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四季

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あなたが見る世界に
私はいるかしら

あなたが進む未来に
私はいるかしら

あれはまだ幼き日のこと
あなたのその不思議な目力に惚れ込んで
本気で相棒としようと
色々考えた夜もあったの

無表情なあなたの
静寂にも似た優しさに
胸を打たれ
手を差し出そうとした時もあったの

けれどもその手が
あなたに差し出されることはなかった

結局この手が
あなたに差し出されることはなかった

あなたが行く世界に
私はいるかしら

あなたが望む未来に
私はいるかしら

いいえ

きっとそれが答えね

諦めることのできない道を行くなら
すべて捨てなくてはならない
そんなことずっと昔から分かっていたのだけれど
未練がないわけではない

私だって人よ

何もかもそのせい

大義など持たずに
ありのままの姿で
向き合えていたら
何か変わったのか

いいえ

きっとそれが答えね

私が信じた未来
あなたが選んだ未来

それは真逆を向いたもの

あなたが見る世界に
私はいるかしら

あなたが進む未来に
私はいるかしら

もしも

私のこの道を
曲げてあなたと共に進んでいたら
あなたと私と
いつまでも幻想のただなかに
いられたのかしら

いいえ

きっとそれが答えね

ふとそんなことを思って
寂しくなる夜もある
月が線すら消え果てた
真っ暗な夜のことよ
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