねばならないが、それ以外の条件はない。しかい、フレアの場合同程度の才の者が友人に少なくて。そのため、そこまで仲良くないイノアと組むことになってしまった。
「ちゃんとできそう?」
ペアになり、木の枝を受け取った直後、フレアは尋ねる。
「さぁ。大抵のことはやってみないと分からないよ」
「確かに! それもそうね!」
言いながら、フレアは台の上に枝を重ねて置いていく。
「そっちこそ、大丈夫?」
「うーん。私は正直……自信はないわ」
今のフレアには成功させる自信がなかった。
炎の初級魔法はこれまでにも習ったことがある。そのため、多少は使えるようになっている。これまでの練習の成果だ。
しかし、枝に火を点けるとなると、簡単ではない。
炎をコントロールする必要が出てくるからだ。
また当たり前のように授業が始まる。
「王国暦三二五年、南の国境付近で爆破事件が起こってネ——」
現在花組は戦争史という授業を受けている最中だ。この戦争史、エトシリカ王国内のことが主な内容ではあるのだが、意外にも難易度が高い。タルタルもそれを分かって一つ一つ丁寧に説明していくのだが、すべての生徒がすんなり理解できるわけではない。
フレアたちの年代の者が育ってくる間に、大きな戦争はなかった。ちょっとしたいさかいはあったけれど、それはとても小規模な出来事で、一般市民の暮らしにまで影響を与えるほどではなく。そのため、今の十代後半の者たちは、戦争というものを知らないのだ。
だからこそ、理解しづらいというというところもある。
戦争というもの一度でも体験していれば、もっと理解しやすかったことだろう——無論、平和であるに越したことはないのだが。
「それを機に険悪になったエトシリカ王国と南の国はネィ、小競り合いを起こすようになっティ——」
王族としてそれなりの教育を受けてきたフレアでさえ、戦争をその身で体験したことはない。歴史上の出来事として習うことはあっても、それは、実際の戦争とはまったくの別物だ。
「ミルフィさん、分かります?」
タルタルが教室の一番前で説明している最中、カステラが小声で尋ねた。
「いーえ。あたし、戦争とかよく知らないのよねぇ」
いかにも退屈そうな顔をしているミルフィは、これまたとても小さな声で、カステラの問いに答えた。
「カステラちゃんはどうなの? 理解できてる?」
「二三割……でしょうか……」
久々の授業が戦争史。
いきなりの重苦しい内容に、皆、表情を暗くしていた。
「でもでも、次の術式は楽しみですよねー」
「それはカステラちゃんだからじゃない?」
「え。そうなんですかーっ」
「カステラちゃんは本当に魔術関連が得意だものねぇ。羨ましいわ」
すぐ後ろのミルフィとカステラが話していることをこっそり聞いていたフレアは、「カステラちゃんは魔術関連が得意」というところに、こっそり共感する。話に参加するためには振り向かなくてはならないので、今すぐに話に入っていくことは難しい。が、フレアは耳だけで参加していた。
別の日、格闘術の時間。
花組生徒は全員外へ出て、タルタルより格闘術について習う。
前回の授業は去年。ということで、復習から始まった。基本的な動作の復習、これまでの授業で習った状況別対応の復習、そしてようやく新しい内容に入っていく。
「ねぇミルフィ。さっき先生がやってた見本、よく分からなかったの。教えてもらえない?」
今日習うのは、相手が刃物を持っている時の対処法。
それも、応用編だ。
最初にタルタルが動きの見本を見せてくれたのだが、フレアにはよく分からなかった。何となくかっこいいことは感じられたが、どうやっても再現ができない。
そこで、フレアはミルフィに教えてもらうことを決めたのだった。
「えぇ、良いわよ」
「ありがとう!」
「可愛いフレアちゃんのためだもの、何でもするわ。さ。じゃあ最初からやって見せるわね?」
ミルフィは華やかな美女で戦いになんて縁がなさそうだ。しかし、実際にはそんなことはなく。それどころか、格闘術が非常に得意。リカルドと模擬戦闘を行っても勝負になるくらい強い。
「まずはね、こっちへ重心を寄せるのよ」
「なるほど……」
気のいいミルフィは嫌な顔をせず教えてくれる。
「それから、相手が突き出そうとする瞬間に」
「ふむふむ」
「……こう! 油断させることが大事よ」
「そっか! 分かった気がするわ!」
タルタルの手本だけではよく分からなかった。けれども、ミルフィの手本は比較的分かりやすくて、フレアは急激にできたような気分になってくる。
「じゃ、やってみて?」
「うん!」
実技科目であっても、ある程度の成績を修めておかなくては、卒業はできない。実技は個人の肉体の問題もあるので、座学よりかは合格ラインが低く設定されている。けれども、何もせずに合格して卒業できるほどガーベラ学院は甘くないのだ。
定められたことを成功させなければ留年になる。
それは、実はよくあることだとか。
王女であっても戦わなくてはならない。貴い者であっても、ある程度戦えるようにならなければ実技科目で落とされる。
「こんな感じ?」
「そうねぇ。雰囲気は問題ないと思うわよ? ただ、この時は右手をもうちょっとこっちに……」
フレアがミルフィに教わりながら、一つずつ動き方を学んでいく。
その時フレアは、タルタルよりミルフィの方が教えるのが上手い気がした。何ならミルフィが先生をすればいいのに、と思ってしまったくらいだ。
今回の魔術実技の授業、その内容は、炎の初級魔法を使って木の枝に火を点けることだった。
魔術の行使には才能が要る。そのため、体術や剣術などと比べると、個人差が大きい。人間であれば誰もが少しくらいは才を持っているものだが、非常に得意な人もいればかなり苦手な人もいる。
よって、この授業では、生徒個人の魔の才を考慮しつつ授業が行われている。
ちなみに、フレアの才能は中程度。
魔術をみるみる成功させられるほどの才能はないけれど、練習すれば徐々には成功に迎えるくらいの能力はある。
「イノア! 今日はペアね。よろしく!」
「あぁ、うん。よろしく」
今日の授業では、二人組を作ることになった。
魔術の才能の程度が近しい者同士で組まねばならないが、それ以外の条件はない。しかい、フレアの場合同程度の才の者が友人に少なくて。そのため、そこまで仲良くないイノアと組むことになってしまった。
「ちゃんとできそう?」
ペアになり、木の枝を受け取った直後、フレアは尋ねる。
「さぁ。大抵のことはやってみないと分からないよ」
「確かに! それもそうね!」
言いながら、フレアは台の上に枝を重ねて置いていく。
「そっちこそ、大丈夫?」
「うーん。私は正直……自信はないわ」
今のフレアには成功させる自信がなかった。
炎の初級魔法はこれまでにも習ったことがある。そのため、多少は使えるようになっている。これまでの練習の成果だ。
しかし、枝に火を点けるとなると、簡単ではない。
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