上 下
1 / 2

前編

しおりを挟む
「唐突なのは悪いと思うが、婚約破棄とさせていただくことに決めた」

 ある晩餐会にて、私は王子から婚約破棄を告げられた。

 話を聞けば、婚約破棄の理由は私が王子の幼馴染みを虐めたからだそうだ。

 しかし心当たりはない。
 そもそも、彼の幼馴染みのことは見たことがあるし知っているけれど、彼女と関わったことはないのだ。
 そんなだから、婚約破棄の理由がそれだと告げられても、理解不能だった。

 けれども私に抗う手段などなかった。
 突きつけられた婚約破棄をただ大人しく受け入れる外なかったのだ。

「王子、今晩会わなーい?」
「いいよ」
「うっふっふぅー! さいっくぉーう!」
「相変わらず提案が最高だね」
「ありがとぉーう! 二人になったら楽しもうねっ」

 物陰で王子と幼馴染みがいちゃいちゃしているのを見ながらも、私は静かに去った。

 もうここへ戻ることはないだろう。
しおりを挟む

処理中です...