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前編

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 幼馴染みであるバッカトーヌと婚約することになった時、あたしは嬉しかった。

「あたしたちならきっと幸せになれるよね!」
「ああ、そう思う」
「だってずっと一緒にいたしお互いのことたくさん知ってるもん!」
「そうだよな!」

 あたしの人生の中で一番近い存在の異性は彼だった。
 他に彼以上に親しい異性はいなくて。
 だからその彼と結婚すればこれまでみたいに楽しく暮らしていけると純粋に思っていた。

「家族みたいなものだしね~」
「それな。悪いとこまで知ってるしな」

 だってもう既に家族みたいな近さなんだもの。
 上手くいかないわけがないよ。

 そんな風に思っていた。

「もうっ、そんなこと言わないでよ!」
「はぁー?」
「何それっ」
「ああはいはい、落ち着け落ち着け」

 あたしたちはこれまで何度も喧嘩もしたけれどそのたびに仲直りしてきた。

 だからこれからもきっと色々あっても上手くいく。
 そう思って疑わずにいた。

「結婚するんだし、これからは良いところを見るようにしようよ!」
「そうだな、分かってるよ、冗談だって」
「バッカトーヌのこと大好きだよ!」
「……うわはず」
「ま! た! そんなこと言って! マイナスなことは言わないの!」
「何なんだよ……ま、でもそれはそうだな」
「ね? 笑っていこう!」
「ああ、そうだな」

 幸せの道は続く――真っ直ぐに、呆れるほど純粋に、そう思っていたのだ。
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