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前編
しおりを挟む同じ年齢の婚約者レットルは結婚の一ヶ月ほど前に一人で旅行に出掛けていった。
行き先は隣国。
急に言われて、その時には既に予定がしっかり決まってしまっていたので、私には「中止してほしい」なんて言う権限はなくて。
ただ受け入れるしかなかった。
無理して作ったに等しい笑顔で「気をつけて行ってきてね」と言うほかなかったのである。
彼の身に何かあったら。そういう心配はあった。人生におけるこの大事な時期に一人遠くへ行くなんて、と、もやもやも多少抱えていた。が、それでも、彼を縛りたくないという思いもあって。それで、彼の行動に理解を示しているように振る舞ったのだ。
――だが帰ってきた彼は変わってしまっていた。
「俺さ、お前との婚約は破棄するわ」
「え」
「ナーニ、お前のこと、もう好きじゃねぇ」
「ど、どうして……急に……!?」
「俺は彼女と生きる」
彼は一人の化粧濃いめの女性を連れて帰ってきていて。
「ナーニ、お前はもう俺の前から去ってくれ。いいな? 俺は彼女と結婚するから。じゃ、そういうことで。ばいばい!」
私は急に切り捨てられてしまったのだった。
どうしてこんなことに……。
こんなことなら旅行に反対すれば良かった……。
暗い気持ちを抱えずにはいられない。
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