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前編

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「俺はさぁ、お前にはもう飽きたんだよぉ」

 ある晴れた日。
 婚約者リズムがそんなことを言ってきた。
 なぜか鼻の下を伸ばしながら。

「だからさぁ、お前との関係は終わらせることにしたんだ」
「本気?」
「もっちろぉん。そうだよぉ」
「そう……」
「そ、れ、に、ね? もう好きな人、できちゃったんだぁ。とっても素敵な人でさぁ、出会ったその日から尽くしてくれたんだぁ。あっはははぁ、すぐ尽くしてくれるようになった彼女、誰が聞いても最高の女性だよねぇ? お前とは素晴らしさの階級が違うんだぁ」

 リズムははすはす音を立てて息をしながら長文を発する。

 何を聞かされているのだろう?
 そんな気持ちだった。
 惚れている女性の素晴らしさの紹介?
 特に聞きたいとは思わない。

 しかも、その女性というのは、恐らく彼にとって都合の良い存在というだけだろう。

「そうね、分かった。じゃ、婚約は破棄ということで」
「おぅ!」
「さようなら、リズム」
「おぅ! おぅ! おぅ!」
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