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後編
しおりを挟む「よって、婚約は破棄とする! ――って、えええええ!?」
アドレスは勇ましく宣言した。
が、次の瞬間突然窓から大量のなめくじが入ってきて、それを目撃した彼は大慌て。
「いやいやいやいや、無理! 無理! おいお前! 早くこれを追い出せ!」
「婚約破棄された身で貴方の傍にはいられませんので……私はこれで、さようなら」
「おいっ、こら、待てっ!! 逃げるのか!? この俺を置いて!? この俺がなめくじにでろでろにされてもいいっていうのか!?」
「まぁ……そうですね、もう他人となりましたし関係ないですから」
ここは婚約破棄を都合よく使わせてもらおう。
「では、さようなら」
こうして私は彼の前から去った。
◆
その後聞いた噂によれば、アドレスは苦手ななめくじの群れに襲われ身体じゅうを歩かれたことで精神崩壊してしまったそうだ。
今はもう、抜け殻のようになってしまっているのだとか。
会話もままならないような状態だそうだ。
可哀想……いや、まぁ、彼の場合は可愛そうではないか。彼が私をなめくじなんて言って侮辱するから……なめくじ神が怒り罰を下したのだろう。いや、さすがにそれはないか。さすがにたまたまか。いや、でも、あの状況でというのはあまりに不自然だ。出来過ぎている。だからこそ、神の罰では、などと思ってしまうのである。非現実だけれど、でも、絶対にないとも言えない……そんな気がしてしまうのだ。
ちなみに私はというと、今はアドレスに気を遣うことからも解放されて穏やかに生活できている。
やはり、住み慣れた実家での生活は最高だ。
しばらくはこのままのんびりしていたいなぁ、なんて思ったりしている。
◆終わり◆
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