上 下
3 / 3

3話

しおりを挟む

 ここは平民のための薬屋だ。
 そして地域の人たちのための薬屋でもある。
 そこに王族が現れるなんて。
 まったくもって理解できない、脳が追いつかない――こんなことは初めてで。

「よければ城へ来てください」
「え……と、あの」
「できればご両親にお話をさせてください」
「あ、はい……」

 その後私は彼と共に城へ向かった。

 そして彼の妹である王女と対面する。
 まるで輝く女神であるかのような王女、可愛らしく美しい彼女は、病に伏せ痩せ細っていた。
 見ていてあまりに気の毒で。
 彼女の対応の丁寧さも相まって、できるなら彼女の病を何とかしたいと思うようになった。

 彼女から症状についてしっかりと聞き込み、効果がありそうな薬草を集める。そして一つずつ彼女に飲んでみてもらう。どれが効果があるかは分からないが、効きそうなものから順に、飲んでもらった。

 その結果、王女は健康を取り戻した。

「ありがとうございます、本当に……回復してきました」

 王女は徐々に笑うようになった。
 するとより一層美しくて。
 多分私がこれまで見てきた女性の中で一番美しい人だ。

「感謝しています。本当に。本当に……ありがとうございます」

 その後色々あって私は王子と結婚。救った王女と親戚になることができた。いやもちろんそれを狙っていたわけではないけれど。流れに乗っていたら自然とそういう形になったのだ。

 ちなみにディヴァーはあの後風邪をこじらせて亡くなったらしい。

 医師が紹介した薬を「絶対に飲むものか! 薬など毒! どんな病も自分の力で治してみせる!」などと言って飲まず、その結果状態が急激に悪化し、死に至ったらしい。


◆終わり◆
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...