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後編

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 ルルエリシアはアボスの家から出るや否や落とし穴にはまった。が、穴に落ちてもなお彼女は動じない。苦笑して一人「やってしまいました……」と呟くと、落ち着いて、慎重に穴から出る。そして、青いワンピースについた土を払い、そのまま歩いて実家へと帰った。

 ちなみに。
 彼女が落ちた落とし穴は、近所の子が遊びで掘ったものである。

 もっとも、ルルエリシアはそのようなことは知らないし知ろうともしなかったのだが。

「ルルエリシア!? どうしたの土なんかつけて!!」
「お姉さま、すみません。落とし穴に落ちてしまって……」
「ええっ」

 ルルエリシアには姉がいる。
 彼女はいつも、マイペース過ぎる妹を心配している。

「それと、婚約破棄されてしまいました」
「えええ!?」

 姉は失神しそうなくらい驚いていた。

 その後ルルエリシアは水で体を洗うこととなる。いや、洗われることとなる、の方が正確か。姉がルルエリシアの身体を洗ったのである。もちろん、服も洗いに出される。

 以降、ルルエリシアはアボスのことを忘れたかのように、元通りの暮らしに戻った。

 家の庭で飼っているうさぎを膝に乗せて可愛がったり、紅茶を飲もうとしてこぼしたり、姉と庭の池にいる魚に餌をやっていて池に落ちたり、書き物をしたり……ルルエリシアは普通に暮らしている。

 一方アボスはというと。

 ルルエリシアとの婚約を破棄した数日後家から出た瞬間落とし穴に落ちてしまい、深い穴だったために落ちた衝撃で身体を強打、打ち所悪く亡くなってしまった。

 ちなみにこれも近所の子どもが掘っていたものである。

 ただ、ルルエリシアが落ちた穴の二倍以上の深さがあり、より危険な落とし穴となっていた。

 ちなみにルルエリシアはアボスの結末を知らない。


◆終わり◆
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