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前編
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私には三つ年下の妹がいる。
生糸のような輝かしい金髪に陶器人形のような肌、華やかな雰囲気をまとう二重瞼で、瞳は青く透き通っている——そんな彼女は、父親のお気に入りだった。
それに対して、私は地味な容姿。
顔立ちも華やかさはなく、正直自分でもパッとしない方だと思う。無難ではあるけれど、道行く人が振り返るような麗しさはない。
母親はそんな私のことも可愛がってくれた。が、その母親は妹を生んで数年も経たないうちに病に倒れ、ついにこの世を去った。
それからだ、私が酷い仕打ちを受け始めたのは。
父親は女性に華やかな容姿を求める人だった。だから彼は、私より妹を大事にした——いや、私のことは嫌いだったのだろう。どんな時も妹ばかりを可愛がり、また、妹の意見を常に優先した。
その結果、妹はとんでもないわがまま娘に育ってしまった。
魅力的なドレス。美味しいお菓子。私が少しでも良いものを手にしていると、妹はすぐに奪いに来る。奪おうとして上手くいかなかったら、すべてを私のせいにして、父親に私の悪口を言う。そして、私は怒られ、手にしていたものを失うのだ。作戦があまりに上手くいくものだから、妹はいつしか、ことあるごとにそういうことをするようになった。
そんな環境にいたものだから、私はいつも何も手にできない。
最初は腹が立った。でもいつからか諦めた。期待しなければいい、求めなければいい。そうやって、すべてを諦めて、生きるようになった。
「ねぇ、お姉様ぁ。今度良家の殿方と婚約なさるって本当ぅ?」
「えぇ本当よ。とても素敵な方なの。一目見て惚れ込んでしまったわ」
実は私、先日ある男性と「婚約を結ぼう」という話を始めた。まだ正式に婚約したわけではないけれど、もうすぐ婚約する。
だがそれは愛があってのことではない。
生まれが良家なだけの借金だらけの男性と婚約なんてしたいわけがない。
でも私は、まだ、本当のことを言うわけにはいかないのだ。今は彼を良い人だと言わなくてはならない。なぜなら、そういう作戦だからだ。
「まぁ素敵ねぇ。でも、そんな素敵な殿方、お姉様には惜しいんじゃないかしらぁ」
「そうね。幸せだわ、夢みたい」
私が幸せそうにしているのを見て放っておく妹ではない。それはこれまでの色々な出来事が証明している。私が幸せな時、彼女はほぼ確実に私の幸せを奪いに来る。婚約の件も例外ではないはずだ。
「お姉様、譲ってくださらなぁい?」
「え。どうして」
「だってぇ……お姉様が素敵な殿方の隣に立たれるなんて気の毒だものぅ……。つり合わない殿方と生きていくなんて……そんなことになったらぁ、お姉様が傷つかれるのは見えているものぉ……」
面白いくらい予想通りだ。
こうなることは読んでいた。
「お父様に頼んでくるわぁ! 殿方とはお姉様でなくわたしが婚約することにするってぇ!」
「えー……」
「気にしないでぇ。お姉様は今までみたいに脇役でいてくれればそれでいいのぉ。じゃ!」
妹は勝手に決めてそそくさと去っていった。
これもまたいつもの流れ。嬉しいことや大事なものを奪われる、いやというくらい繰り返してきた展開。
でも、もう今までの私とは違う。
今回だけは妹に奪われることを望んでいる——心から。
生糸のような輝かしい金髪に陶器人形のような肌、華やかな雰囲気をまとう二重瞼で、瞳は青く透き通っている——そんな彼女は、父親のお気に入りだった。
それに対して、私は地味な容姿。
顔立ちも華やかさはなく、正直自分でもパッとしない方だと思う。無難ではあるけれど、道行く人が振り返るような麗しさはない。
母親はそんな私のことも可愛がってくれた。が、その母親は妹を生んで数年も経たないうちに病に倒れ、ついにこの世を去った。
それからだ、私が酷い仕打ちを受け始めたのは。
父親は女性に華やかな容姿を求める人だった。だから彼は、私より妹を大事にした——いや、私のことは嫌いだったのだろう。どんな時も妹ばかりを可愛がり、また、妹の意見を常に優先した。
その結果、妹はとんでもないわがまま娘に育ってしまった。
魅力的なドレス。美味しいお菓子。私が少しでも良いものを手にしていると、妹はすぐに奪いに来る。奪おうとして上手くいかなかったら、すべてを私のせいにして、父親に私の悪口を言う。そして、私は怒られ、手にしていたものを失うのだ。作戦があまりに上手くいくものだから、妹はいつしか、ことあるごとにそういうことをするようになった。
そんな環境にいたものだから、私はいつも何も手にできない。
最初は腹が立った。でもいつからか諦めた。期待しなければいい、求めなければいい。そうやって、すべてを諦めて、生きるようになった。
「ねぇ、お姉様ぁ。今度良家の殿方と婚約なさるって本当ぅ?」
「えぇ本当よ。とても素敵な方なの。一目見て惚れ込んでしまったわ」
実は私、先日ある男性と「婚約を結ぼう」という話を始めた。まだ正式に婚約したわけではないけれど、もうすぐ婚約する。
だがそれは愛があってのことではない。
生まれが良家なだけの借金だらけの男性と婚約なんてしたいわけがない。
でも私は、まだ、本当のことを言うわけにはいかないのだ。今は彼を良い人だと言わなくてはならない。なぜなら、そういう作戦だからだ。
「まぁ素敵ねぇ。でも、そんな素敵な殿方、お姉様には惜しいんじゃないかしらぁ」
「そうね。幸せだわ、夢みたい」
私が幸せそうにしているのを見て放っておく妹ではない。それはこれまでの色々な出来事が証明している。私が幸せな時、彼女はほぼ確実に私の幸せを奪いに来る。婚約の件も例外ではないはずだ。
「お姉様、譲ってくださらなぁい?」
「え。どうして」
「だってぇ……お姉様が素敵な殿方の隣に立たれるなんて気の毒だものぅ……。つり合わない殿方と生きていくなんて……そんなことになったらぁ、お姉様が傷つかれるのは見えているものぉ……」
面白いくらい予想通りだ。
こうなることは読んでいた。
「お父様に頼んでくるわぁ! 殿方とはお姉様でなくわたしが婚約することにするってぇ!」
「えー……」
「気にしないでぇ。お姉様は今までみたいに脇役でいてくれればそれでいいのぉ。じゃ!」
妹は勝手に決めてそそくさと去っていった。
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でも、もう今までの私とは違う。
今回だけは妹に奪われることを望んでいる——心から。
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