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1話「君とはもうやっていけない、ですって」

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 凛々しくも笑みを浮かべると優しげになる顔、さらさらの黒髪、すらりとしていて引き締まった身体つきで、何を着ても様になる。

 そんな人が私の婚約者だ。

 彼の名はヴィクテー。
 新興領地持ちの家の息子である。

 そんな彼が、ある晩餐会にて、言ってきた。

「君とはもうやっていけない! よって、婚約は破棄とする!」

 ……そんなことを。

 それはあまりに唐突で。だから私は言葉を失うことしかできなかった。今日そんなことを告げられるなんて、欠片ほども想像していなくて。だからきょとんとすることしかできない。

「そんな。どうして……」
「理由なら言っただろう。君とはもうやっていけない、と感じたからだ」

 具体的に教えてほしい。

「なぜです。どうしてそう思われたのですか」
「これ以上話すことはない」
「そんな! 困ります!」

 その時。

「他の女を好きになったから、だよね」

 急にそんな声が聞こえてきて。
 驚いて振り返る。

 そこには小太りの青年がいた。

 蛙のような顔をしていて、体型はふっくら系、手足もやや太めで、しかしながら良質そうな生地で作られた服を着用している。

「何者だ」

 ヴィクテーが警戒したような顔をすると。

「本当のこと、ボクは知ってるんだよね~」

 蛙のような青年はのんびりした調子でそう返す。
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