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前編

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「ねぇ~え、ずっと一緒にいてくれるぅ?」
「ああもちろん」
「婚約者さんはいいのぉ?」
「当たり前だろ、お前だけが好きさ。っていうか、いちいちそういうこと言うなよな。あいつの臭そうな顔思い出しちまうだろ」
「あっそっかぁ~、ごめんねぇ~」

 婚約者フィッフェルが自宅にて薄着で女性と触れ合っているところを目撃してしまった。

「一体何をしているの?」

 私は黙っていられず二人の前に身を出してしまう。

 隠れていた方が良かっただろうか?
 でも私には無理だ。
 忍耐という文字の似合う人間であれば隠れていられただろう。
 でも私はそうでないから。

 だから出ていってしまった――愛を囁き合う二人の前に。

「なっ」
「だぁれ?」
「……婚約者」
「ええっ!!」

 青ざめる二人。
 好き放題しているわりには慌てているようである。

「臭そうな婚約者で悪かったわね」

 魔法で二人の姿を撮影する。
 これは証拠になる。
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